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体外受精や胚移植の治療中に、黄体ホルモンの膣剤や内服薬、注射などを処方されることがあります。
「自分の身体からもホルモンが出るのに、なぜ補充するの?」「妊娠判定が陽性になった後も続けるの?」「膣剤を入れ忘れたらどうすればいい?」と疑問に思う方もいるでしょう。
黄体補充とは、プロゲステロン(黄体ホルモン)などを補い、胚の着床や妊娠初期に適した子宮内膜の状態を支える治療です。
体外受精では、卵巣刺激や採卵などによって自然周期とは異なるホルモン環境になるため、黄体期をサポートする目的でプロゲステロンを補充します。
また、凍結融解胚移植でも、自然周期かホルモン補充周期かによって黄体補充の考え方や使用期間が異なります。
この記事では、体外受精で黄体補充を行う理由、薬の種類、いつから・いつまで使用するのか、副作用、飲み忘れ・膣剤の入れ忘れなどがあった場合の考え方を解説します。
本記事は2026年8月時点の専門学会・公的機関等の情報をもとに作成しています。黄体補充に使用する薬、投与量、回数、開始日、中止時期は治療周期や薬剤によって異なります。実際には処方された薬の説明書と通院先の指示を優先してください。
黄体補充とは、主にプロゲステロンと呼ばれる黄体ホルモンを補う治療です。
| 確認したいこと | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 黄体補充とは? | プロゲステロンなどを補い、子宮内膜や妊娠初期を支える治療 |
| 主な薬 | 膣剤・内服薬・注射など |
| いつから? | 採卵や移植の方法によって異なる |
| いつまで? | 少なくとも妊娠判定日まで使用し、陽性後も継続する場合がある |
| 自己判断でやめていい? | 自己判断で中止・増減しない |
| 主な注意点 | 副作用や使い忘れ時の対応は薬剤ごとに確認する |
排卵すると、卵胞の一部が黄体へ変化し、プロゲステロンを分泌します。
プロゲステロンは、エストロゲンによって厚くなった子宮内膜を、受精卵が着床しやすい状態へ変化させる働きがあります。
また、妊娠が成立した後も、妊娠初期の子宮内膜を維持するうえで重要なホルモンです。
体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)では、卵巣刺激、排卵を調整する薬、採卵などによって、自然な月経周期とは異なるホルモン環境になります。
そのため、胚移植後の黄体期を支える目的でプロゲステロンを補充します。
黄体補充を処方されると、「自分の身体では黄体ホルモンを作れていないのでは」と不安になる方もいるでしょう。
しかし、黄体補充は必ずしも「自分でホルモンを出せないから行う」というものではありません。
体外受精という治療の過程で黄体期を安定して支えるために、必要なホルモンを補助するという位置づけで行われる場合があります。
月経周期の前半では、エストロゲンの作用によって子宮内膜が増殖します。
排卵後にプロゲステロンが作用すると、子宮内膜は受精卵を受け入れるための状態へ変化していきます。
特にホルモン補充周期の凍結融解胚移植では、プロゲステロンを開始した時点を基準として移植日を設定することがあります。
胚の発育段階と子宮内膜の状態を合わせるため、プロゲステロンの開始日や使用スケジュールも治療計画の一部になります。
自己判断で開始日を早めたり遅らせたりしないようにしましょう。
妊娠成立後も、プロゲステロンは子宮内膜を維持するうえで重要です。
そのため、妊娠判定が陽性になった後も、一定期間黄体補充を継続する場合があります。
採卵を行う体外受精では、複数の卵胞を発育させたり、排卵を調整したりするために薬を使用します。
こうした治療により、採卵後の黄体期が自然周期と同じ状態にならない場合があります。
そのため、胚の着床を支える目的でプロゲステロンを補充します。
凍結融解胚移植では、自然排卵を利用せず、エストロゲンやプロゲステロンを使用して子宮内膜を整える「ホルモン補充周期」が選択される場合があります。
この場合、プロゲステロンの投与開始時期や使用期間そのものが移植スケジュールに関係します。
特にホルモン補充周期では、処方された薬を決められた方法・時間で使用することが重要です。
自然周期では、自分自身の排卵を利用するため、排卵後に黄体が形成されます。
ただし、自然周期でも追加でプロゲステロンを補充する場合があります。
黄体補充を行うかどうかは、治療方法や患者の状態、医療機関の方針によって異なります。
黄体補充には、膣から使用する薬、内服薬、注射などがあります。
どの方法を選ぶかは、治療方法や使用する薬剤、身体の状態などによって異なります。
プロゲステロンを膣内へ挿入する方法です。
生殖補助医療で用いられる代表的な投与方法の一つで、自宅で決められた回数使用します。
薬剤によって1日の使用回数や使用開始日などが異なります。
黄体ホルモン作用を持つ薬を内服する場合があります。
薬剤によって成分や作用、使用回数が異なるため、処方された方法に従います。
プロゲステロンを注射で投与する方法もあります。
筋肉注射や皮下注射などがあり、薬剤によって投与方法が異なります。
患者の状態や治療方法によっては、膣剤と内服薬など、複数の方法を組み合わせる場合があります。
処方された薬の種類が多いから妊娠しやすい、少ないから妊娠しにくいと単純に判断することはできません。
黄体補充は、「どの方法がすべての方に一番よい」と一律に決められるものではありません。
膣内へ直接使用するため、自宅で使用できる方法です。
一方で、薬が溶けた後の残留物がおりもののように出たり、膣内の違和感を感じたりする場合があります。
服用しやすいという特徴がありますが、使用する薬によって用法や副作用が異なります。
注射によってプロゲステロンを投与する方法です。
薬剤によっては注射部位の痛みや腫れなどが起こることがあります。
「膣剤が使いにくいから内服だけにする」「注射を受けたから膣剤を省く」といった変更を自己判断で行わないでください。
使用が難しい場合は、別の投与方法を選べるか医師へ相談しましょう。
IVF・ICSI後の黄体補充では、採卵後からプロゲステロンを開始します。
専門学会のガイドラインでは、採卵当日の夕方から採卵後3日目までの間にプロゲステロンを開始することが推奨されています。
ただし、実際の開始日や開始時間は治療方法によって異なります。
「採卵後だから今日から使えばよい」と自己判断せず、医療機関から指定された開始日時を守ってください。
ホルモン補充周期では、移植する胚の発育段階に合わせてプロゲステロンの開始日を決めます。
そのため、移植日だけでなく「いつから黄体ホルモンを使い始めるか」も治療計画の重要な一部です。
予定日を勘違いした、薬を受け取るのが遅れたなど、指示された日時に開始できない場合は通院先へ連絡してください。
IVF・ICSI後のプロゲステロンによる黄体期サポートは、少なくとも妊娠判定日までは継続することが推奨されています。
判定日前に市販の妊娠検査薬が陰性だった場合でも、自己判断で薬を中止しないでください。
妊娠判定が陽性となった後も、黄体ホルモンの補充を継続する場合があります。
特にホルモン補充周期では、妊娠初期も処方されたホルモンを継続するよう指示されることがあります。
黄体補充をいつ終了するかは、治療周期、使用している薬剤、妊娠経過、医療機関の方針などによって異なります。
「妊娠○週になったからもう薬は不要」と自己判断しないようにしましょう。
医療機関で妊娠判定が陰性となった場合は、黄体補充をいつ中止するか指示を受けます。
薬を中止した後に月経が始まる場合がありますが、時期には個人差があります。
妊娠成立後も、プロゲステロンは子宮内膜を維持し、妊娠初期を支えるうえで重要です。
そのため、妊娠判定が陽性となった時点ですぐに補充を終了するとは限りません。
妊娠が進むと、妊娠を維持するためのホルモンを胎盤が担うようになります。
ただし、その移行時期を患者自身が症状などから判断することはできません。
ホルモン補充周期では、外から投与しているエストロゲンやプロゲステロンが妊娠初期のホルモン環境を支えている場合があります。
妊娠判定が陽性になったからといって、自己判断で黄体補充を終了しないでください。
黄体補充による副作用は、使用する薬や投与方法によって異なります。
処方薬の添付文書や医師・薬剤師からの説明を確認してください。
プロゲステロン製剤では、眠気やめまいが起こる場合があります。
症状がある場合は、自動車の運転など危険を伴う作業に注意してください。
黄体ホルモンの影響によって、胸の張りや身体のだるさなど、妊娠初期と似た体調変化を感じることがあります。
ただし、症状の有無だけで薬が効いているかを判断することはできません。
膣剤では、薬が膣内で溶けた後、その一部が下着へ付着する場合があります。
薬剤によっては白いかすやおりもののように見えることがあります。
膣剤の使用によって、膣内の違和感や局所的な症状がみられる場合があります。
症状が強い場合は医療機関へ相談しましょう。
注射による黄体補充では、注射した部位に痛みや腫れなどが生じる場合があります。
強く腫れる、痛みが続くなどの場合は医療機関へ相談してください。
薬剤によっては重大な副作用が設定されているものもあります。突然の息苦しさ、強い胸痛、激しい頭痛、失神、ふくらはぎの強い痛みや腫れなど、普段と異なる強い症状がある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
胸の張り、眠気、だるさなどは、妊娠初期にみられる場合があります。
一方、黄体ホルモン製剤の影響でも同様の体調変化がみられる可能性があります。
「黄体ホルモンを使っているのに胸が張らない」「強い眠気があるから妊娠している」といった症状だけで妊娠結果を判断することはできません。
薬の副作用には個人差があるため、何も症状を感じない場合もあります。
症状がないことだけで、黄体補充が効いていないとは判断できません。
プロゲステロンの膣剤は膣内で溶けるため、その一部が後から下着へ付着することがあります。
「白いものが出てきたから薬が全部出てしまった」とは限りません。
薬の一部が出てきたように見えても、自己判断でもう1回分追加しないでください。
挿入直後にカプセルや錠剤がほとんどそのまま出てしまった場合など、使用できたか判断できないときは通院先や薬剤師へ確認しましょう。
膣剤の使用後にどのように過ごすかは薬剤によって異なります。
「必ず○分横になる」など自己流のルールを作らず、処方された薬の使用方法を確認してください。
薬を使用し忘れた場合の対応は、薬剤や次の使用時間までの間隔によって異なります。
「忘れた分を取り戻そう」と自己判断で2回分を一度に使用しないようにしてください。
例えばプロゲステロン腟剤の中には、忘れた場合は気づいた時に1回分を使用し、次の使用時間が近ければ1回分を飛ばすよう案内されている薬剤があります。
ただし、これはすべての黄体補充薬に共通する指示ではありません。
「今から使用してよいのか」「次の時間まで待つべきか」が分からない場合は、通院先や薬剤師へ確認してください。
毎日決まった時間にアラームを設定するなど、使用忘れを防ぐ方法を取り入れるとよいでしょう。
仕事などの都合で決められた時間に使用することが難しい場合は、治療開始時に医療機関へ相談しておくことも大切です。
黄体補充では、医療機関から指定された時間や使用間隔を守ることが基本です。
特にホルモン補充周期では、プロゲステロンを開始してからの日数を踏まえて胚移植日を決める場合があります。
そのため、使用開始日時を間違えた場合は医療機関へ連絡してください。
「予定時間から少しずれたから、もう着床しない」と自己判断する必要はありません。
ずれた時間や使用している薬によって対応が異なるため、通院先へ確認しましょう。
黄体補充は、医療機関から指示された時期まで続けることが重要です。
判定日前に出血があると、「生理が来たから薬はもう必要ない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、出血だけで妊娠していないとは判断できません。
医療機関から指示されるまで処方薬を継続してください。
判定日前の市販妊娠検査薬は、時期によっては妊娠していても陰性になる場合があります。
自宅検査が陰性だったという理由だけで黄体補充を中止しないようにしましょう。
副作用がつらい場合は、自己判断で薬をやめるのではなく医師へ相談してください。
治療内容によっては薬剤や投与方法を変更できる場合があります。
黄体補充中に少量の出血がみられる場合があります。
出血があったことだけで「着床しなかった」「流産した」と判断することはできません。
判定日前であれば、原則として通院先から指示された薬を継続し、出血について必要に応じて相談します。
出血量が多い、強い腹痛を伴う、体調が悪い場合は妊娠判定日を待たず医療機関へ相談してください。
| 項目 | 自然周期 | ホルモン補充周期 |
|---|---|---|
| 排卵 | 自然な排卵を利用 | 自然排卵を利用しない方法もある |
| 黄体 | 排卵後に形成される | 自然な黄体に依存しない治療設計もある |
| 黄体補充 | 追加する場合がある | 治療計画上重要な役割を持つ |
| 薬の中止 | 医師の指示に従う | 特に自己判断で中止しない |
自然周期では自分自身の排卵を利用するため、排卵後に黄体が形成されてプロゲステロンが分泌されます。
そのうえで黄体期を支える目的で追加のプロゲステロンを使用する場合があります。
ホルモン補充周期では、エストロゲンとプロゲステロンなどを使用して子宮内膜を整えます。
プロゲステロンの使用開始時期・継続期間が移植計画に組み込まれているため、指定されたスケジュールに沿って使用することが重要です。
次のような症状がある場合は医療機関へ相談してください。
実際に注意すべき副作用は使用する薬によって異なります。処方薬の添付文書や医師・薬剤師からの説明を確認してください。
「体外受精だから全員この薬」という説明だけではなく、自分の治療周期でなぜ黄体補充が必要なのか説明してもらえると、治療への理解を深めやすくなります。
使用開始日、1日の使用回数、膣剤の挿入方法などを具体的に説明してもらえるか確認しましょう。
薬を忘れた、膣剤が出てきたなどのトラブルは治療中に起こる可能性があります。
そのような場合にどこへ連絡すればよいのか、事前に確認しておくと安心です。
眠気や膣内の違和感などが強い場合に、薬剤や使用方法について相談できる体制があるかも確認しましょう。
妊娠判定で陽性だった場合、何をどの時期まで続けるのか説明してもらえることも重要です。
A.主にプロゲステロンという黄体ホルモンを補い、胚が着床しやすい子宮内膜の状態や妊娠初期を支える治療です。
A.IVF・ICSI後ではプロゲステロンによる黄体期サポートが推奨されています。
ただし、実際に使用する薬や投与方法は治療内容によって異なります。
A.採卵を行う周期では採卵後から開始します。
専門学会のガイドラインでは採卵当日の夕方から採卵後3日目までの間が開始時期として示されていますが、実際の日時は通院先の指示を優先してください。
A.少なくとも妊娠判定日までは継続することが推奨されています。
妊娠判定が陽性だった場合は、その後も一定期間使用する場合があります。終了時期は医療機関によって異なります。
A.自己判断で中止しないでください。
妊娠初期も黄体補充を継続する場合があります。
A.判定日前の妊娠検査薬の結果だけで薬を中止しないでください。
医療機関の妊娠判定と中止指示を待ちましょう。
A.自己判断で追加使用しないでください。
膣剤は溶けた後に一部が外へ出る場合があります。ほぼそのまま出たなど判断に迷う場合は医療機関へ確認しましょう。
A.薬剤によっては、膣内で溶けた薬の一部が残留物として出てくる場合があります。
異常なにおい、強い痛み、かゆみなどがある場合は相談してください。
A.対応は薬剤や次の使用時間までの間隔によって異なります。
自己判断で2回分をまとめて使用せず、処方薬の説明や通院先の指示を確認してください。
A.指定された時間・間隔を守ることが基本です。
少しずれただけで治療が失敗したと自己判断せず、ずれが大きい場合や判断に迷う場合は医療機関へ確認しましょう。
A.妊娠初期にもみられる症状ですが、黄体ホルモン製剤によっても似た症状が起こる場合があります。
症状だけで妊娠の有無を判断することはできません。
A.出血があったことだけで妊娠していないとは判断できません。
薬を自己判断で中止せず、多量の出血や強い腹痛などがある場合は通院先へ相談してください。
A.自然周期でもプロゲステロンを補充する場合があります。
必要性や使用方法は患者の状態や医療機関の治療方針によって異なります。
体外受精の黄体補充とは、主にプロゲステロンを補い、胚の着床や妊娠初期に適した子宮内膜の状態を支える治療です。
IVF・ICSI後ではプロゲステロンによる黄体期サポートが推奨されており、膣剤、内服薬、注射などが使用されます。
黄体補充の開始時期や使用期間は治療方法によって異なります。採卵を伴う周期では採卵後から開始し、少なくとも妊娠判定日までは継続することが推奨されています。
また、妊娠判定が陽性になった後も黄体補充を継続する場合があるため、「妊娠したからもう必要ない」と自己判断で薬をやめないことが重要です。
胸の張り、眠気、だるさなどがあっても、薬による症状と妊娠初期症状を症状だけで区別することはできません。反対に症状がなくても、薬が効いていないとは判断できません。
膣剤が出てきた、薬を飲み忘れた・入れ忘れた、使用時間がずれた場合も、自己判断で追加したり2回分まとめて使用したりせず、処方薬の説明や通院先の指示を確認しましょう。
京都で体外受精を検討している方は、治療方法だけでなく、黄体補充を行う理由や具体的な薬の使い方、使い忘れや副作用があった場合の対応、妊娠判定後の薬のスケジュールまで丁寧に相談できるクリニックか確認しましょう。
主な参考情報
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf