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体外受精で胚盤胞にならない原因は?初期胚移植との考え方

公開日: |最終更新日時:

目次

体外受精では、採卵した卵子が受精した後、数日間培養して胚の発育を確認します。

その中で、「正常に受精したのに胚盤胞まで育たなかった」「毎回、途中で発育が止まってしまう」と説明され、不安になる方もいるでしょう。

受精した胚がすべて胚盤胞まで発育するわけではありません。また、胚盤胞にならなかった理由を、一度の培養結果だけから「卵子の質が悪い」「精子に問題がある」など一つの原因に特定できるとは限りません。

胚の発育には、卵子や精子、胚そのものの生物学的な要因、培養環境など複数の要素が関係します。

また、胚盤胞まで培養することがすべての方にとって最適とは限らず、胚の数や過去の培養結果などによっては初期胚移植を検討する場合もあります。

ただし、「培養室では胚盤胞にならなくても、初期胚で子宮へ戻せば必ず育つ」という意味ではありません。

この記事では、体外受精で胚盤胞にならない場合に考えられること、5日目以降の胚の発育、初期胚移植と胚盤胞移植の違い、次の採卵・移植に向けて確認したいポイントを解説します。

本記事は2026年8月時点の専門学会等の公開情報をもとに作成しています。胚の発育状況や凍結・移植の基準は医療機関によって異なります。個々の胚の評価や次回の治療方針については、担当医・培養士から説明を受けてください。

胚盤胞とは?受精卵はどのように育つ?

採卵した卵子が受精すると、細胞分裂を繰り返しながら発育していきます。

時期の目安 胚の発育段階
受精翌日 受精確認
2日目ごろ 分割期胚
3日目ごろ 分割期胚
4日目ごろ 桑実胚
5~6日目ごろ 胚盤胞へ発育する胚が増える
7日目 遅れて胚盤胞へ到達する胚もある

受精後は細胞分裂を繰り返す

正常受精が確認された胚は、その後2細胞、4細胞、8細胞前後へと細胞分裂を繰り返します。

さらに細胞同士がまとまる桑実胚という段階を経て、内部に空洞が形成された胚盤胞へ発育します。

胚盤胞は5~6日目ごろに確認されることが多い

胚盤胞は受精後5~6日目ごろに形成されることが多いですが、胚の発育速度には個体差があります。

そのため、5日目にまだ胚盤胞になっていなくても、6日目以降まで培養を続ける場合があります。

医療機関によっては、胚の状態を見ながら7日目まで評価することもあります。

胚盤胞になった後も発育状態を評価する

胚盤胞になればすべて同じ状態というわけではありません。

胚盤胞では、胚の広がり方や、将来胎児になる内部細胞塊、胎盤などになる栄養外胚葉の状態などをもとに形態評価を行います。

その評価や発育した日などを参考に、凍結や移植の順番を決めます。

受精卵はすべて胚盤胞になるわけではない

「受精した」と「胚盤胞まで育つ」は別の段階

体外受精では、治療結果を段階ごとに分けて考えることが重要です。

例えば、

  • 卵子を採取できた
  • 成熟卵だった
  • 正常受精した
  • 細胞分裂した
  • 桑実胚まで育った
  • 胚盤胞まで育った

という各段階で、次の段階まで発育する胚の数は減ることがあります。

そのため、正常受精が確認できても、そのすべてが胚盤胞まで発育するとは限りません。

胚盤胞まで培養すると移植できる胚がなくなる場合もある

胚盤胞培養では、数日間の発育を確認したうえで移植・凍結する胚を選べるというメリットがあります。

一方で、胚盤胞まで発育しなければ、その周期に移植・凍結できる胚がなくなる場合があります。

そのため、胚盤胞まで培養するか、分割期の初期胚で移植・凍結するかは、胚の数や患者の背景などを踏まえて判断します。

体外受精で胚盤胞にならない原因は?

胚盤胞まで発育しなかった場合、「何が原因だったのでしょうか」と感じる方は多いでしょう。

しかし、胚が途中で発育停止したという結果だけから、一つの原因を特定できるとは限りません。

卵子側の要因

胚発育には卵子が持つさまざまな要素が関係します。

採卵した卵子の成熟状態や、受精・細胞分裂に必要な細胞内の働きなどが胚発育へ影響する可能性があります。

また、女性の年齢が上がるにつれて卵子・胚の染色体異常が増加することが知られており、発育途中で停止する背景の一つとなる可能性があります。

ただし、「胚盤胞にならなかった=卵子の質が悪い」と一律に判断することはできません。

精子側の要因

精子は受精する段階だけでなく、その後の胚発育にも関係します。

そのため、受精が成立したからといって、男性側の要因が完全に除外されるわけではありません。

一方で、胚盤胞にならなかったという結果だけから「精子が原因」と判断することもできません。

胚そのものの生物学的な要因

正常に受精したように見える胚でも、細胞分裂を続ける過程で発育が止まることがあります。

胚自身の染色体など生物学的な要因が関係している場合もあります。

ただし、発育停止した胚がすべて染色体異常だったと判断できるわけではありません。

培養環境・培養条件

胚は採卵後、培養室のインキュベーター内で数日間培養されます。

胚培養では、温度、pH、酸素濃度、培養液などを適切な状態に維持することが重要です。

現在の生殖補助医療では、胚への酸化ストレスを抑えるため、低酸素濃度での培養などが推奨されています。

ただし、一周期で胚盤胞が得られなかったことだけを理由に、「培養室の技術が悪い」と判断することもできません。

複数の要因が重なっている場合もある

胚発育は、卵子・精子・胚・培養環境などの一つだけで決まる単純なものではありません。

特に胚盤胞にならないことが繰り返されている場合は、「胚盤胞0個だった」という結果だけではなく、採卵から受精・分割までの経過を細かく振り返ることが重要です。

胚はどの段階で発育が止まったかを確認しよう

「胚盤胞にならなかった」と一言でいっても、発育が止まった時期には違いがあります。

受精後にほとんど分割しなかった

正常受精を確認した後、細胞分裂が進まない場合があります。

この場合は、受精後早い段階で発育が停止しています。

2~3日目の分割途中で止まった

2細胞、4細胞、8細胞など分割期胚までは発育したものの、その後の細胞分裂が進まなくなる場合があります。

「Day3までは何細胞だったのか」「形態評価はどうだったか」を確認すると、前周期との比較にも役立ちます。

桑実胚まで進んだが胚盤胞にならなかった

Day4前後にみられる桑実胚まで発育したものの、その後胚盤胞を形成しない場合もあります。

この場合も、何日目まで培養したのかを確認しましょう。

胚盤胞にはなったが凍結基準を満たさなかった

「胚盤胞にならなかった」と認識していても、実際には胚盤胞までは発育したものの、医療機関の凍結・移植基準を満たさなかったケースもあります。

これは「胚盤胞まで到達しなかった」場合とは異なります。

結果説明の際には、「胚盤胞にならなかったのか」「胚盤胞にはなったが凍結対象にならなかったのか」を確認するとよいでしょう。

5日目に胚盤胞にならなかったらもう育たない?

6日目に胚盤胞になる胚もある

胚盤胞形成の時期には個体差があり、5日目に胚盤胞になっていなくても、6日目に発育する胚があります。

そのため、「Day5で胚盤胞ではなかった=その胚は発育停止」とは限りません。

7日目まで培養する場合もある

さらに発育が遅く、7日目に胚盤胞となる胚もあります。

ただし、何日目まで培養するか、どの段階・グレードなら凍結するかは医療機関の基準によって異なります。

発育速度も胚を評価する情報の一つ

胚盤胞になった日も、胚を評価するときの情報の一つです。

一般に、同程度の形態で比較した場合、早く胚盤胞へ発育した胚が優先されることがあります。

一方で、6日目や7日目に胚盤胞になったから妊娠できないという意味ではありません。

胚盤胞にならないのは「卵子の質」が悪いから?

卵子は重要だが、卵子だけで説明できるとは限らない

胚は卵子と精子が受精してできるため、卵子の状態はその後の胚発育に関係します。

しかし、胚盤胞まで育たなかった原因を卵子だけに求めることはできません。

女性の年齢は重要な情報の一つ

女性の年齢が上がると、卵子や胚の染色体異常が増えるため、胚発育や妊娠率にも影響します。

そのため、胚盤胞にならないことが繰り返される場合には、年齢も含めて治療方針を検討します。

AMHは卵子の「質」を直接測る検査ではない

AMHは、卵巣内にどの程度卵胞が残っているか、卵巣刺激へどの程度反応しそうかを予測する際に用いられる指標です。

AMHが低いから「卵子の質が悪く胚盤胞にならない」と判断することはできません。

一周期の結果だけで決めつけない

採卵できる卵子や胚の発育結果には周期による違いもあります。

一度胚盤胞が得られなかっただけで、「自分の卵子では胚盤胞にならない」と考える必要はありません。

精子が原因で胚盤胞にならないことはある?

精子も受精後の胚発育に関係する

精子は卵子へ遺伝情報を届けるため、その状態も胚発育に関係します。

そのため、正常受精できた場合でも、その後の胚発育について男性側の要因を完全に除外できるとは限りません。

通常の精液検査だけでは分からないこともある

一般的な精液検査では、精液量、精子濃度、運動率などを確認します。

一方、精子のすべての機能を通常の精液検査だけで評価できるわけではありません。

追加検査を全員が受ける必要があるわけではない

胚盤胞にならなかったからといって、精子DNA断片化検査などの追加検査を全員が受けるべきとは限りません。

過去の精液所見、受精率、胚発育の経過などを踏まえて、追加評価が必要か医師へ確認しましょう。

顕微授精にすれば胚盤胞になりやすい?

顕微授精は「受精」を助ける治療

顕微授精(ICSI)は、1個の精子を卵子の中へ直接注入して受精を助ける治療です。

精子数や運動率が低い場合、過去に通常の体外受精で受精率が低かった場合などに検討されます。

顕微授精をすれば胚盤胞まで育つとは限らない

顕微授精は受精を成立させるための方法であり、受精後の胚が必ず胚盤胞まで発育することを保証する方法ではありません。

通常の体外受精で十分に受精している場合、胚盤胞にならなかったという理由だけで次回すべて顕微授精へ変更するとは限りません。

胚盤胞培養にはどんなメリットがある?

発育を確認して移植胚を選びやすい

Day2~3の分割期胚からさらに培養を続けることで、どの胚が胚盤胞まで発育するかを確認できます。

複数の胚がある場合には、発育した胚の中から移植する胚を選ぶための情報を増やせることがメリットです。

着床時期に近い段階まで胚を評価できる

自然妊娠では、受精した胚は卵管内を移動しながら分割し、胚盤胞に近い段階で子宮へ到達します。

胚盤胞移植では、それに近い発育段階まで培養した胚を子宮へ移植します。

良好な治療条件では胚盤胞移植に利点が示されている

年齢や胚数などの条件が良好な方では、同じ数の胚を移植した場合、分割期胚より胚盤胞を移植した方が出生につながる可能性が高いことを示した研究があります。

ただし、この結果をすべての患者へそのまま当てはめることはできません。

単一胚移植を行いやすい

発育した胚盤胞から移植胚を選ぶことで、1個の胚を移植する単一胚移植を行いやすくなり、多胎妊娠を避けることにもつながります。

胚盤胞培養のデメリットは?

途中で発育停止する胚がある

培養期間を延長するほど、発育を続ける胚と途中で停止する胚が分かれていきます。

胚盤胞に到達しない場合は、その胚を胚盤胞として移植・凍結することはできません。

移植できる胚が0になる可能性がある

初期胚の時点では移植できる状態の胚があっても、全てを胚盤胞まで培養した結果、移植できる胚がなくなる場合があります。

胚盤胞培養では、この「移植キャンセル」の可能性が初期胚移植より高くなることが報告されています。

胚数が少ない場合は判断が難しくなる

多数の良好胚がある場合は、胚盤胞まで培養して選択するメリットを得やすくなります。

一方で胚が1~2個しかない場合などには、胚盤胞まで培養するか、初期胚で移植・凍結するかを慎重に検討します。

胚盤胞まで育てることが全員に最適とは限らない

「胚盤胞移植の方が新しいから優れている」「必ず胚盤胞にしてから移植した方がよい」というものではありません。

患者の年齢や胚数、過去の治療結果などによって適した培養・移植方法は変わります。

胚盤胞にならない場合、初期胚移植という選択肢はある?

初期胚移植とは?

初期胚移植とは、受精後2~3日程度の分割期胚を子宮へ移植する方法です。

胚盤胞移植よりも短い培養期間で移植します。

胚の数が少ない場合などに検討されることがある

過去に胚盤胞まで培養して移植できる胚がなくなった場合や、得られた胚が少ない場合などに、初期胚での移植を検討することがあります。

実際に初期胚移植が適しているかは、年齢、胚の状態、過去の治療結果などから個別に判断します。

培養室で胚盤胞まで待たず子宮へ戻す方法

初期胚移植では、分割期の段階で胚を子宮へ移し、その後の発育は子宮内で進むことになります。

そのため、胚盤胞培養のように「その胚が体外で胚盤胞まで育ったか」を確認してから移植することはできません。

初期胚移植なら胚盤胞にならない胚も妊娠できる?

培養室と体内の環境は同じではない

体外の培養環境と女性の生殖器内の環境は同じものではありません。

そのため、「初期胚で戻した場合にどうなっていたか」を後から正確に知ることはできません。

「子宮なら必ず育った」とは判断できない

胚盤胞にならなかった経験があると、「もっと早く子宮へ戻していたら育ったのでは」と考えることがあります。

しかし、培養室で胚盤胞まで育たなかった胚が、初期胚移植なら必ず胚盤胞へ育って妊娠したとは言えません。

体外で発育が止まる背景には、胚自身の発育能力が関係している場合もあるためです。

初期胚移植では胚盤胞到達を確認できない

初期胚で移植した場合、その胚が子宮内で胚盤胞になったかどうかを直接確認することはできません。

最終的には妊娠判定などによって治療結果を確認します。

初期胚移植と胚盤胞移植はどちらがいい?

項目 初期胚移植 胚盤胞移植
移植時期 受精後2~3日ごろ 5~6日ごろが中心
培養期間 短い 長い
移植前に分かる発育情報 分割期まで 胚盤胞まで確認できる
胚盤胞まで育たず移植できない可能性 胚盤胞培養より低い ある
検討されるケース 胚数が少ない場合など 複数の良好胚がある場合など

胚盤胞移植が常に優れているわけではない

良好な条件の患者では胚盤胞移植にメリットが示されていますが、すべての方に同じ結果が得られるとは限りません。

初期胚移植も「妊娠率が低い方法」と一律には言えない

初期胚移植を選ぶ理由や治療背景は患者によって異なります。

移植1回あたりの成績だけでなく、「採卵した胚全体から最終的に出産へつながる可能性」を考えることも重要です。

年齢・胚数・過去の培養結果から選ぶ

自分にどちらが適しているかは、

  • 女性の年齢
  • 採卵できる卵子数
  • 正常受精した胚数
  • 過去の胚盤胞到達状況
  • これまでの移植結果

などを踏まえて医師・培養士と相談しましょう。

毎回胚盤胞にならない場合に振り返りたいこと

胚盤胞が得られないことが繰り返される場合は、「胚盤胞0個」という最終結果だけを見るのではなく、その前の段階を一つずつ確認しましょう。

確認項目 確認したいこと
採卵数 卵子は何個採れたか
成熟卵数 受精操作が可能な成熟卵は何個だったか
正常受精数 正常受精した胚は何個だったか
Day2~3 何細胞まで分割したか、形態評価はどうだったか
Day4以降 桑実胚まで進んだか
Day5~7 どこまで発育したか、胚盤胞になった胚はあったか
最終判定 発育停止なのか、胚盤胞だが凍結基準外だったのか

どこで数が減っているかを確認する

例えば採卵数は多いのに成熟卵が少ない場合と、正常受精までは多いのにDay3以降で発育停止する場合では、治療を振り返るポイントが異なります。

過去周期でも同じ傾向か確認する

一周期だけの偶発的な結果なのか、複数回同じ段階で発育が止まっているのかも重要な情報です。

次の採卵で見直せることはある?

卵巣刺激法

前回の採卵数や成熟卵数、卵巣刺激への反応などを踏まえて、次回の刺激方法や薬剤量を調整する場合があります。

ただし、刺激法を変更すれば必ず胚盤胞率が上がるというものではありません。

採卵・成熟卵の状況

採卵した卵子のうち成熟卵がどの程度だったかを確認します。

未成熟卵が多かった場合などには、刺激経過や採卵前の最終成熟トリガーなども含めて次回の方針を検討することがあります。

受精方法

通常の体外受精と顕微授精のどちらを使用したか、正常受精率がどうだったかも振り返ります。

ただし、正常受精が十分に得られている場合に「胚盤胞にならなかったから」という理由だけで顕微授精に変更するとは限りません。

培養・凍結方針

次回もすべての胚を胚盤胞まで培養するのか、初期胚で移植・凍結する胚を設けるのかなどを相談する場合があります。

得られた胚数によっては、一部を初期胚として扱い、残りを胚盤胞まで培養するといった方針が取られることもあります。

実際に選択できる方法は医療機関によって異なります。

培養室・培養技術で結果は変わる?

胚培養では環境管理が重要

胚は非常に小さく、培養中の環境を安定して維持することが重要です。

胚培養を行う施設では、インキュベーター内の温度、pH、酸素濃度などを適切に管理します。

低酸素環境での培養が推奨されている

現在のESHREのIVFラボ推奨では、酸化ストレスによる影響を抑えるため、胚培養に低酸素濃度を用いることが推奨されています。

培養液には複数の方法がある

胚培養には、培養の途中で培養液を変更する方法や、一つの培養液で継続する方法などがあります。

どちらか一方がすべての治療で優れていると明確に決まっているわけではなく、各施設が適切に管理・検証した方法で培養します。

一周期の結果だけで培養技術の良し悪しは判断できない

胚盤胞にならなかった場合に培養環境が気になる方もいるでしょう。

しかし、一度の培養結果だけでその医療機関の培養技術が原因だったとは判断できません。

不安がある場合は、施設全体の数字だけではなく、自分の胚がどの段階まで発育したのか説明を受けることが重要です。

「胚盤胞到達率」は何%なら正常?

すべての患者に共通する正常値はない

インターネットで「胚盤胞到達率○%」という数字を見ることがあります。

しかし、胚盤胞まで発育する割合は、女性年齢、患者背景、胚の状態、培養・凍結基準などによって変わります。

全員に共通する「この数字以上なら正常」という値だけで自分の治療を評価することはできません。

何を分母にしているか確認する

胚盤胞到達率を見る場合は、

  • 採卵した卵子数
  • 成熟卵数
  • 正常受精した胚数
  • 培養を継続した胚数

のどれを分母としているのか確認する必要があります。

分母が違えば同じ「胚盤胞率」という言葉でも数字は変わります。

他の人・他院の数字と単純比較しない

年齢や治療条件が異なるため、SNSや他院の数字と自分の胚盤胞到達率をそのまま比較しないようにしましょう。

1個も胚盤胞にならなかったら次回も難しい?

一周期だけでは次周期の結果は決められない

一度胚盤胞が得られなかったとしても、次回も同じ結果になるとは限りません。

採卵ごとに得られる卵子や胚の状態は異なります。

繰り返している場合は発育経過を詳しく確認する

複数回の採卵で毎回胚盤胞が得られない場合は、どの段階で発育停止しているかを比較することが重要です。

年齢・卵巣予備能も踏まえて今後を考える

次の採卵を繰り返すか、初期胚移植を検討するかなどは、女性年齢や得られる卵子数なども含めて判断します。

胚盤胞にならない場合に追加検査は必要?

全員に追加検査が必要なわけではない

胚盤胞が得られなかったからといって、すぐに特殊な検査を多数行う必要があるとは限りません。

まず採卵・成熟・受精・培養の結果を振り返る

まずは通常の治療データから、どの段階に課題があった可能性があるのかを確認します。

必要に応じて男性側などを追加評価する

精液検査で異常がある、受精率にも問題があるなどの場合には、男性不妊を専門とする医師への相談などを検討することがあります。

一方、適応が明確でない検査を「胚盤胞にならない原因を必ず見つけられる検査」と考えないようにしましょう。

胚盤胞にならなかったとき医師・培養士へ確認したいこと

  • 採卵できた卵子は何個でしたか
  • 成熟卵は何個でしたか
  • 正常受精した胚は何個でしたか
  • Day2・Day3では何細胞まで育っていましたか
  • 分割期の形態評価はどうでしたか
  • どの段階で発育が止まりましたか
  • Day5の時点ではどの発育段階でしたか
  • Day6まで培養しましたか
  • Day7まで培養する基準はありますか
  • 胚盤胞にはなったものの凍結基準を満たさなかった胚はありますか
  • 次回も胚盤胞まで培養する予定ですか
  • 初期胚移植を検討する理由はありますか
  • 初期胚で凍結する選択肢はありますか
  • 卵巣刺激法を見直す必要がありますか
  • 受精方法を変更する必要がありますか
  • 男性側の追加評価は必要ですか
  • 今回の結果から分かることと、まだ分からないことは何ですか

胚の発育経過まで説明してくれるクリニックを選ぼう

「胚盤胞0個」だけでなく途中経過を説明してくれるか

最終的な胚盤胞数だけでは、治療を振り返るための情報が十分とは限りません。

採卵数、成熟卵数、正常受精数、Day2~3の分割状況、最終的な発育段階まで説明してもらえるか確認しましょう。

培養士から胚について説明を受けられるか

医療機関によっては、胚培養を担当する培養士から直接、受精・培養結果について説明を受けられる場合があります。

初期胚・胚盤胞それぞれの特徴を説明してくれるか

胚盤胞移植だけを一律に勧めるのではなく、初期胚移植のメリット・限界についても説明し、自分の胚数や過去の結果を踏まえて提案してくれるか確認しましょう。

前回のデータを次回の治療へ生かしているか

次回の卵巣刺激法や受精方法、培養方針について、前回の治療結果を踏まえて説明してもらえることも大切です。

胚盤胞にならない場合のよくある質問

Q.受精したのに胚盤胞にならないことはありますか?

A.あります。

正常受精が確認された胚がすべて胚盤胞まで発育するわけではありません。

Q.5日目に胚盤胞にならなければもうダメですか?

A.5日目に胚盤胞になっていなくても、6日目以降に発育する場合があります。

医療機関によっては7日目まで評価する場合もあります。

Q.胚盤胞にならないのは卵子の質が悪いからですか?

A.卵子側の要因は考えられる要因の一つですが、それだけが原因とは限りません。

精子、胚自身の生物学的な要因、培養など複数の要素が関係します。

Q.精子が原因の場合もありますか?

A.精子も胚発育に関係するため、その可能性はあります。

ただし、胚盤胞にならなかったという結果だけで男性因子が原因とは判断できません。

Q.顕微授精なら胚盤胞になりやすいですか?

A.顕微授精は受精を助けるための治療です。

顕微授精に変更することで、受精後の胚が必ず胚盤胞まで育つというものではありません。

Q.初期胚なら妊娠できた可能性はありますか?

A.その可能性を後から正確に確認することはできません。

一方で、「培養室で胚盤胞にならない胚も、早く子宮へ戻せば必ず育つ」とも言えません。

Q.胚盤胞移植と初期胚移植はどちらが妊娠しやすいですか?

A.年齢、胚数、これまでの治療結果などによって異なります。

条件が良好な方では胚盤胞移植に利点が示される一方、胚盤胞まで培養することで移植できる胚がなくなる可能性もあります。

Q.6日目の胚盤胞でも妊娠できますか?

A.6日目に形成された胚盤胞から妊娠・出産につながることはあります。

ただし、胚盤胞形成の日や形態は、移植する胚を選ぶ際の情報の一つとなります。

Q.7日目の胚盤胞でも使えますか?

A.7日目まで培養し、一定の基準を満たした胚盤胞を凍結する医療機関もあります。

Day7胚を扱うかどうか、凍結基準は施設によって異なるため確認してください。

Q.胚盤胞にならなかったら次回も同じですか?

A.一周期だけで次回の結果を決めることはできません。

ただし、複数周期で同じ傾向がある場合は、どの段階で発育が止まっているかを振り返り、次回の治療方針を相談します。

Q.胚盤胞到達率は何%なら正常ですか?

A.全患者に共通する正常値はありません。

年齢や患者背景、何を分母にしているか、培養・凍結基準などによって数字が変わります。

Q.毎回胚盤胞にならない場合は何を確認しますか?

A.採卵数、成熟卵数、正常受精数、Day2~3の分割状況、どの段階で発育停止したかなどを確認します。

最終的な胚盤胞数だけでなく、採卵から培養までの経過全体を見ることが重要です。

まとめ:「胚盤胞にならない」という結果だけで原因を決めつけない

体外受精では、正常受精した胚がすべて胚盤胞まで育つわけではありません。

採卵、成熟、受精、分割、桑実胚、胚盤胞はそれぞれ異なる段階であり、胚盤胞にならなかった場合には、まずどの段階まで発育したのかを確認することが重要です。

胚盤胞にならない背景には、卵子、精子、胚自身の生物学的な要因、培養環境など複数の要素が考えられます。

「卵子の質が悪いから」「精子が悪いから」と一つの原因に決めつけることはできません。

また、5日目に胚盤胞になっていなくても、6日目や場合によっては7日目に胚盤胞へ発育する胚があります。

胚盤胞培養には、胚の発育を確認して移植胚を選びやすいメリットがある一方、胚盤胞に到達せず移植できる胚がなくなる可能性もあります。

そのため、胚の数が少ない場合や過去に何度も胚盤胞が得られていない場合には、初期胚移植を検討することがあります。

ただし、初期胚移植は「培養室では育たない胚を子宮なら育てられる方法」と保証されたものではありません。

毎回胚盤胞にならない場合は、採卵数だけではなく、成熟卵数、正常受精数、分割状況、発育停止した時期を確認し、卵巣刺激法、受精方法、培養方針などを次周期に向けて相談しましょう。

京都で体外受精を検討している方は、「胚盤胞が何個できたか」だけではなく、採卵から胚培養までの経過を説明し、初期胚移植・胚盤胞移植それぞれのメリットと限界を踏まえて治療方針を提案してくれるクリニックか確認することも大切です。

主な参考情報

  • American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Blastocyst culture and transfer in clinically assisted reproduction: a committee opinion」
  • European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)/Alpha Scientists in Reproductive Medicine「Istanbul consensus update: oocyte and embryo morphological assessment」
  • European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)「Recommendations on Good Practice in the IVF laboratory 2026」
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※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf