公開日: |最終更新日時:
顕微授精(ICSI)は、通常の体外受精では妊娠が難しいご夫婦にとって、有力な選択肢のひとつです。精子を卵子に直接注入するこの技術は、高度な受精サポートが可能な一方で、身体への負担や妊娠・出産に関わるリスクも存在します。
ここでは、顕微授精に伴う主なリスクや注意点について、解説します。
顕微授精は、次の6つのステップで進みます。
体への負担が特に大きいのは、排卵誘発剤を用いて複数の卵胞を育てる卵巣刺激と、経腟超音波下で針を刺して卵子を回収する採卵です。各ステップによって、以下のような症状が見られます。
複数回の治療を重ねるうちに、周期ごとのホルモン値や受精率に一喜一憂し、次第に「今度こそ」という焦りや「またダメだったら」という不安が膨らみやすくなります。
採卵結果が思わしくなかった周期に治療をいったん中断したくても、年齢を考えると先延ばしが怖い、こうした板挟みが心理的負担を強める一因です。
顕微授精は1周期あたりの自己負担が高く、保険適用回数を使い切ったあとは自由診療となるため、家計への圧迫感が夫婦間の温度差を生みやすい面があります。
「お金をかけた分、結果を急ぎたい」という期待と、「治療が長引くほど生活が苦しい」という現実のギャップが表面化すると、互いの言葉に棘が混じりやすくなるのも事実です。
重度の男性不妊の背景には染色体構造異常や造精機能関連遺伝子の変異が潜む場合があり、この遺伝的要因が子どもに受け継がれるリスクはゼロではありません。
顕微授精児で尿道下裂や停留精巣がわずかに増える可能性が指摘されています。
長期的な精神発達の追跡では結論が出ていないものの、自閉スペクトラム症との関連を示唆する研究もあるため、産まれてからのフォローアップ体制が重要といえます。
まずは夫婦そろって精密検査を受け、卵子・精子それぞれの質を可視化することが大切です。
精子DNA損傷率や先体欠損を解析し、必要に応じて高倍率顕微鏡(IMSI)で良好精子を厳選すれば、受精障害や胚発育不全のリスクを減らす一助になります。
刺激法は年齢や卵巣予備能に合わせた低刺激や自然周期を選択し、卵巣過剰刺激症候群を予防することが安全性の面で有効です。
タイムラプス培養器を用いて胚を培養する施設や、カウンセリングを標準に組み込むクリニックを選べば、身体面・心理面の両方でサポートが受けやすくなります。
A:顕微授精で特に負担がかかりやすいのは、卵巣刺激と採卵の工程です。排卵誘発剤によってお腹の張りや情緒不安定を感じることがあり、採卵後は下腹部痛や倦怠感が数日続く場合もあります。多くは一時的な症状ですが、体調変化があれば医師へ相談することが大切です。
A:あります。特に刺激が強い治療法を選択した場合、卵巣が腫れ、腹水や血栓症を引き起こすOHSSのリスクが高まることがあります。近年は低刺激法や自然周期を選択することで、OHSSの発症を抑える工夫が行われています。
A:はい。治療の結果に一喜一憂しやすく、治療の長期化による不安や焦りが精神的ストレスになることがあります。また、治療費の負担が夫婦間の温度差やすれ違いにつながるケースもあります。カウンセリング体制が整ったクリニックを利用することで、心理的負担を軽減しやすくなります。
A:顕微授精による先天的リスクは大きくはありませんが、重度の男性不妊が背景にある場合、遺伝的要因が受け継がれる可能性はゼロではありません。一部の研究では、特定の先天異常がわずかに増える可能性が指摘されていますが、確定的な結論は出ておらず、出生後のフォローアップが重要とされています。
A:リスクを抑えるには、事前の精密検査で原因を把握し、個別に最適化された治療計画を立てることが重要です。低刺激法の選択、精子選別技術(IMSIなど)の活用、タイムラプス培養器を備えた施設の選択、そして夫婦で情報を共有しながら治療に臨む姿勢が、安全性と納得感の高い治療につながります。
顕微授精は、精子が1個しか得られなくても妊娠の可能性を高められる画期的な技術ですが、卵巣刺激や採卵が体に負担を与え、治療の長期化は心身と経済の双方にストレスをもたらします。
赤ちゃんへの先天的リスクは大きくはないものの、重度の男性不妊症など遺伝的背景を抱えるケースでは注意が必要です。
リスクを最小限に抑える鍵は、精密検査による原因の見極め、個別化された刺激法、専門機器の活用、そして夫婦が同じ情報を共有しながら歩調を合わせるコミュニケーションにあります。
適切なサポート体制のもとで治療に臨めば、顕微授精は不妊に悩むご夫婦にとって頼もしい選択肢となるでしょう。
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
2001年からの不妊治療による累計妊娠数は3万人以上(2025年4月調査時点)※1。チーム医療による総合力で、35歳未満の方の体外受精(融解胚移植)による妊娠率は53.4%※2(2024年度実績)と全国平均の48.6%※3よりも高い実績です。
不妊治療に取り組む患者の妊娠しやすい身体作りをサポートするため、専門薬剤師(ウィメンズ漢方)によるオンライン漢方相談を実施。医師によるタイミング療法の指導などと合わせることで、できるだけ自然に近い治療で子どもを授かることができるよう尽力しています。
男性不妊に特化した日本生殖医学会認定生殖医療専門医が在籍する泌尿器科クリニック。男性不妊治療である精索静脈瘤に対する顕微鏡下手術、無精子症に対する顕微鏡下精巣精子回収術(micro-TESE)などの日帰り手術も可能で、忙しい方でもスケジュールの調整がしやすくなっています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf