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「精液検査で精子が見つからない」と言われた時、多くの方が大きなショックを受けます。しかし、もし原因が「精路通過障害(せいろつうかしょうがい)」であれば、諦めるのはまだ早すぎます。
精路通過障害とは、いわば「工場(精巣)は正常に稼働しているが、道路(精管)が通行止めになっている」状態です。精巣の中には元気な精子がたくさんいる可能性が高く、適切な治療を行えば、ご自身のお子さんを授かる確率は、他の男性不妊原因に比べて格段に高いのが特徴です。
この記事では、精路通過障害の主な原因(ヘルニア手術後や先天性欠損など)と、自然妊娠を目指す「精路再建術」か、体外受精を目指す「TESE(精巣内精子採取術)」か、後悔しない治療選択のポイントを解説します。
精路通過障害は、精子を作る機能には問題がないものの、精巣から尿道までの「通り道」のどこかが詰まったり、途切れたりしている状態です。男性不妊全体の約半数に関わる重要な原因の一つです。
重要なのは、どちらの場合も精巣内での精子形成は保たれている可能性が高いという点です。そのため、詰まりを治すか、精巣から直接精子を取り出せば、妊娠の可能性が拓けます。
原因は「生まれつき」のものと、「病気や手術の影響」によるものに大別されます。ご自身の過去の病歴を振り返ってみましょう。
幼少期に受けた鼠径ヘルニア(脱腸)の手術の際に、精管が癒着したり、誤って損傷してしまったりするケースです。数十年後の不妊検査で初めて「原因は昔の手術だった」と判明することが多くあります。
生まれつき、精子を運ぶ「精管」が形成されていない状態です。精液の大部分を作る「精嚢(せいのう)」の発育も悪いことが多く、精液の量が極端に少ない(1ml以下など)のが特徴的なサインです。
クラミジアや淋菌などの性感染症(STD)にかかり、精巣上体(副睾丸)が激しい炎症を起こすと、治癒した後に管が癒着して詰まってしまうことがあります。
避妊目的で手術を受けた後、再婚などを機に再びお子さんを望まれるケースです。この場合、手術で切断した部分をつなぎ直す「再建術」の適応となります。
痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、以下の項目に当てはまる場合は精路通過障害の可能性があります。
治療方針は大きく分けて2つ。「詰まりを治して自然妊娠を目指す」か、「外科的に精子を取り出して顕微授精を行う」かです。それぞれのメリット・デメリットを理解して選ぶことが重要です。
| 比較項目 | A. 精路再建術 (精管吻合術など) |
B. 精巣内精子採取術 (TESE / Micro-TESE) |
|---|---|---|
| 治療の目的 | 通り道をつなぎ直し、 自然妊娠 | 精巣から精子を回収し、 顕微授精(体外受精)を行う |
| 最大のメリット | パートナー(女性)への身体的負担が少ない 自然に授かる喜びがある |
精子回収率は95%以上と非常に高い すぐに治療に入れる |
| デメリット | 精子が出るようになるまで数ヶ月かかる 再閉塞のリスクがある |
必ず「顕微授精」が必要になる 女性側の採卵が必要 |
| 向いている人 | ・パイプカット後の再建 ・女性が比較的若い ・どうしても自然妊娠したい |
・先天性欠損(再建不能)の方 ・女性が高齢(時間を急ぐ) ・再建術で治る見込みが低い方 |
顕微鏡を使って、直径1mmにも満たない精管を丁寧につなぎ合わせる高度な手術です。特にパイプカット後の再建では、90%以上の方で精子が再出現すると言われています。ただし、開通しても妊娠に至る十分な数の精子が戻るとは限らない点には注意が必要です。
精巣に小さな切開を加え、精子がいる組織を回収します。閉塞性無精子症の場合、精巣内では精子が活発に作られているため、ほぼ確実(95%以上)に精子を回収できます。回収した精子は凍結保存し、奥様の採卵に合わせて顕微授精に使用します。
当メディアでは、男性不妊の相談をはじめとした、治療の目的別に際立った特徴を持つクリニック3院をご紹介していますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
原因の一つである「先天性精管欠損症」の方は、高確率(約80%)でCFTR遺伝子という遺伝子に変異を持っていることが分かっています。この遺伝子変異は、お子様に遺伝する可能性があります。
もし奥様も同じ遺伝子の変異を持っていた場合、生まれたお子様が「嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)」という病気を発症するリスクが生じます。そのため、CBAVDと診断された方がTESEを行う前には、専門医による遺伝カウンセリングを受けることが強く推奨されます。
A:精路通過障害とは、精巣で精子は正常につくられているものの、精管などの通り道が詰まったり途切れたりしている状態です。そのため、射精された精液中に精子が出てこない「閉塞性無精子症」や、精子数が極端に少ない状態として見つかります。
A:主な原因は、幼少期の鼠径ヘルニア手術の影響、先天性精管欠損症、性感染症による炎症、精管結紮(パイプカット)後などです。特にヘルニア手術後は、数十年経ってから不妊検査で初めて原因が判明するケースも少なくありません。
A:可能なケースもあります。精路再建術(精管吻合術など)によって通り道をつなぎ直せれば、自然妊娠や人工授精を目指せる場合があります。ただし、再建後に十分な数の精子が戻るかどうかは個人差があるため、事前の評価が重要です。
A:選択のポイントは、閉塞の原因・女性側の年齢・妊娠までにかけられる時間です。自然妊娠を強く希望し、再建が可能な場合は精路再建術、先天性欠損など再建が難しい場合や時間を優先したい場合は、TESEと顕微授精を選ぶことが一般的です。
A:はい。閉塞性無精子症の場合、精巣内には高確率で精子が存在しているため、TESEやMicro-TESEによる精子回収率は95%以上とされています。回収した精子を用いた顕微授精により、ご自身の精子で妊娠を目指すことが可能です。
精路通過障害は、男性不妊の中でも「希望が持てる」診断です。工場(精巣)が動いていれば、医療の力で赤ちゃんに出会える道は必ずあります。
しかし、どの治療法がベストかは、閉塞の原因や奥様の年齢、お二人のライフプランによって異なります。まずは男性不妊の専門医がいるクリニックを受診し、正確な検査を受けることから始めましょう。
不妊治療クリニックと一口にいっても、
など、治療の目的や重視したいポイントによって「合うクリニック」は変わってきます。
当サイトでは、「治療の目的別に、際立った特徴を持つ3つの不妊治療クリニック」を厳選して紹介しています。
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
2001年からの不妊治療による累計妊娠数は3万人以上(2025年4月調査時点)※1。チーム医療による総合力で、35歳未満の方の体外受精(融解胚移植)による妊娠率は53.4%※2(2024年度実績)と全国平均の48.6%※3よりも高い実績です。
不妊治療に取り組む患者の妊娠しやすい身体作りをサポートするため、専門薬剤師(ウィメンズ漢方)によるオンライン漢方相談を実施。医師によるタイミング療法の指導などと合わせることで、できるだけ自然に近い治療で子どもを授かることができるよう尽力しています。
男性不妊に特化した日本生殖医学会認定生殖医療専門医が在籍する泌尿器科クリニック。男性不妊治療である精索静脈瘤に対する顕微鏡下手術、無精子症に対する顕微鏡下精巣精子回収術(micro-TESE)などの日帰り手術も可能で、忙しい方でもスケジュールの調整がしやすくなっています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf