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体外受精では、採卵した卵子を精子と受精させ、培養した胚を子宮内へ戻します。この処置を「胚移植」といいます。
初めて胚移植を受ける方は、「移植は痛いの?」「どのくらい時間がかかる?」「移植後はずっと横になっていた方がいい?」など、不安に感じることもあるでしょう。
胚移植は、採卵のように卵巣へ針を刺す処置ではありません。一般的には、細いカテーテルを子宮内へ進め、培養した胚を子宮内へ戻します。
移植後についても、長時間寝たきりで過ごさなければならないわけではありません。一方、仕事や運動、入浴、性交渉などについては、患者の状態や医療機関の治療方針によって指示が異なります。
この記事では、胚移植前の準備から当日の流れ、痛みや所要時間、移植後の過ごし方、妊娠判定までを順番に解説します。
本記事は2026年8月時点の公的機関・専門学会等の情報をもとに作成しています。胚移植の方法、使用する薬、飲水・食事に関する指示、移植後の生活上の注意などは医療機関や患者の状態によって異なります。実際の治療では通院先からの指示を優先してください。
胚移植とは、体外受精や顕微授精によって得られた胚を、子宮内へ戻す処置です。
日本産科婦人科学会では、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)、胚移植(ET)などを生殖補助医療(ART)としています。
胚移植では、胚が着床できるように、胚の発育段階と子宮内膜の状態などを確認しながら移植日を決定します。
体外受精は、おおむね次のような流れで進みます。
卵巣刺激 → 採卵 → 受精 → 胚培養 → 胚移植 → 妊娠判定
採卵して終わりではなく、採取した卵子が受精し、その後も発育した胚を子宮へ戻すところまでが一連の治療になります。
胚移植では、腟から子宮頸部を通して細いカテーテルを子宮内へ進めます。
胚培養士などが準備した胚を少量の培養液とともにカテーテルへ入れ、子宮内へ戻します。
超音波で子宮の位置などを確認しながら行う医療機関もあります。
胚移植には、大きく「新鮮胚移植」と「凍結融解胚移植」があります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 新鮮胚移植 | 採卵した周期に受精・培養した胚を移植する |
| 凍結融解胚移植 | 胚をいったん凍結保存し、別の周期に融解して移植する |
新鮮胚移植は、採卵・受精・胚培養を行った周期に、そのまま胚移植へ進む方法です。
ただし、胚が移植可能な状態まで発育していても、子宮内膜やホルモンの状態、OHSSのリスクなどによって、その周期には移植せず胚を凍結する場合があります。
凍結融解胚移植は、培養した胚を一度凍結保存し、別の周期に融解して子宮内へ戻す方法です。
自然な排卵周期に合わせて移植する場合のほか、ホルモン剤を使用して子宮内膜を整え、移植日を設定する場合があります。
国立成育医療研究センターでも、体外受精で複数の受精卵が得られた場合に余剰胚を凍結・保存する方法を案内しています。
新鮮胚移植と凍結融解胚移植は、どちらか一方がすべての方に優れているわけではありません。
胚の状態、子宮内膜、ホルモン値、卵巣刺激への反応、OHSSのリスク、これまでの治療歴などを踏まえて判断します。
胚移植前には、超音波検査などで子宮内膜の状態を確認します。
必要に応じてホルモン検査なども行い、胚の発育段階と子宮内膜の状態を合わせて移植日を決定します。
子宮内膜の厚さだけで妊娠の成否が決まるわけではないため、「○mmなら必ず着床する」と考えないことが大切です。
自然周期による凍結融解胚移植では、排卵時期を確認しながら胚移植日を決めます。
超音波検査やホルモン検査などを行い、排卵時期と胚の発育段階を合わせていきます。
ホルモン補充周期では、エストロゲン製剤などを使用して子宮内膜を整えた後、黄体ホルモン製剤などを使用して移植時期を調整します。
使用する薬や開始時期は医療機関によって異なります。
胚移植前後には、黄体ホルモン製剤などが処方される場合があります。
症状がない、妊娠検査薬が陰性だったなどの理由で、医師の指示なく薬を中止しないようにしてください。
実際の流れは医療機関によって異なりますが、一般的には次のように進みます。
医療機関から指定された時間に来院します。
施設によっては、腹部から超音波で子宮を確認しやすくするため、移植前に膀胱へある程度尿をためておくよう指示される場合があります。
一方、すべての胚移植で同じ飲水方法が必要とは限りません。
移植当日の食事・飲水・排尿については、自己判断せず医療機関からの指示を確認してください。
移植する胚や治療計画を確認します。
凍結融解胚移植では、融解した胚の状態について説明を受ける場合もあります。
医療機関では、患者本人と胚の取り違えを防ぐための本人確認などを行ったうえで処置へ進みます。
診察台へ移動し、婦人科診察と同様に腟鏡を使用して子宮頸部を確認します。
腟鏡を入れる際に圧迫感や違和感を感じることがあります。
子宮頸部から細いカテーテルを子宮内へ進めます。
超音波で位置を確認しながらカテーテルを操作する場合があります。
子宮の向きや子宮頸管の形などによって、カテーテルの進みやすさには個人差があります。
胚培養士などが移植する胚をカテーテルへ準備し、少量の培養液とともに子宮内へ戻します。
胚は非常に小さいため、「胚が子宮へ入った感覚」を本人が感じるものではありません。
移植後はカテーテルを回収し、胚がカテーテル内に残っていないか確認します。
問題がなければ胚移植の処置は終了です。
移植後の院内での休憩時間は医療機関によって異なります。
長時間ベッドで横にならなければ胚が子宮から出てしまうわけではありません。
帰宅方法や当日の生活については、医療機関からの指示を確認してください。
胚移植の処置自体は、採卵と比べると比較的短時間で終了することが多い処置です。
ただし、来院してすぐに移植が終わるとは限りません。
移植前には、受付、診察、超音波、胚の確認などがあります。
凍結胚の場合は胚の融解や状態確認なども行われます。
院内の待ち時間、移植前の検査、移植後の休憩時間などによって、滞在時間は変わります。
胚移植当日は前後の予定を詰め込みすぎず、余裕を持ったスケジュールにしておくとよいでしょう。
胚移植は、採卵のように卵巣へ針を刺して卵子を吸引する処置とは異なります。
細いカテーテルを子宮内へ進めるため、強い痛みを感じない方もいますが、痛みや違和感には個人差があります。
婦人科診察と同様、腟鏡を使用するときに圧迫感や違和感を感じる場合があります。
子宮頸部からカテーテルを進める際に、違和感や軽い痛みを感じる場合があります。
子宮頸管が狭い場合や、カテーテルが進みにくい場合などは、処置に時間がかかることもあります。
胚移植では、通常、麻酔を使用せずに行われる場合が多くあります。
ただし、処置が難しいと予想される場合など、対応は患者や医療機関によって異なります。
内診や過去の子宮内処置で強い痛みを感じた経験がある場合は、移植前に医師や看護師へ伝えておきましょう。
「痛みに弱い」「内診が苦手」と伝えることも、治療を安全に受けるための情報の一つです。
「移植後に歩くと胚が落ちるのでは」「ずっと寝ていた方が着床しやすいのでは」と心配になる方もいるでしょう。
しかし、胚移植後に長時間ベッドで安静にすることが妊娠率を高めるという根拠は示されておらず、長時間のベッド上安静は推奨されていません。
ESHREでも、胚移植後のベッド上安静を推奨しないとしています。
胚は子宮内へ移植されます。
移植後に立ったり歩いたり、排尿したりしたことで、胚がそのまま腟から落ちてしまうと考える必要はありません。
移植後だからといって、一日中寝たきりになる必要があるとは限りません。
医療機関から特別な指示がなければ、体調を見ながら通常の日常生活を送ります。
長時間の安静が必要でないことと、身体へ強い負担をかけても問題ないということは別です。
移植当日は体調を確認し、疲れている場合や腹痛などがある場合は無理をせず過ごしてください。
胚移植後の仕事・運動・入浴などの具体的な制限は、患者の状態や治療内容によって異なります。
ここでは一般的な考え方を紹介します。詳しい過ごし方については通院先からの指示を優先してください。
胚移植後に、必ず仕事を休まなければならないわけではありません。
デスクワークなど通常の日常生活を続けられる場合もあります。
一方、重量物を扱う仕事や長時間立ち続ける仕事など、身体への負荷が大きい場合は医師へ相談しておくとよいでしょう。
日常生活で歩いたり身体を動かしたりすることを過度に避ける必要はありません。
ただし、激しい運動をいつから再開できるかは、採卵からの期間や卵巣の状態などによっても異なります。
特に採卵後間もない場合は、医療機関へ確認してください。
移植後の入浴については医療機関ごとに指示が異なります。
一律に「胚移植をしたから入浴禁止」と考えるのではなく、当日の入浴・シャワーについて通院先の説明を確認してください。
性交渉を再開する時期についても、患者の状態や医療機関の方針によって異なります。
腹痛や出血がある場合などは無理をせず、再開時期を医師へ確認しましょう。
胚移植後に、特定の食品を食べれば着床しやすくなると保証できるものはありません。
極端な食事制限を行うのではなく、普段どおり栄養バランスを意識した食事をとりましょう。
黄体ホルモン製剤などが処方されている場合は、指示された期間・方法で使用します。
体調や妊娠検査薬の結果だけを理由に自己判断で中止しないでください。
胚移植後に少量の出血がみられる場合があります。
腟鏡やカテーテルによる刺激などが関係している可能性もあり、出血があったからといって必ず「着床出血」と判断できるわけではありません。
軽い下腹部痛や違和感を感じることがあります。
症状の感じ方には個人差があり、何も感じない方もいます。
胸の張り、眠気、だるさなどを感じる場合があります。
ただし、黄体ホルモン製剤などの影響でも似た症状が起こるため、これらの症状だけで妊娠したかどうかを判断することはできません。
胚移植後に何も症状を感じないからといって、着床していないとは限りません。
移植後の症状の有無だけで妊娠・非妊娠を判断しないことが重要です。
胚移植後に次のような症状がある場合は、通院先へ相談してください。
特に採卵後から間もない新鮮胚移植では、卵巣刺激後のOHSSなどにも注意が必要です。不安な症状がある場合は、次回予約日まで待たず医療機関へ連絡してください。
胚移植後は、普段なら気にならない身体の変化も「着床したサインでは?」と気になることがあります。
しかし、症状だけで妊娠を判断することはできません。
下腹部痛や少量の出血があった場合でも、それだけで着床したとは判断できません。
反対に、症状がまったくなくても妊娠している場合があります。
胚移植前後に使用する黄体ホルモン製剤などによって、胸の張り、眠気、だるさなどが起こる場合があります。
妊娠初期症状と似ることがあるため、症状の有無で結果を予測しすぎないようにしましょう。
医療機関の妊娠判定日より前に市販の妊娠検査薬を使用すると、時期が早いため陰性になる可能性があります。
また、治療でhCG製剤を使用している場合などは結果の解釈に注意が必要です。
妊娠判定は医療機関から指定された日を基本にしましょう。
胚移植後は、医療機関が指定した日に妊娠判定を行います。
移植した胚の発育段階や治療方法などによって判定時期は異なるため、「移植後必ず○日」と一律にはいえません。
妊娠判定では、血液検査や尿検査などによってhCGを確認します。
検査方法や判定基準は医療機関によって異なります。
妊娠判定で陽性となった後も、超音波検査などで妊娠経過を確認します。
胎嚢の位置や妊娠の経過などを確認する必要があるため、陽性判定後も指定された受診を続けましょう。
胚移植後に妊娠に至らなかった場合でも、1回の結果だけで原因を特定できるとは限りません。
移植した胚の発育段階や評価、これまでの胚培養結果などを確認します。
子宮内膜の状態、移植時期、使用した薬なども含め、今回の治療経過を確認します。
胚移植を複数回行っても妊娠に至らない場合には、それまでの胚・子宮側の状態などを振り返り、今後の検査や治療方針について担当医と相談します。
体外受精のクリニックを比較するときは、採卵や妊娠率だけではなく、胚移植までの治療方針をどのように説明してもらえるかも確認しましょう。
採卵、受精、胚培養、胚移植はそれぞれ独立した治療ではありません。
一連の治療計画として、なぜ今回の方法を選択するのか説明を受けられるか確認しましょう。
「なぜ今回は新鮮胚移植なのか」「なぜ胚を凍結して別周期に移植するのか」などを確認できることが大切です。
移植する胚の発育段階や評価などについて、医師や胚培養士から説明を受けられるか確認しましょう。
胚移植後は、薬の使用や仕事、運動、入浴などについて不安になりやすい時期です。
自宅での過ごし方や、どのような症状が出たら連絡すべきかまで説明してもらえると安心です。
胚移植は、胚を子宮へ戻して終わりではありません。
妊娠判定、その後の超音波検査などを含め、どこまでフォローを受けられるか確認しておきましょう。
A.体外受精や顕微授精で得られた胚を、細いカテーテルを使って子宮内へ戻す処置です。
A.強い痛みを感じない方もいますが、腟鏡やカテーテルによる違和感・痛みを感じる場合があります。
痛みの程度には個人差があるため、不安が強い場合は事前に医療スタッフへ伝えてください。
A.通常は麻酔を使用せずに行われる場合が多いですが、患者の状態や処置内容、医療機関によって異なります。
A.処置自体は比較的短時間で終わる場合が多いですが、移植前の診察や胚の準備、待ち時間などを含めた院内滞在時間は施設によって異なります。
A.移植後に立ったり通常の日常動作を行ったりしたことで、胚がそのまま子宮から落ちると考える必要はありません。
特別な指示がある場合は通院先の説明に従ってください。
A.長時間のベッド上安静によって妊娠率が高まるという根拠は示されておらず、長時間の絶対安静が必要とはされていません。
体調を見ながら通常の日常生活を送りましょう。
A.必ず仕事を休まなければならないわけではありません。
ただし、仕事内容や体調によって異なるため、身体への負担が大きい仕事の場合は医師へ相談してください。
A.少量の出血がみられる場合があります。
一方、出血量が多い、強い腹痛を伴う、体調が悪化している場合は医療機関へ連絡してください。
A.症状がないことだけで、胚移植がうまくいかなかったとは判断できません。
妊娠の有無は指定された妊娠判定日に確認します。
A.軽い下腹部痛や違和感を感じる場合があります。
痛みが強い、悪化する、多量の出血などを伴う場合は通院先へ相談してください。
A.移植した胚の発育段階や治療方法によって適切な判定時期は異なります。
市販の妊娠検査薬で自己判断するのではなく、医療機関から指定された妊娠判定日に検査を受けましょう。
A.排尿によって、子宮内へ移植された胚が尿と一緒に流れ出るものではありません。
胚移植後の排尿を過度に我慢する必要はありません。
胚移植とは、体外受精や顕微授精で得られた胚を子宮内へ戻す処置です。
移植方法には、採卵と同じ周期に行う新鮮胚移植と、胚を凍結して別周期に移植する凍結融解胚移植があります。
胚移植当日は、子宮や胚の状態を確認した後、細いカテーテルを子宮内へ進めて胚を移植します。採卵とは異なり、通常は麻酔を必要としない場合が多い処置ですが、痛みや違和感には個人差があります。
また、胚移植後に長時間寝たきりで過ごす必要があるとはされていません。通常の日常生活を過度に制限する必要はありませんが、仕事、激しい運動、入浴、性交渉などについては通院先の指示を確認してください。
移植後に少量の出血や下腹部の違和感があったり、反対にまったく症状がなかったりすることもあります。症状だけで着床・妊娠を判断することはできません。
処方された薬を自己判断で中止せず、医療機関から指定された妊娠判定日まで使用方法を守りましょう。
京都で体外受精を検討している方は、採卵や妊娠率だけではなく、胚の状態や移植方法について説明を受けられるか、移植後から妊娠判定まで相談できる体制があるかという点も含めてクリニックを比較することが大切です。
主な参考情報
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf