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「不妊の原因は女性側にある」と思われがちですが、WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊原因の約48%(男性のみ24%+男女とも24%)は男性側に関与していることが明らかになっています。つまり、不妊はご夫婦の約半数において「男性の協力なしには解決できない課題」と言えます。
しかし、男性不妊は自覚症状に乏しいことが多く、気づかないまま時間が経過してしまうケースも少なくありません。この記事では、WHOの基準に基づいた男性不妊の3大原因(造精機能障害・精路通過障害・性機能障害)を詳しく解説し、精子の質を下げる生活習慣や、今すぐできるセルフチェック、治療の選択肢についてご紹介します。
男性不妊の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて「精子を作る機能」「精子の通り道」「性行為そのもの」の3つに分類されます。まずはどのタイプに当てはまる可能性があるかを知ることが第一歩です。
男性不妊の中で最も多く、全体の約80%以上を占めると言われています。精巣(睾丸)で精子を造る機能が低下し、精子の数が少ない、動きが悪い、奇形率が高いといった状態になります。
造精機能障害の中でも特に多いのが「精索静脈瘤」です。
精巣から心臓へ戻る静脈の血液が逆流し、陰嚢周辺にコブができる病気です。血液のうっ滞により精巣の温度が上がり、精子を作る機能が低下します。
一般男性の15%、男性不妊患者の40%以上に見られる代表的な原因ですが、手術により改善が期待できるケースが多いのが特徴です。
精索静脈瘤以外にも、以下のような原因が考えられます。ただし、原因が特定できない「特発性造精機能障害」も少なくありません。
精巣で精子は作られているものの、尿道までの通り道(精管など)が詰まっていたり、途切れていたりして、射精された精液の中に精子が出てこない状態です。
この場合、自然妊娠は難しいですが、手術で閉塞部をつなぎ合わせたり、精巣から直接精子を回収する手術(TESE)を行ったりすることで、お子さんを授かる可能性があります。
勃起不全(ED)や、勃起はするものの膣内で射精ができない膣内射精障害などが該当します。近年、不妊治療のプレッシャーや仕事のストレスから、このタイプのご相談が増えています。
身体的な原因(糖尿病や神経障害)だけでなく、心理的な要因も大きく関わっているため、カウンセリングや薬物療法、人工授精やシリンジ法など、ご夫婦の状況に合わせた柔軟な対応が可能です。
男性不妊の原因は病気だけではありません。日々の何気ない習慣が、知らず知らずのうちに精子の数や運動率を下げている可能性があります。
精子は熱に非常に弱く、精巣は体温より2〜3℃低い状態が最適とされています。サウナや長風呂の習慣、ノートパソコンを膝上で長時間使用する、ブリーフなど締め付けの強い下着は、精巣温度を上昇させ、造精機能に悪影響を与えるリスクがあります。
タバコに含まれる有害物質は、精子のDNAに損傷を与えたり、運動率を低下させたりすることが多くの研究で示されています。また、過度なアルコール摂取も男性ホルモンの分泌に影響を与えるため、妊活中は節度ある量を心がけることが大切です。
BMIが高すぎる(肥満)と男性ホルモンのバランスが崩れやすくなります。また、過度なストレスは自律神経を乱し、勃起機能や射精機能に影響を及ぼします。
「年齢のリスクがあるのは女性だけ」と思われがちですが、男性も35歳を過ぎると精液所見が悪化しやすくなり、遺伝子の突然変異率がわずかに上昇すると言われています。いつまでも大丈夫と思わず、「今が一番若い」という意識で早めに行動することが重要です。
男性不妊は見た目ではわかりにくいですが、いくつかのサインがある場合もあります。一つでも当てはまる場合は、早めの受診をおすすめします。
男性側の検査は、女性側の検査に比べて身体的負担が少なく、短時間で終わるものがほとんどです。
マスターベーションで採取した精液を顕微鏡で観察し、精液量・精子濃度・運動率・正常形態率などを調べます。WHOの基準値と比較し、自然妊娠が可能か、人工授精や体外受精が必要かの目安を判断します。体調によって数値は変動するため、日を空けて2回以上検査を行うのが一般的です。
専門医が精巣サイズや硬さ、精索静脈瘤の有無を確認します。超音波(エコー)を使うと、血流の逆流なども詳しく分かります。
精子形成に関わる男性ホルモン(テストステロン)や、脳からの指令ホルモン(FSH、LH)の値を調べ、造精機能障害の原因を探ります。
当サイトでは、「治療の目的別に、際立った特徴を持つ3つの不妊治療クリニック」を厳選して紹介しています。男性不妊を含めて総合的に相談したい方も、「まずは検査だけでも」という方も、ご自身の希望に近いクリニックを見つける手がかりとしてご活用ください。
原因が特定できれば、それに対する治療を行うことで自然妊娠を目指せることもあります。原因不明の場合でも、補助生殖医療(ART)によって妊娠の可能性を広げることができます。
不妊治療は「ふたりでするもの」です。男性側に原因があることは決して珍しいことではなく、責任を感じる必要もありません。大切なのは、原因を早期に知り、お二人に合った最適な方法を選択することです。
「自分は大丈夫」と思い込まず、少しでも不安があれば、男性不妊に対応しているクリニックで一度検査を受けてみてください。その一歩が、お二人の未来を大きく変えるきっかけになるはずです。
不妊治療クリニックと一口にいっても、
など、治療の目的や重視したいポイントによって「合うクリニック」は変わってくるので、ご自身の状況に合わせたクリニックへ相談するようにしましょう。

日本産婦人科学会所属
北海道大学、大阪大学大学院卒業。市民病院、市中病院で産婦人科医師として経験を積む。
現在は医療法人霜星会りかこレディースクリニックの院長として産婦人科診療に携る。
※学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術、商品等を推奨しているものではございません。
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
2001年からの不妊治療による累計妊娠数は3万人以上(2025年4月調査時点)※1。チーム医療による総合力で、35歳未満の方の体外受精(融解胚移植)による妊娠率は53.4%※2(2024年度実績)と全国平均の48.6%※3よりも高い実績です。
不妊治療に取り組む患者の妊娠しやすい身体作りをサポートするため、専門薬剤師(ウィメンズ漢方)によるオンライン漢方相談を実施。医師によるタイミング療法の指導などと合わせることで、できるだけ自然に近い治療で子どもを授かることができるよう尽力しています。
男性不妊に特化した日本生殖医学会認定生殖医療専門医が在籍する泌尿器科クリニック。男性不妊治療である精索静脈瘤に対する顕微鏡下手術、無精子症に対する顕微鏡下精巣精子回収術(micro-TESE)などの日帰り手術も可能で、忙しい方でもスケジュールの調整がしやすくなっています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf