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体外受精は、多くの方にとって妊娠への希望となる治療法ですが、メリットだけでなく、いくつかのデメリットや注意すべきリスクも存在します。体外受精の主なデメリットについて、詳しくご紹介します。
体外受精では、排卵を促す薬の使用(卵巣刺激)や、卵子を体の外に取り出す採卵などの処置が行われます。これらの治療は女性の体に刺激を与えるため、人によっては体調を崩したり、つらさを感じたりすることがあります。
体外受精では、複数の卵子を育てるために排卵誘発剤を使用します。一時的に頭痛、吐き気、注射部位の痛みや腫れ、気分の落ち込みや苛立ちなどの症状がみられることがあります。これらは多くの場合、軽度で一過性です。 また、まれに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こることがあります。
卵巣が刺激に強く反応し、卵巣が腫れたり、お腹に水(腹水)がたまったりする状態です。重症の場合には胸に水(胸水)がたまることもあります。
多くは軽症で自然に改善します(発生頻度は約2~5%)が、まれに重症化し入院が必要となることもあります(重症例は0.1~0.3%程度)。現在は予防法の進歩により重症例は非常に少なくなっています。
他にも、頭痛、吐き気、注射部位の痛みや腫れ、気分の落ち込みや苛立ちなどの症状が出るケースも報告されています。
採卵は、超音波で卵巣の位置を確認しながら、腟から細い針を挿入して卵子を吸引する処置です。通常は短時間で終了し、麻酔を使用するため強い痛みは抑えられます。重大な合併症の頻度は1%未満と報告されていますが、まれに合併症が起こることがあります。
針を刺す際に少量の出血が起こることがあります。ほとんどは自然に止まりますが、ごくまれに腹腔内出血を起こし、処置や入院が必要になる場合があります。重篤な出血は0.1%未満とされています。
採卵後に細菌感染が起こり、骨盤内炎症を生じることがあります。発生頻度は0.1~0.6%程度とされ、抗菌薬で治療できることがほとんどです。
非常にまれですが、膀胱や腸、血管など周囲の臓器を傷つける可能性があります。報告頻度は0.1%未満とされています。また、刺激により卵巣が腫れている場合には、卵巣がねじれる(卵巣茎捻転)ことが起こることもあります。
採卵では静脈麻酔などを用います。重い合併症は極めてまれですが、吐き気や血圧変動などの一時的な副作用がみられることがあります。
媒精法では、1つの卵子に複数の精子が入り込む「多精子受精」が約3~10%で起こると報告されています。正常な発育が期待できず移植には用いられません。
ICSIでは精子を1個のみ注入するため、多精子受精は1~3%程度と少なくなります。どの方法が適しているかは、検査結果をもとに医師が判断します。
体外受精は、治療の各段階で治療方針を調整する必要があるため、他の不妊治療と比較すると通院回数が多くなります。例えば、卵巣刺激期間中の複数回の診察(超音波検査、ホルモン検査など)、採卵日、胚移植日、妊娠判定日などの通院が必要です。1周期あたりの通院回数は、一般的に5~8回程度とされています。
通院が増えることで、時間的な制約が生じ、仕事との両立が難しくなる場合もあります。治療が複数周期にわたる場合には、その負担をあらかじめ考慮しておくことが大切です。
一般的な不妊治療の一つであるタイミング法の費用は、1回あたり1万円〜3万円です(※1)。一方、体外受精にかかる費用は採卵1回あたり10万円〜13万円です。
体外受精は2022年(令和4年)4月から保険適用(※2)となりましたが、治療内容や使用薬剤、凍結胚の数などにより自己負担額は変動します。また、保険適応には開始年齢や回数制限があるので注意が必要です。
体外受精は、過去には複数の胚を移植することで多胎妊娠(双子や三つ子など)の頻度が高い時期がありましたが、現在は母子の安全のために移植胚数は原則として単一(1個)とされています(※)。これにより、多胎妊娠の頻度は大きく低下しています。
多胎妊娠は、妊娠高血圧症候群、早産、低出生体重児などのリスクが単胎妊娠に比べて高まるため、妊娠中は診察や検査の回数が増え、より注意深い妊娠管理が行われます。
ただし、年齢やこれまでの治療経過などを総合的に判断し、2個の胚を移植することがあります。また、単一胚移植であっても、胚が分かれて一卵性の多胎となることがまれにあり、その頻度は1%未満程度とされています。
受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまう子宮外妊娠が起きると、正常な妊娠継続はできません。母体の生命に影響を及ぼす可能性もあるため、妊娠判定陽性後も、超音波検査で子宮内の正しい位置に胎嚢が確認できるまで慎重な経過観察が必要です。
A:排卵誘発剤による卵巣刺激や採卵は、一時的に体へ負担がかかる治療です。多くの場合は軽度の腹部の張りや痛みで済みますが、まれに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用が起こることがあります。症状や体質には個人差があるため、治療中は医師の指示に従い、体調の変化を早めに伝えることが大切です。
A:精子の数や運動率が著しく低い場合、コンベンショナルIVF(媒精法)が適さないことがあります。ただし、顕微授精(ICSI)を選択することで、精子が少ないケースでも受精を目指せるため、多くの男性不妊に対応可能です。どの受精方法が適切かは、検査結果をもとに医師が判断します。
A:多精子受精が起こると、正常な胚として発育できず、移植には使用できません。発生頻度は高くありませんが、完全に防ぐことは難しいリスクの一つです。顕微授精(ICSI)では原理的に多精子受精を避けられるため、状況に応じて受精方法が選択されます。
A:体外受精は、卵巣刺激中の診察や採卵、胚移植、妊娠判定などが必要なため、一般不妊治療より通院回数が多くなりやすい傾向があります。仕事や家庭との両立が不安な場合は、早朝・夜間診療やオンライン対応の有無を事前に確認しておくと安心です。
A:体外受精は保険適用になったとはいえ、治療内容によっては自己負担が生じます。また、採卵による合併症や多胎妊娠、子宮外妊娠などのリスクもゼロではありません。そのため、メリットとデメリットの両方を理解したうえで、医師と十分に相談することが重要です。納得できる治療計画を立てることが、安心して治療を進める第一歩になります。
体外受精は、多くの方に妊娠の可能性を広げてくれる治療法ですが、同時に心身や費用面での負担も伴います。
メリットだけでなく、デメリットやリスクについても知っておくことで、ご自身にとって納得のいく治療の選択につながるでしょう。
体外受精について相談できるクリニックを探すなら、ぜひこちらでチェックしてみてください。

子宮がん・乳がん検診から妊娠・産後ケアまで女性のライフステージ診療に従事し、骨盤底筋ケアの医療導入を推進。
NAPH(National Association for Pelvic Health)発起人として骨盤底医療の社会実装に取り組む。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術、商品等を推奨しているものではございません。
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
2001年からの不妊治療による累計妊娠数は3万人以上(2025年4月調査時点)※1。チーム医療による総合力で、35歳未満の方の体外受精(融解胚移植)による妊娠率は53.4%※2(2024年度実績)と全国平均の48.6%※3よりも高い実績です。
不妊治療に取り組む患者の妊娠しやすい身体作りをサポートするため、専門薬剤師(ウィメンズ漢方)によるオンライン漢方相談を実施。医師によるタイミング療法の指導などと合わせることで、できるだけ自然に近い治療で子どもを授かることができるよう尽力しています。
男性不妊に特化した日本生殖医学会認定生殖医療専門医が在籍する泌尿器科クリニック。男性不妊治療である精索静脈瘤に対する顕微鏡下手術、無精子症に対する顕微鏡下精巣精子回収術(micro-TESE)などの日帰り手術も可能で、忙しい方でもスケジュールの調整がしやすくなっています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf