公開日: |最終更新日時:
「子宮腺筋症があります」と診断され、「妊娠しにくくなるの?」「先に腺筋症を治療した方がいい?」と不安になる方もいるでしょう。
子宮腺筋症とは、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉である子宮筋層内に存在し、その周囲で筋層の肥厚や線維化などが起こる良性の病気です。
月経痛や過多月経、慢性的な骨盤痛などを引き起こすことがありますが、目立った症状がなく、不妊検査や超音波検査で初めて見つかる場合もあります。
子宮腺筋症は、子宮の収縮や精子の輸送、胚が着床する子宮内膜の環境などへ影響し、不妊との関連が報告されています。また、体外受精における着床率の低下や流産率の上昇との関連も指摘されています。
一方で、子宮腺筋症があるからといって、妊娠できないという意味ではありません。
子宮腺筋症があっても自然妊娠する方や、人工授精・体外受精などによって妊娠する方はいます。
また、不妊治療では「腺筋症を先に治療する」「すぐ体外受精へ進む」と一律に決めるものではありません。年齢、月経症状、病変の広がり、卵巣予備能、ほかの不妊原因などを確認し、妊娠を目指す時間も考えながら治療方針を決めることが重要です。
この記事では、子宮腺筋症と不妊の関係、子宮内膜症との違い、症状・検査方法、自然妊娠や体外受精への影響、薬物療法・手術、不妊治療の進め方について解説します。
本記事は2026年9月時点の専門学会等の公開情報をもとに作成しています。子宮腺筋症の治療方針は、年齢、症状、病巣の大きさ・位置、子宮内膜症や子宮筋腫の合併、卵巣予備能、不妊期間などによって異なります。自己判断で薬を中止したり、手術や不妊治療の順番を決めたりせず、医師へ相談してください。
子宮腺筋症は、子宮内膜に似た腺組織や間質組織が、本来存在しない子宮筋層内に入り込み、その周囲で筋層の肥厚や線維化などが起こる病気です。
| 確認したいこと | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 子宮腺筋症とは? | 子宮内膜に似た組織が子宮筋層内に存在する良性疾患 |
| 主な症状 | 月経痛、過多月経、慢性骨盤痛、不正出血など |
| 不妊との関係 | 精子輸送や着床環境などへ影響し、妊孕性低下との関連が報告されている |
| 症状がない場合 | 不妊検査・超音波検査などで偶然見つかる場合がある |
| 主な検査 | 経腟超音波検査、MRIなど |
| 主な治療 | 薬物療法、不妊治療、選択された症例では子宮腺筋症摘出術など |
| 妊娠できる? | 自然妊娠やARTによる妊娠が可能な場合もある |
子宮は、内側から子宮内膜、子宮筋層などによって構成されています。
本来、子宮内膜は子宮の内側に存在し、排卵後に受精卵を受け入れるために厚くなり、妊娠が成立しなければ月経として剥がれ落ちます。
子宮腺筋症では、子宮内膜に似た組織が子宮筋層内に存在します。
月経周期に伴って病巣周囲でも変化が起こることで、炎症、出血、線維化などが生じ、子宮筋層が厚くなったり子宮全体が大きくなったりすることがあります。
子宮腺筋症は、病変が子宮筋層へ広く広がるタイプだけではありません。
病変の広がり方によって、子宮筋層へびまん性に広がるタイプや、一部に限局するタイプ、腫瘤状にみえるタイプなどがあります。
病変の位置や広がり、大きさによって症状や妊娠への影響が異なる可能性があります。
「子宮腺筋症」と「子宮内膜症」は名前が似ているため、同じ病気と思われることがあります。
どちらも子宮内膜に似た組織が本来とは異なる場所に存在する病気ですが、主に病変が存在する場所が異なります。
| 比較 | 子宮腺筋症 | 子宮内膜症 |
|---|---|---|
| 主な病変 | 子宮筋層内 | 卵巣、腹膜、骨盤内など子宮外 |
| 子宮の大きさ | 筋層が厚くなり、子宮が腫大することがある | 子宮自体が必ず大きくなるわけではない |
| 主な症状 | 月経痛、過多月経、慢性骨盤痛など | 月経痛、慢性骨盤痛、性交痛など |
| 不妊への影響 | 子宮収縮、精子輸送、着床環境などへの影響が考えられる | 卵管・卵巣・癒着・炎症などによる影響が考えられる |
| 併存 | 子宮内膜症を併存する場合がある | 子宮腺筋症を併存する場合がある |
子宮腺筋症は、以前「内性子宮内膜症」と呼ばれたこともあります。
しかし現在は、子宮内膜症と関連する部分はあるものの、別の疾患として考えられています。
子宮腺筋症と子宮内膜症を同時に持っている方もいるため、不妊診療では子宮だけでなく卵巣や骨盤内の状態も合わせて確認することがあります。
子宮腺筋症と不妊との関連は報告されていますが、その原因を一つだけで説明することはできません。
子宮の筋肉や子宮内膜周辺の環境が変化することで、妊娠までの複数の過程へ影響する可能性が考えられています。
子宮は、妊娠していないときにもごく小さな収縮や蠕動をしています。
こうした子宮の動きは、精子が子宮から卵管へ移動することや、胚が子宮内で適切な位置へ移動することにも関係すると考えられています。
子宮腺筋症では、筋層の肥厚や線維化などによって、子宮の収縮や蠕動が正常とは異なる状態になる可能性があります。
自然妊娠では、性交によって膣内へ入った精子が、子宮頸管、子宮腔を通って卵管へ進み、排卵された卵子と出会う必要があります。
日本産婦人科医会では、子宮腺筋症による子宮内膜直下の筋層の蠕動異常などが、精子輸送へ影響する可能性を不妊との関連機序の一つとして挙げています。
受精卵は子宮へ移動した後、子宮内膜へ着床します。
子宮腺筋症では、慢性的な炎症や子宮筋層・子宮内膜周辺の環境変化によって、胚を受け入れる子宮内膜の状態に影響する可能性があります。
体外受精・胚移植を行った女性でも、子宮腺筋症がある場合に着床率が低下する傾向が報告されています。
ただし、子宮腺筋症があるから胚が必ず着床しないという意味ではありません。
子宮腺筋症の病変が大きい場合や子宮全体が著しく腫大している場合には、子宮腔の形態へ影響する場合があります。
子宮腔の変形などによって妊娠に影響する可能性も考えられています。
子宮腺筋症のある方では、子宮内膜症や子宮筋腫などを同時に認める場合があります。
また、子宮腺筋症は比較的年齢が高くなってから診断されるケースもあり、加齢による妊孕性低下の影響も考える必要があります。
そのため、妊娠しにくい原因を「子宮腺筋症だけ」と決めつけないことが重要です。
排卵、卵管、卵巣予備能、男性側の精液所見なども確認し、不妊原因全体を評価します。
子宮腺筋症の代表的な症状の一つが月経困難症です。
月経時の下腹部痛が強く、鎮痛薬が必要になる場合があります。
以前はそれほど月経痛がなかったのに、年齢とともに月経痛が強くなってきた場合などに検査を行い、子宮腺筋症が見つかることもあります。
子宮腺筋症では、月経量が多くなる過多月経がみられることがあります。
経血量が多い状態が続くと、鉄欠乏性貧血につながり、疲れやすさ、息切れ、めまいなどが生じる場合もあります。
月経期間だけではなく、月経以外の時期にも骨盤周辺の痛みや下腹部痛を感じる場合があります。
子宮内膜症などを合併している場合には、性交痛などがみられることもあります。
月経時期以外に性器出血がみられることがあります。
ただし、不正出血には子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮内膜の異常などさまざまな原因があるため、出血だけから子宮腺筋症と判断することはできません。
子宮腺筋症があっても、月経痛や過多月経などの症状をほとんど自覚しない方もいます。
不妊検査で経腟超音波検査を受けた際に、初めて子宮腺筋症を指摘されるケースもあります。
症状が軽いから妊娠へ影響しない、症状が強いから妊娠できない、と単純に判断することはできません。
不妊診療で子宮腺筋症を確認する代表的な方法が経腟超音波検査です。
腟から超音波プローブを入れ、子宮筋層の厚さや内部構造、子宮全体の大きさなどを確認します。
子宮腺筋症では、筋層が不均一に厚くなっている、筋層内に小さな嚢胞がみられるなど、特徴的な所見を認める場合があります。
MRIは、子宮筋層の状態や子宮腺筋症の広がりをより詳しく確認するために行うことがあります。
子宮腺筋症の診断だけでなく、病変の位置・範囲を確認したり、子宮筋腫などと区別したりするうえでも利用されます。
日本産婦人科医会では、経腟超音波とMRIの所見から子宮腺筋症の病態・重症度を評価し、子宮内膜症や子宮筋腫の合併も確認することを勧めています。
子宮腺筋症では子宮筋層が厚くなるため、画像検査で子宮筋腫との区別が必要になる場合があります。
一般的に子宮筋腫は周囲との境界が比較的明瞭な腫瘤としてみられることが多い一方、子宮腺筋症では筋層内へ病変が広がるため境界が不明瞭な場合があります。
ただし、限局性の子宮腺筋症では子宮筋腫と似て見えることもあります。
子宮腺筋症と子宮内膜症を同時に認める場合があります。
そのため、超音波検査などで卵巣チョコレート嚢胞などがないか、骨盤内にほかの病変がないかも確認します。
子宮腺筋症は不妊との関連がある病気ですが、子宮腺筋症がある方全員が不妊になるわけではありません。
病変があっても自然妊娠する方もいます。
そのため、「子宮腺筋症がある=最初から体外受精が必要」とは限りません。
日本産婦人科医会では、月経痛や過多月経などの症状がない、または軽度の子宮腺筋症合併不妊では、まず不妊治療を先行する考え方を示しています。
年齢、卵管の状態、精液所見などに問題がなければ、タイミング法や人工授精から治療を開始する場合もあります。
一般不妊治療を続けても妊娠しない場合には、子宮腺筋症が妊孕性へ影響している可能性を含めて治療方針を再評価します。
必要に応じて、薬物療法を挟む、体外受精へステップアップする、病変の状態によっては手術を検討するなどの選択肢があります。
不妊治療では、子宮腺筋症だけでなく女性の年齢も重要です。
子宮腺筋症の治療に長期間をかけている間にも、加齢による卵子数・卵子の質への影響は進みます。
そのため、年齢が高い、不妊期間が長い、卵巣予備能が低下しているといった場合には、一般不妊治療を長期間繰り返さず、早めに体外受精などを検討することがあります。
体外受精・胚移植を行った女性を対象とした研究では、子宮腺筋症がある方で着床率や妊娠率が低い傾向が報告されています。
ASRMの2026年の反復着床不全に関する委員会見解でも、子宮腺筋症は着床率低下と関連することが示されています。
一方で、研究対象となった患者背景や子宮腺筋症の診断方法、病変の程度などは研究によって異なります。
そのため、子宮腺筋症があるという情報だけから、個人の体外受精の成功率を算出することはできません。
子宮腺筋症がある女性では、妊娠成立後の流産率が高い傾向を示した研究もあります。
子宮の炎症、子宮内膜環境、胎盤形成などへの影響が関係している可能性が考えられています。
ただし、女性の年齢、胚の染色体異常、子宮内膜症など、流産に関係するほかの因子もあるため、個人の流産原因を子宮腺筋症だけに決めることはできません。
着床率低下などとの関連が報告されている一方、子宮腺筋症がある方でも体外受精・胚移植によって妊娠・出産に至るケースはあります。
「腺筋症があるから体外受精をしても意味がない」というわけではありません。
女性の年齢、卵巣予備能、採卵数、胚の状態、病変の広がりなども含めて治療方針を考えます。
子宮腺筋症がある場合、胚移植前にGnRHアゴニストなどで病変の活動性を抑えてから胚移植する方法が行われることがあります。
しかし、ASRMの2026年の委員会見解では、子宮腺筋症がある女性に対して胚移植前にGnRHアゴニストや手術を行うことを支持するエビデンスは限定的としています。
そのため、「子宮腺筋症があるなら全員がGnRHアゴニスト治療をしてから胚移植すべき」とは言えません。
病変の程度、症状、これまでの胚移植結果などを踏まえて個別に判断します。
子宮腺筋症の治療では、月経痛・過多月経などの症状を抑えることと、妊娠を目指すことを分けて考える必要があります。
| 治療 | 主な目的 | 妊娠希望がある場合の考え方 |
|---|---|---|
| 鎮痛薬など | 月経痛などの症状を抑える | 症状・妊活時期に応じて使用を検討 |
| ジエノゲスト・LEPなど | 月経痛・過多月経などを改善する | 排卵を抑えるため、妊娠を目指す期間には使用方法を検討する |
| GnRHアナログ製剤 | 一時的に病変の活動性や子宮腫大を抑える | 症例によって不妊治療前などに使用する場合がある |
| 子宮腺筋症摘出術 | 腺筋症病巣を切除する | 限局性病変など選択された症例で検討 |
| 人工授精・ART | 妊娠成立を目指す | 年齢やほかの不妊原因に応じて早期に検討することもある |
子宮腺筋症の薬物療法には、症状や治療目的に応じて、ジエノゲスト、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)、GnRHアナログ製剤などが使用されます。
2026年に公開された日本産婦人科医会の解説でも、過多月経を有する子宮腺筋症への薬物療法としてこれらが挙げられています。
子宮腺筋症に対する内分泌療法の多くは、排卵を抑えたり子宮内膜へ作用したりすることで症状を改善します。
そのため、治療薬を使用している期間は、同時に自然妊娠を目指す治療にはならない場合があります。
妊娠を希望している場合には、「症状を抑えるためにどのくらいの期間治療するのか」「いつ不妊治療を再開するのか」まで含めて計画することが重要です。
日本産婦人科医会では、子宮腺筋症に対する内分泌療法による妊娠率改善効果は必ずしも明らかではないとしています。
また、内分泌療法を行っている期間は妊娠を試みる時期が先延ばしになるため、挙児希望がある場合には年齢も考えて使用する必要があります。
月経症状が強い場合や子宮腫大が著しい場合などには、GnRHアナログ製剤を一定期間使用し、腺筋症病巣の大きさ・活動性を抑えてから妊娠を目指す場合があります。
また、凍結胚移植の前にGnRHアゴニストなどを使用する治療法が検討されることもあります。
一方で、体外受精を行うすべての子宮腺筋症患者にこの治療が有効であることが確立しているわけではありません。
病巣の状態、症状、これまでの不妊治療歴などを踏まえて判断します。
妊娠を希望している方では、子宮を残しながら腺筋症病巣を切除する「子宮腺筋症摘出術」が検討される場合があります。
子宮を摘出する手術とは異なり、妊孕性を残すことを目的とした手術です。
子宮腺筋症摘出術は、すべての不妊女性へ行う治療ではありません。
例えば、病巣が限局しており、切除後に子宮筋層を再建できると考えられる場合や、月経痛・過多月経などの症状が強く、ほかの治療で十分な改善が得られない場合などに検討されることがあります。
日本産婦人科医会では、子宮内腔が正常に保たれており、不妊治療に耐えられる程度の症状であれば、腺筋症摘出術より一般不妊治療・ARTを優先する考え方も示しています。
子宮腺筋症は正常な子宮筋層との境界が不明瞭なことがあり、子宮筋腫のように病変だけを簡単にくり抜けるとは限りません。
そのため、さまざまな手術方法が行われており、統一された術式が確立しているわけではありません。
日本産婦人科医会では、子宮腺筋症摘出術を行う施設は限定的としています。
子宮腺筋症摘出術後に妊娠した報告はありますが、手術によってすべての方の妊娠率が改善することを示す十分な根拠があるわけではありません。
また、手術後の妊娠には子宮破裂などの重要なリスクがあります。
そのため、手術によるメリットだけでなく、手術に伴うリスクや待機期間、女性の年齢などを含めて判断する必要があります。
子宮腺筋症摘出術では、子宮筋層を切開して病変を切除し、残った筋層を縫合・再建します。
そのため、手術後の子宮には瘢痕が残ります。
妊娠すると子宮が大きく伸びるため、まれではあるものの手術部位で子宮破裂が起こる可能性があります。
日本産婦人科医会でも、腺筋症摘出術後の妊娠では子宮破裂のリスク上昇に注意する必要があるとしています。
子宮腺筋症摘出術後の妊娠では、胎盤が通常より深く子宮壁へ付着する癒着胎盤などのリスク上昇も報告されています。
そのため、妊娠後は手術歴を産科医へ伝え、必要な妊娠管理を受けることが重要です。
子宮筋層を切開・縫合した後は、子宮が回復する期間が必要です。
日本産婦人科医会では、術後の子宮筋層の回復を画像検査などで確認したうえで妊娠を許可することが望ましいとしています。
数か月程度の避妊・待機期間を設ける場合もありますが、具体的な期間は病変の範囲や術式、術後の子宮の状態などによって異なります。
手術を行った医師の指示に従いましょう。
子宮腺筋症摘出術を行う場合、手術前後の治療や回復期間によって、不妊治療を再開するまでに時間がかかります。
特に女性の年齢が高い場合や卵巣予備能が低下している場合には、その期間にも卵巣機能への加齢の影響が進みます。
そのため、先に体外受精で採卵して胚を凍結し、その後に手術を行い、子宮が回復してから胚移植する方法を検討する場合があります。
手術と採卵のどちらを先に行うかは、年齢、AMHなどの卵巣予備能、病巣の程度、症状などから判断します。
子宮腺筋症がある不妊女性に対して、腺筋症治療と不妊治療のどちらを必ず先に行うべきかについて、統一された考え方はありません。
日本産婦人科医会でも、年齢、症状、病巣の大きさ、ほかの不妊原因を考慮して治療方法を選択することを推奨しています。
月経痛・過多月経などの症状がほとんどなく、病変も大きくない場合には、まずタイミング法や人工授精などの不妊治療を行うことがあります。
腺筋症治療のために妊娠を目指す時期を遅らせることが、必ずしも有利とは限らないためです。
一方、強い月経痛や過多月経がある、子宮が著しく大きくなっているなどの場合には、妊娠を目指す前に一定期間腺筋症への治療を行うことがあります。
GnRHアナログなどによって病変の活動性や子宮腫大を抑えてから不妊治療へ進む方法もあります。
不妊治療では「子宮の状態を整えること」と同時に、「現在の卵子で妊娠を目指せる時間」も考える必要があります。
特に、年齢が高い、AMHが低い、不妊期間が長いといった場合には、腺筋症の治療に長期間をかけるより、早めに体外受精・採卵へ進むことが適している場合があります。
子宮腺筋症だけで治療順序を決めることも適切ではありません。
例えば、両側卵管閉塞や高度男性不妊があれば、タイミング法や人工授精を長期間続けても妊娠を期待しにくいため、早い段階で体外受精・顕微授精を検討します。
反対に、年齢が若く、卵管・精液所見などにも問題がなく、腺筋症も軽度であれば、一般不妊治療から開始する場合があります。
子宮腺筋症がある女性では、子宮腺筋症がない女性と比べて流産率が高い傾向を示した研究があります。
子宮内膜・筋層の炎症や、着床・胎盤形成への影響などが関係している可能性が考えられています。
流産にはさまざまな原因があります。
特に妊娠初期の流産には胚の染色体異常が関係することが多く、母体年齢も重要な要素です。
また、子宮腺筋症のある不妊女性は年齢が高い場合やARTによって妊娠している場合もあり、複数の要因が重なっています。
そのため、「子宮腺筋症がある=流産の原因」と個人レベルで断定することはできません。
流産を繰り返す場合には、子宮腺筋症だけではなく、染色体、子宮形態、抗リン脂質抗体症候群などほかの原因についても評価します。
子宮腺筋症は妊娠成立までだけではなく、妊娠後にも影響する可能性があります。
日本産婦人科医会では、子宮腺筋症合併妊娠をハイリスク妊娠として扱い、妊娠中の慎重な管理が必要としています。
子宮腺筋症がある妊婦では、次のような妊娠・出産関連の合併症が増えることが報告されています。
これらが必ず起こるという意味ではありませんが、子宮腺筋症があることを産科医へ伝え、妊娠経過を確認してもらうことが重要です。
不妊治療施設から産科へ転院する際には、子宮腺筋症があることや、病変の位置・大きさなどを共有しましょう。
子宮腺筋症摘出術を受けている場合は、手術時期や手術方法についても伝えることが重要です。
子宮腺筋症摘出術後の妊娠では、子宮破裂や癒着胎盤など重い合併症のリスクがあります。
分娩方法についても、手術内容や子宮筋層の状態などを踏まえ、予定帝王切開などを検討する場合があります。
子宮腺筋症がある場合の不妊治療は、年齢、症状、病変の広がり、卵巣予備能、ほかの不妊原因などから個別に組み立てます。
| 状態 | 治療の考え方 |
|---|---|
| 年齢が若く症状・病変が軽い | タイミング法・人工授精など一般不妊治療を検討 |
| 年齢が高い・不妊期間が長い | 早めの体外受精・顕微授精を検討 |
| 月経痛・過多月経や子宮腫大が強い | 一定期間の薬物療法を行う場合がある |
| 胚移植を繰り返しても着床しない | 腺筋症を含め子宮側の因子を再評価する |
| 限局性病変で症状・不妊への影響が強い | 専門施設で腺筋症摘出術を検討する場合がある |
| 高年齢で手術を予定している | 採卵・胚凍結を手術前に行うことを検討する場合がある |
女性の年齢が比較的若く、卵管の通過性や男性側の精液所見に大きな問題がなく、子宮腺筋症の症状も軽い場合には、タイミング法や人工授精から治療を始めることがあります。
ただし、一定期間治療しても妊娠しない場合には漫然と同じ治療を続けず、体外受精などへのステップアップを検討します。
一般不妊治療で妊娠しない場合や、女性の年齢が高い、卵管因子・男性因子などほかの不妊原因がある場合には、体外受精・顕微授精を検討します。
ARTは子宮腺筋症自体を治療する方法ではありませんが、子宮腺筋症合併不妊症で妊娠を目指すための重要な選択肢です。
良好な胚を移植しても妊娠に至らない状態が続く場合には、子宮腺筋症が着床へ影響していないかを含め、治療方針を見直すことがあります。
ただし、ASRMでは子宮腺筋症のある反復着床不全患者に対するGnRHアゴニストや手術について、現時点では十分な質の高いエビデンスがないとしています。
そのため、治療歴、病変の程度、胚の状態などを踏まえて個別に判断することが重要です。
子宮腺筋症が見つかっても、それだけが不妊原因とは限りません。
排卵、卵管、卵巣予備能、年齢、男性側の精液所見なども評価し、夫婦全体の不妊原因を確認してくれる医療機関を選びましょう。
子宮腺筋症では、病変の位置や広がりによって治療方針が変わる場合があります。
必要に応じて経腟超音波やMRIによって病変の状態を詳しく確認し、子宮筋腫や子宮内膜症との合併についても評価してもらえるか確認しましょう。
子宮腺筋症合併不妊では、「腺筋症を治すこと」と「妊娠を目指すこと」を切り離して考えることはできません。
症状を抑えるために薬物療法を長期間続けることで、妊娠を目指す時期が遅れる場合もあります。
病気の治療だけでなく、年齢・卵巣予備能を踏まえて「妊娠できる時間をどう使うか」まで考えてくれる医療機関か確認しましょう。
年齢やほかの不妊原因によっては、一般不妊治療を長期間続けるより早くARTへ進んだ方がよい場合があります。
タイミング法・人工授精だけでなく、体外受精・顕微授精まで含めて治療計画を提案できるか確認しましょう。
子宮腺筋症摘出術は、どこの婦人科でも行われている一般的な手術ではありません。
手術が必要と判断された場合に、腺筋症の手術経験がある専門施設へ紹介・連携できるかも重要です。
A.子宮腺筋症があっても妊娠することはできます。
子宮腺筋症は妊孕性低下との関連が報告されていますが、病変の状態や年齢、ほかの不妊原因によって影響は異なります。
A.自然妊娠できる場合があります。
年齢が若く、症状や病変が軽く、卵管や男性側の精液所見などに問題がなければ、自然妊娠や一般不妊治療から妊娠を目指す場合があります。
A.同じ病気ではありません。
子宮腺筋症は主に子宮筋層内に病変が存在し、子宮内膜症は卵巣や腹膜など子宮の外側に病変がみられる病気です。
ただし、両方を同時に持っている方もいます。
A.異なります。
子宮筋腫は子宮筋層から発生する良性腫瘍で、子宮腺筋症は子宮筋層内に子宮内膜に似た組織が存在する病気です。
画像上似ている場合もあるため、超音波やMRIなどで評価します。
A.症状がなくても妊孕性へ影響する可能性はあります。
月経痛や過多月経の強さだけから、不妊への影響を判断することはできません。
A.子宮腺筋症がある女性では、体外受精における着床率や妊娠率の低下、流産率上昇との関連が報告されています。
ただし、個人の成功率は年齢、卵子・胚の状態、病変の程度などによっても異なり、子宮腺筋症だけで予測することはできません。
A.すべての方に必要とは言えません。
病変の大きさや症状、これまでの胚移植歴などによって使用する場合がありますが、ASRMでは胚移植前のGnRHアゴニスト治療を一律に支持できるほどのエビデンスは十分ではないとしています。
A.ジエノゲストなどの内分泌療法は排卵を抑えるため、通常は服用しながら自然妊娠を目指す治療ではありません。
妊娠を希望している場合は、何を目的としてどのくらいの期間使用するのかを医師と相談しましょう。
A.子宮腺筋症摘出術後に妊娠した報告はありますが、すべての不妊女性で手術によって妊娠率が改善すると確立しているわけではありません。
手術後には子宮破裂などのリスクもあるため、病変、症状、年齢などから慎重に判断します。
A.子宮筋層の回復を確認するため、手術後に一定期間妊娠を避ける場合があります。
必要な待機期間は手術範囲や術式によって異なるため、手術を行った医師の指示に従ってください。
A.年齢が高い場合や卵巣予備能が低い場合には、手術や術後待機期間による時間経過を考え、先に採卵・胚凍結を行うことがあります。
全員に必要ではないため、AMHや年齢などを踏まえて医師と相談します。
A.子宮腺筋症がある女性では流産率が高い傾向が報告されています。
ただし、流産には女性年齢や胚の染色体異常など多くの要因が関係するため、個人の流産原因を子宮腺筋症だけに特定することはできません。
A.子宮腺筋症合併妊娠では、早産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全、胎盤位置異常などのリスク上昇が報告されています。
妊娠したら腺筋症があることや手術歴を産科医へ伝え、必要な妊娠管理を受けましょう。
子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮筋層内に存在する良性の病気です。
月経痛、過多月経、慢性骨盤痛などが代表的な症状ですが、症状がほとんどなく、不妊検査で初めて見つかる場合もあります。
子宮腺筋症では、子宮の収縮・蠕動、精子輸送、子宮内膜の着床環境などへの影響によって、妊孕性が低下する可能性が考えられています。
また、体外受精における着床率や妊娠率の低下、流産率の上昇との関連も報告されています。
一方で、子宮腺筋症があるからといって、自然妊娠や体外受精による妊娠ができないわけではありません。
年齢が若く、症状・病変が軽い場合には、タイミング法や人工授精などから治療を始めることがあります。
反対に、年齢が高い、不妊期間が長い、卵管因子・男性因子などもある場合には、腺筋症の治療だけに時間をかけず、早い段階で体外受精へ進む場合があります。
薬物療法には月経痛や過多月経を改善する効果がありますが、内分泌療法によって妊娠率が改善するかは必ずしも明確ではありません。
また、内分泌療法中は排卵が抑えられるため、妊娠を希望する方では治療期間も重要です。
子宮腺筋症摘出術を検討する場合もありますが、手術によって全員の妊娠率が改善するとは限らず、術後妊娠では子宮破裂や癒着胎盤などにも注意が必要です。
そのため、子宮腺筋症合併不妊では、「腺筋症を治してから妊活する」という一方向の考え方ではなく、年齢、症状、病変の程度、卵巣予備能、ほかの不妊原因を確認し、「病気の治療に使う時間」と「妊娠を目指す時間」のバランスを考えることが大切です。
京都で不妊治療を検討している方は、子宮腺筋症だけを見るのではなく、夫婦双方の不妊原因を確認し、一般不妊治療・ART・腺筋症への治療を組み合わせて治療計画を提案してくれる医療機関へ相談しましょう。
主な参考情報
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf