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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経周期の乱れや排卵障害を起こすことがあり、不妊の原因の一つとして知られています。
「PCOSと診断されたら妊娠できないのでは」「自然妊娠は難しいのでは」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、PCOSと診断されたからといって、妊娠できないという意味ではありません。
PCOSでは、卵胞が育っても排卵まで進みにくくなることで、妊娠できる機会が少なくなる場合があります。一方、自然に排卵して妊娠する方もいれば、排卵誘発によって妊娠を目指せるケースもあります。
大切なのは、PCOSという診断名だけで判断するのではなく、実際に排卵しているか、年齢、卵管の状態、男性側の精液所見なども確認し、夫婦双方の状態に合わせて治療方法を考えることです。
多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovary Syndrome:PCOS)は、排卵や月経周期に関係する疾患です。
卵巣の中には、卵子を含む「卵胞」があります。通常は複数の卵胞の中から一つが成長し、成熟すると排卵します。しかしPCOSでは、多数の小さな卵胞がみられる一方で、卵胞が十分に成熟して排卵するまで進みにくくなることがあります。
そのため、月経周期が長くなったり、月経が数か月来なかったり、排卵しない周期が生じたりすることがあります。
PCOSは「卵子がない病気」ではありません。卵胞が存在していても、規則的に成熟・排卵しにくいことが不妊につながる場合があると考えると分かりやすいでしょう。
日本産科婦人科学会の「多嚢胞性卵巣症候群の診断基準(2024)」では、成人の場合、ほかの似た病気を除外したうえで、基本的に以下の3項目をすべて満たす場合をPCOSとしています。
| 診断項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 1.月経周期異常 | 無月経、希発月経、無排卵周期症のいずれか |
| 2.卵巣所見 | 多嚢胞卵巣 または AMH高値 |
| 3.ホルモン等 | アンドロゲン過剰症 または LH高値 |
つまり、超音波検査で小さな卵胞が多く見えただけ、あるいはAMHが高かっただけでPCOSと診断されるわけではありません。
また、月経周期異常を起こす病気には、甲状腺疾患や高プロラクチン血症などPCOS以外の原因もあります。そのため、必要な検査を行い、ほかの病気と区別したうえで診断します。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、主に発育途中の卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣に残っている卵胞数の目安となる「卵巣予備能」を推測するために利用されています。
PCOSでは小さな卵胞が多数存在することがあるため、AMHが高くなる場合があります。2024年のPCOS診断基準では、一定の条件下でAMH高値を多嚢胞卵巣所見の代わりに用いることができるようになりました。
ただし、AMHが高いだけではPCOSとは診断できません。また、「AMHが高い=妊娠しやすい」という意味でもありません。
AMHは卵胞数の目安にはなりますが、卵子の質や自然妊娠できる確率を直接示す検査ではありません。AMHについて詳しく知りたい方は、京都でAMH検査を受けられる不妊治療クリニック|卵巣予備能を調べたい方へもご覧ください。
PCOSが不妊につながる主な理由は、排卵が起こりにくくなることによって、妊娠できる機会が少なくなるためです。
妊娠が成立するためには、卵巣から排卵された卵子と精子が出会い、受精する必要があります。
一般的には、卵胞が発育して成熟すると排卵が起こります。しかしPCOSでは、複数の卵胞が途中まで育っても、その中から成熟した卵胞が選ばれにくく、排卵まで進まないことがあります。
その結果、以下のような状態がみられる場合があります。
例えば、月経周期が約28日であれば年間の周期はおよそ13回ありますが、60日程度の周期では年間6回程度になります。すべての周期で排卵するとは限らないものの、周期が大きく延びれば、それだけ妊娠を試みられる機会が少なくなる可能性があります。
月経のような出血があるからといって、必ず毎周期排卵しているとは限りません。
排卵せずに出血が起こる「無排卵周期症」もあるため、月経周期が大きく乱れている場合や、妊活を続けても妊娠しない場合には、超音波検査やホルモン検査などで排卵の状態を確認します。
PCOSであっても、自然に排卵が起きていれば自然妊娠する可能性があります。
PCOSの状態には個人差があり、毎月ではなくても自然排卵がある方もいます。そのため、「PCOS=自然妊娠できない」と考える必要はありません。
一方で、排卵回数が少ない場合には妊娠する機会が限られるため、妊娠を希望しているのであれば、排卵の有無を確認したうえで必要に応じて治療を検討します。
また、妊娠のしやすさには女性の年齢、卵管の状態、子宮の状態、男性側の精子なども関係します。PCOSだけを妊娠しない原因と決めつけないことも重要です。
PCOSがあり妊娠を希望している場合は、「PCOSであるか」という診断だけでなく、排卵の状態やPCOS以外の不妊原因についても確認します。
月経周期や卵胞の発育状況を確認し、排卵が起きているかを調べます。
状態に応じて、以下のような検査が行われます。
どの検査を行うか、いつ検査するかは月経周期や症状によって異なります。
PCOSによる排卵障害が確認されても、妊娠しない原因がPCOSだけとは限りません。
女性側では、卵管が通っているか、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどがないかを調べることがあります。
また、不妊症には男性側の要因も関係するため、パートナーの精液検査で精子濃度や運動率などを確認することも大切です。
| 確認する要素 | 主な検査・確認内容 |
|---|---|
| 排卵 | 超音波検査、ホルモン検査など |
| 卵管 | 子宮卵管造影検査など |
| 子宮・骨盤内 | 超音波検査、必要に応じて子宮鏡・MRI等 |
| 卵巣予備能 | AMHなど |
| 男性側 | 精液検査など |
PCOSによる無排卵だけが不妊原因なのか、ほかの要因もあるのかによって、適した治療方法は変わります。
PCOSは排卵だけでなく、肥満やインスリン抵抗性、耐糖能異常など代謝の問題と関連する場合があります。
そのため、体重や既往歴などに応じて、血糖値やHbA1cなどを確認することがあります。
ただし、PCOSの方全員に肥満や糖尿病があるわけではありません。PCOSには非肥満の方もいるため、一人ひとりの状態に合わせて評価します。
PCOSによる不妊治療では、単純に「タイミング法から人工授精、体外受精へ進む」と考えるだけではなく、まず排卵が起きているかを確認し、必要であれば排卵を促すことが重要になります。
そのうえで、年齢や不妊期間、卵管の状態、男性側の精液所見などを踏まえて妊娠を目指します。
日本産科婦人科学会の2025年治療指針では、BMI 25kg/m2以上のPCOS患者では、挙児希望がある場合にも、排卵誘発を行う前に5~10%の減量と運動が推奨されています。
体重管理によって代謝状態や排卵が改善する場合があるためです。
ただし、PCOSの方全員が減量する必要があるわけではありません。非肥満の方が妊娠するために無理に体重を落とすことを推奨するものではなく、過度な食事制限も避ける必要があります。
また、年齢などによって治療を急いだ方がよい場合もあるため、具体的な減量目標や治療開始時期については医師と相談しましょう。
日本産科婦人科学会の2025年治療指針では、挙児希望がある非肥満のPCOS患者に対して、レトロゾール療法が第一選択として推奨されています。
レトロゾールは、卵胞の発育を促して排卵を起こす目的で使用されます。治療中は超音波検査などで卵胞の発育状態を確認しながら、排卵のタイミングに合わせて性交を行うタイミング法などで妊娠を目指します。
肥満がある場合は、体重管理や運動を行ったうえでレトロゾール療法を検討します。
なお、薬の種類や投与方法は患者の状態によって異なります。排卵誘発薬を自己判断で使用することはできないため、医師の管理のもとで治療を行います。
レトロゾールの副作用などによって使用が難しい場合には、クロミフェンが検討されることがあります。
また、レトロゾールなどを使用しても排卵しない場合や、肥満、耐糖能異常、インスリン抵抗性がある場合には、排卵誘発薬とメトホルミンを併用することがあります。
メトホルミンはPCOSの不妊治療で誰にでも使用する薬ではなく、代謝状態や排卵誘発への反応などを踏まえて選択されます。
内服薬による治療を行っても排卵しない場合には、FSH製剤を少量から投与して徐々に増量する「FSH低用量漸増療法」が検討されます。
PCOSでは卵巣内に多数の卵胞があるため、排卵誘発に対して複数の卵胞が同時に反応することがあります。そのため、超音波検査などで卵胞の数や大きさを確認しながら慎重に治療します。
内服薬やFSH低用量漸増療法で排卵が得られない場合などには、腹腔鏡下卵巣開孔術(LOD)が選択肢になることがあります。
腹腔鏡を使用して卵巣表面に小さな孔を開けることで、排卵を起こしやすくすることを目的とする治療です。
ただし、PCOSと診断された方が一般的に受ける手術ではありません。薬物療法への反応やほかの不妊原因、患者の年齢などを踏まえて適応を検討します。
PCOSだからといって、最初から体外受精が必要になるわけではありません。
排卵障害が主な不妊原因であれば、まず排卵誘発によって排卵を起こし、タイミング法などで妊娠を目指せる場合があります。
一方、以下のような場合には体外受精などの生殖補助医療(ART)を検討することがあります。
日本産科婦人科学会の2025年治療指針でも、年齢など患者背景によっては、一般不妊治療を長く続けず生殖補助医療へ移行することが考慮されています。
PCOSだから体外受精が必要とは限りません
PCOSによる主な不妊原因が排卵障害だけであれば、排卵誘発によって妊娠を目指せる場合があります。一方、年齢や卵管因子、男性因子、これまでの治療歴などによっては、早めに体外受精へ進む方が適していることもあります。
京都で体外受精を検討している方は、京都で体外受精(IVF)に対応する不妊治療クリニックの比較も参考にしてください。
PCOSの排卵誘発では、必要な数以上の卵胞が一度に発育することがあります。
そのため、排卵誘発を行う際には、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)にも注意する必要があります。
PCOSでは卵巣内に多数の小さな卵胞が存在するため、排卵誘発薬に対して複数の卵胞が反応する場合があります。
複数の卵子が排卵されると双胎などの多胎妊娠につながる可能性があり、卵巣が強く反応した場合にはOHSSを起こすこともあります。
OHSSでは卵巣が腫れ、腹部膨満感や腹痛、吐き気などが生じることがあります。重症化することもあるため、予防しながら治療を進めることが重要です。
排卵誘発治療では、超音波検査などで卵胞の数や大きさを確認し、薬剤の量や治療方針を調整します。
多数の卵胞が発育した場合には、多胎妊娠やOHSSを避けるため、その周期の排卵誘発を中止したり、治療方法を変更したりすることもあります。
PCOSの排卵誘発は「薬を飲んで排卵を待つだけ」ではなく、卵巣の反応を確認しながら安全性にも配慮して進める治療です。
一般に不妊症は、妊娠を希望する健康な男女が避妊をせず性交しているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態を指します。
一方、日本産科婦人科学会では、排卵がない、子宮内膜症があるなど妊娠しにくい原因が分かっている場合や、年齢を考慮して早期の治療が望ましい場合には、一定期間を待たずに検査・治療を開始した方がよい場合があると説明しています。
PCOSがあり、以下のような状況に該当する場合は、妊娠を希望していることを産婦人科や生殖医療を扱う医療機関へ相談してみましょう。
「PCOSだから、まず1年間は自然妊娠を待たなければならない」というわけではありません。排卵障害が疑われている時点で相談することができます。
京都で相談できる医療機関を探している方は、京都市周辺の不妊治療に対応している病院・クリニック一覧もご覧ください。
PCOSであっても、自然に排卵が起きていれば自然妊娠する可能性があります。
PCOSの程度や排卵頻度には個人差があるため、「PCOSと診断された=自然妊娠できない」という意味ではありません。
一方、排卵する周期が少ない場合には妊娠できる機会も少なくなるため、妊娠を希望している場合は排卵の状態を確認し、必要に応じて排卵誘発などを検討します。
あります。月経のような出血がみられていても、排卵を伴わない「無排卵周期」の場合があります。
特に月経周期が大きく乱れている場合には、超音波検査やホルモン検査などで排卵しているかを確認することがあります。
PCOSと診断されたことだけを理由に、「卵子の質が悪い」と判断することはできません。
卵子の質には年齢をはじめ複数の要因が関係します。また、AMHや超音波検査で確認できる卵胞数は、卵子の質そのものを示すものではありません。
PCOSという診断名だけではなく、年齢や治療経過なども含めて考えることが重要です。
AMHが高いからといって、妊娠しやすいとは限りません。
PCOSでは多数の小卵胞があるためAMHが高くなる場合があります。一方で、その卵胞が規則的に成熟して排卵するとは限りません。
AMHは主に卵巣予備能を推測するための指標であり、卵子の質や自然妊娠できる確率を直接示す検査ではありません。
一概には言えません。
BMI 25kg/m2以上のPCOSでは、体重を適正化することによって排卵や代謝状態が改善する場合があり、日本産科婦人科学会の治療指針でも減量と運動が推奨されています。
一方、非肥満のPCOS患者が無理に体重を減らすことを推奨するものではありません。また、減量すれば必ず妊娠できるというわけでもありません。
体重だけに原因を求めず、排卵や卵管、精液所見などを含めて治療方針を考えましょう。
必ずしも体外受精が必要なわけではありません。
PCOSによる排卵障害だけが主な不妊原因であれば、まず排卵誘発を行い、タイミング法などで妊娠を目指すことがあります。
ただし、女性の年齢、卵管の状態、男性側の精液所見、不妊期間、これまでの治療歴などによっては、早めに体外受精へ進むことが適している場合もあります。
PCOSは排卵障害を起こす代表的な疾患の一つですが、PCOSと診断されたからといって妊娠できないわけではありません。
PCOSでは卵胞が十分に成熟して排卵まで進みにくくなり、排卵する周期が少なくなることで妊娠の機会が減る場合があります。一方、自然排卵がある方もおり、排卵誘発によって妊娠を目指せるケースもあります。
PCOSと診断された場合は、「妊娠できるか、できないか」と診断名だけで考えるのではなく、自分の場合はどのくらい排卵しているのか、ほかに妊娠を妨げる要因がないかを確認することが大切です。
妊娠を希望している場合には、年齢や夫婦双方の検査結果も踏まえて、自分たちに合った治療方法を医師と相談しましょう。
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf