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不妊検査で「卵管に水がたまっています」と言われたり、体外受精を始める前に「卵管を切除した方がよい」と説明されたりすると、「卵管を使わない体外受精なのに、なぜ手術が必要なの?」と疑問に感じる方もいるでしょう。
卵管水腫とは、卵管の先端側などが閉塞し、卵管内部に液体がたまって、卵管が袋状に拡張した状態です。
卵管が正常に機能しにくくなるため、卵子を取り込めない、精子と卵子が出会えない、受精卵を子宮へ運びにくいといった問題が起こり、不妊の原因となります。
さらに卵管水腫では、卵管内にたまった液体が子宮へ流れ込むことで、体外受精で子宮へ戻した胚の着床にも影響する可能性があります。
そのため、通常の卵管閉塞であれば体外受精によって卵管を通らず妊娠を目指せる一方、卵管水腫では体外受精・胚移植の前に卵管切除術や卵管閉鎖術などを検討することがあります。
ただし、卵管水腫が見つかった方全員が同じ手術を受けるわけではありません。
片側・両側のどちらにあるか、水腫の大きさや程度、超音波検査でも確認できるか、自然妊娠を希望するか、女性の年齢や卵巣予備能、骨盤内の癒着などを確認しながら治療方法を決めます。
この記事では、卵管水腫と不妊の関係、卵管閉塞との違い、主な原因・検査方法、体外受精へ影響する理由、卵管切除・卵管閉鎖・卵管開口術などの治療方法について解説します。
本記事は2026年10月時点の専門学会等の公開情報をもとに作成しています。卵管水腫の治療方針は、片側・両側、水腫の程度、卵管周囲癒着、年齢、卵巣予備能、自然妊娠希望の有無、体外受精の予定などによって異なります。検査結果だけで自己判断せず、生殖医療を担当する医師へ相談してください。
卵管水腫とは、卵管の先端側などが閉塞し、卵管内に液体がたまって拡張している状態です。
医学的には「卵管留水症」と呼ばれることもあります。
| 確認したいこと | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 卵管水腫とは? | 卵管が閉塞し、内部に液体がたまって拡張した状態 |
| 不妊になる? | 卵子の取り込み・受精・胚輸送などへ影響する |
| 体外受精にも影響する? | 着床率・妊娠率・出産率低下との関連が報告されている |
| 主な原因 | クラミジア等による骨盤内炎症、子宮内膜症、手術後の癒着など |
| 主な検査 | 子宮卵管造影(HSG)、経腟超音波、腹腔鏡など |
| 主な治療 | 卵管切除、卵管近位部閉鎖、卵管開口・卵管采形成術など |
正常な卵管では、内部でつくられた分泌液などが滞留せず排出されます。
しかし、卵管の先端にある卵管采付近などが癒着・閉塞すると、液体を排出しにくくなります。
大まかな流れは次のとおりです。
卵管炎や癒着などが起こる
↓
卵管の先端側などが閉塞する
↓
卵管内の液体を排出しにくくなる
↓
卵管内に液体がたまる
↓
卵管が拡張して卵管水腫になる
卵管水腫といっても、すべて同じ状態ではありません。
卵管の拡張が比較的軽度で卵管壁や粘膜が保たれている場合もあれば、卵管が大きく拡張し、強い癒着や卵管粘膜の障害を伴っている場合もあります。
軽度で卵管の機能回復が期待できる場合には卵管を温存する手術を検討することがありますが、高度に障害されている場合には卵管切除と体外受精を検討することがあります。
卵管水腫と卵管閉塞は関係する状態ですが、同じ意味ではありません。
| 比較 | 卵管閉塞 | 卵管水腫 |
|---|---|---|
| 状態 | 卵管の一部がふさがっている | 閉塞に加えて卵管内へ液体がたまり、卵管が拡張している |
| 自然妊娠への影響 | 片側・両側、閉塞部位によって異なる | 卵管機能が低下し、自然妊娠しにくくなる場合がある |
| 体外受精への影響 | 卵管を使わず受精できるため、閉塞だけならバイパスできる | 水腫液が子宮へ流れることで胚移植にも影響する可能性がある |
| 主な治療 | FT、体外受精など | 卵管切除、卵管閉鎖、卵管開口術など |
自然妊娠では、精子と卵子が卵管で出会い、受精した胚が卵管を通って子宮へ移動します。
両側卵管が完全に閉塞している場合にはこの経路が使えません。
一方、体外受精では卵巣から卵子を採取し、体外で精子と受精させた後に胚を子宮へ移植します。
そのため、単純な卵管閉塞であれば、卵管を通らずに妊娠を目指すことができます。
卵管水腫では事情が異なります。
子宮側と交通している卵管水腫では、水腫内にたまった液体が卵管から子宮腔へ流れ込むことがあります。
そのため、卵管で受精する過程を体外受精によって回避しても、胚を戻す子宮内の環境へ卵管水腫が影響する可能性が残ります。
卵管水腫の原因の一つが、クラミジアなどによる卵管炎・骨盤内炎症です。
感染によって卵管に炎症が起こり、治癒する過程で卵管内や卵管周囲に癒着が残ることがあります。
卵管采付近が閉塞すると、卵管内部に液体がたまり、卵管水腫となる場合があります。
クラミジアは感染していても目立った症状が出ないことがあるため、不妊検査で卵管障害が見つかり、過去の感染が疑われるケースもあります。
子宮内膜症では、骨盤内の慢性的な炎症や癒着によって卵管・卵巣の位置関係が変化したり、卵管采周囲が癒着したりする場合があります。
その結果、卵管の先端側が閉塞し、卵管水腫につながることがあります。
クラミジア・淋菌などの感染が子宮から卵管・骨盤内へ広がる骨盤内炎症性疾患では、炎症後に卵管へ癒着や線維化が生じる場合があります。
卵管水腫は、こうした炎症後の卵管障害として見つかることがあります。
異所性妊娠によって卵管が損傷している場合や、過去の腹部・骨盤内手術後に癒着が生じた場合にも、卵管の通過性や動きに影響することがあります。
ASRMでも、骨盤内炎症、子宮内膜症、異所性妊娠、骨盤内手術歴などを卵管因子不妊に関係する背景として挙げています。
検査をしても卵管水腫ができた明確な原因を特定できない場合があります。
卵管水腫が見つかったからといって、本人の生活習慣などが直接の原因と考えるものではありません。
卵管の先端には、排卵された卵子を卵管内へ取り込む「卵管采」があります。
卵管水腫では卵管先端が閉塞・癒着している場合が多く、卵管采が正常に動けなくなることがあります。
そのため、卵巣から正常に排卵していても、卵子を卵管へ取り込めない場合があります。
卵管の通過性が失われていれば、精子が卵子まで到達できなくなります。
その結果、自然妊娠に必要な受精が起こりにくくなります。
卵管は単なる管ではなく、内部の線毛運動や筋肉の動きによって受精卵を子宮まで運ぶ役割があります。
過去の炎症によって卵管内部の粘膜や線毛が障害されている場合には、卵管が開通していても正常な輸送機能が失われている可能性があります。
卵管機能が低下していると、受精卵が子宮まで正常に移動できず、卵管などに着床する異所性妊娠のリスクにも注意が必要です。
卵管水腫や卵管障害がある方が妊娠した場合には、妊娠初期に超音波検査で妊娠位置を確認します。
片側に卵管水腫があっても、反対側の卵管が正常に機能していれば自然妊娠できる可能性があります。
そのため、「片側卵管水腫=自然妊娠できない」というわけではありません。
ただし、妊娠の可能性は反対側の卵管機能だけではなく、女性年齢、卵巣予備能、排卵、男性側の精液所見などにも左右されます。
自然妊娠については反対側卵管が重要ですが、体外受精では別の問題があります。
ASRMでは、片側だけの卵管水腫でも体外受精の妊娠率が低下した研究が報告されており、片側卵管切除後にIVF妊娠率が改善した報告も紹介されています。
つまり、「片側だから胚移植には影響しない」とは限りません。
片側水腫で反対側の卵管が正常な場合には、自然妊娠を目指す選択肢があります。
一方、女性年齢が高い、卵巣予備能が低い、不妊期間が長い、男性因子もあるといった場合には、自然妊娠を長期間待つより体外受精を検討することがあります。
卵管水腫があっても、自覚症状がない場合があります。
月経も通常どおりあり、不妊検査で子宮卵管造影や超音波検査を受けた際に初めて見つかることもあります。
骨盤内炎症や子宮内膜症などを伴っている場合には、慢性的な下腹部痛・骨盤痛などがみられることがあります。
ただし、痛みの有無だけで卵管水腫の程度を判断することはできません。
卵管内の液体が子宮側へ流れている場合、水様性のおりものが増える場合があります。
しかし、水っぽいおりものには感染症などほかの原因もあるため、「水様性のおりもの=卵管水腫」と自己判断することはできません。
卵管の状態を調べる代表的な検査が、子宮卵管造影(HSG)です。
子宮内へ造影剤を注入し、造影剤が左右の卵管を通って腹腔内へ流れるかを確認します。
卵管水腫がある場合には、卵管の先端から造影剤が流れず、拡張した卵管内に造影剤がたまる所見などがみられることがあります。
ASRMでも、HSGは卵管疎通性を評価する第一選択検査としています。
卵管は正常な状態では経腟超音波で明瞭に見えないこともあります。
しかし、卵管水腫によって液体がたまり卵管が大きく拡張すると、経腟超音波でも液体を含んだ管状・嚢胞状の構造として確認できる場合があります。
日本産婦人科医会では、超音波断層法で卵管腫大を認めるような液体貯留は、妊娠への影響が大きく、手術を考慮するとしています。
ASRMでも、超音波で確認できる卵管水腫では、IVF成績への影響がより大きい可能性を示した研究を紹介しています。
腹腔鏡では、腹部に小さな孔を開けてカメラを挿入し、骨盤内を直接確認します。
卵管の拡張だけでなく、次のような状態も評価できます。
必要に応じて、診断と同時に卵管切除・癒着剥離・卵管開口などの治療を行う場合があります。
「体外受精では卵管を使わないのに、なぜ卵管水腫が問題になるの?」という疑問は、この病気を理解するうえで重要です。
子宮側と交通している卵管水腫では、卵管内の液体が子宮腔へ流れ込む場合があります。
卵管水腫
↓
卵管内に液体がたまる
↓
液体が子宮側へ流れる
↓
胚を移植する子宮腔へ流入する可能性
これによって、胚移植後の着床へ影響すると考えられています。
卵管水腫液が子宮内へ流入することで、胚が着床する前に子宮内で物理的な影響を受ける可能性が考えられています。
ASRMでは、卵管水腫によるIVF成績低下の機序の一つとして、胚を子宮内から押し流すような物理的作用を挙げています。
ただし、「卵管水腫液が必ず移植した胚を洗い流す」という単純な仕組みだけで説明できるわけではありません。
日本産婦人科医会では、卵管水腫液の子宮内への流入によって子宮内膜受容能が低下する可能性を挙げています。
つまり、胚そのものだけではなく、胚を受け入れる子宮内膜側の環境へ影響する可能性があります。
卵管水腫液に含まれる物質などが胚へ直接影響する可能性も研究されています。
ただし、卵管水腫がIVF成績を低下させる詳しい機序がすべて明らかになっているわけではありません。
ASRMでは、卵管水腫のある女性について、体外受精における妊娠率・着床率・出産率が低下することを示した研究やメタ解析を紹介しています。
過去の研究群では、卵管水腫のある女性でこれらの成績が大きく低下したことが報告されています。
研究では「約50%低下」といった結果が紹介されることがあります。
しかし、これは複数の患者をまとめた集団としての比較です。
個人の体外受精の成功率は、次のような要素によって異なります。
そのため、研究上の低下率をそのまま個人の妊娠確率へ当てはめることはできません。
日本産婦人科医会・ASRMでは、超音波検査で確認できるほど拡張した卵管水腫では、体外受精への悪影響が大きい可能性があるとしています。
そのため、胚移植前に治療するかどうかを判断する際には、HSGだけではなく超音波所見も重要です。
通常の卵管閉塞では、体外受精によって卵管を使わずに受精・胚移植できます。
しかし卵管水腫では、胚移植後も卵管内部の液体が子宮へ流れ込む可能性があります。
卵管閉塞
→ 卵管で受精できない
→ IVFで卵管をバイパス
卵管水腫
→ 卵管で受精できない
+
水腫液が子宮へ流れ込む可能性
→ IVFでも着床へ影響する可能性
この違いが、卵管水腫では体外受精前にも治療を検討する理由です。
ASRMでは、卵管水腫がある女性に対して体外受精前に卵管切除を行うことで、IVF妊娠率が改善したランダム化試験などを紹介しています。
卵管水腫のない女性に近いIVF成績まで改善した研究もあります。
卵管水腫の治療では、水腫となった卵管そのものを切除するだけでなく、子宮に近い部分で卵管を閉じる「近位部卵管閉鎖術」を行うこともあります。
目的は、卵管水腫液が子宮腔へ流れ込まないようにすることです。
ASRMでは、卵管近位部閉鎖でもIVF妊娠率改善が報告されているとしています。
卵管水腫が見つかったからといって、全員がすぐに卵管切除を受けるわけではありません。
治療方針を決める際には、次のような点を確認します。
卵管水腫と子宮腔が交通し、水腫液が子宮へ流れ込む可能性がある場合には、体外受精前に卵管切除または近位部卵管閉鎖を検討します。
ASRMでも、交通性卵管水腫がある女性ではIVF前にこれらの治療を検討するとしています。
女性の年齢が若く、卵管水腫が軽度で、卵管粘膜や卵管壁の状態が比較的良好であれば、卵管を切除せずに卵管開口術などで自然妊娠を目指す場合があります。
ただし、手術後に再び閉塞・水腫が起こる可能性もあります。
| 治療 | 主な目的 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 卵管切除術 | 水腫となった卵管を取り除く | IVF前に行われる代表的な治療 |
| 近位部卵管閉鎖術 | 水腫液の子宮への流入を遮断する | 卵管切除が難しい場合などに検討 |
| 卵管開口術 | 閉塞した卵管先端を開く | 軽度病変・自然妊娠希望などで検討 |
| 卵管采形成・癒着剥離 | 卵管の機能回復を目指す | 予後良好と考えられる軽度病変で検討 |
| 水腫液の吸引など | 一時的に液体を減らす | 再貯留する可能性があり適応を選ぶ |
卵管切除術では、卵管水腫となった卵管を切除します。
現在は腹腔鏡を用いて行われる場合が多く、骨盤内の癒着などを確認しながら手術します。
ASRMでは、卵管壁や粘膜の障害が強く、修復しても正常な機能を期待しにくい卵管水腫については、卵管切除後に体外受精を行う方法を推奨しています。
卵管を無理に開通させることよりも、卵管水腫による胚移植への悪影響を取り除いたうえでIVFを行うことを優先する考え方です。
水腫が片側だけでも、体外受精へ影響する可能性があります。
ASRMでは、片側卵管水腫のある女性でもIVF妊娠率が低く、卵管切除後に妊娠率が改善した報告を紹介しています。
「卵管を切除すると、卵子もなくなるのでは?」と心配する方もいるでしょう。
卵管と卵巣は別の器官です。
卵管を切除しても卵巣自体を摘出するわけではないため、卵巣から卵子を採取して体外受精を行うことは可能です。
卵管と卵巣は解剖学的に近い位置にあり、一部の血管も近接しています。
日本産婦人科医会では、卵管切除の際には卵巣への血流を可能な限り維持するため、卵管に近い部位で切除することが望ましいとしています。
近位部卵管閉鎖術は、水腫となった卵管そのものを取り除くのではなく、子宮に近い卵管部分を閉じる方法です。
これによって、卵管水腫と子宮腔の交通を遮断します。
卵管閉鎖術の主な目的は、水腫液そのものをなくすことではなく、胚を移植する子宮へ水腫液が流入しないようにすることです。
ASRMでは、卵管近位部閉鎖についても、卵管水腫によるIVF妊娠率低下を軽減する効果が報告されています。
過去の骨盤内炎症などによって卵管周囲に強い癒着があり、卵管全体を切除することが難しい場合などに、卵管閉鎖を選択することがあります。
卵管の子宮側を閉鎖すると、水腫液が子宮側へ排出されなくなります。
ASRMでは、その結果として卵管水腫がさらに拡張する可能性について理論的な懸念を示しています。
卵管切除と卵管閉鎖のどちらが適しているかは、癒着の程度や手術リスクなどから判断します。
卵管開口術は、癒着などによって閉じた卵管の先端を切開して開口させる手術です。
卵管采形成術では、卵管の先端部分の形を整え、卵子を取り込む機能の回復を目指します。
ASRMでは、比較的若く、ほかに大きな不妊原因がなく、卵管の拡張が軽度で、卵管壁や粘膜が比較的保たれている場合には、腹腔鏡による卵管開口・卵管采形成を選択肢としています。
卵管を温存できれば、術後に自然妊娠を目指せる可能性があります。
卵管開口術で一度卵管が開いても、炎症や癒着の程度によっては再び閉塞する場合があります。
日本産婦人科医会でも、卵管開口術では再閉鎖の可能性へ注意する必要があるとしています。
卵管が大きく拡張している、卵管壁が薄く伸びている、卵管粘膜が著しく損傷している、強い癒着があるといった場合には、開通させても正常な卵管機能を期待しにくい場合があります。
このような場合には、卵管切除を行ったうえで体外受精を選択することがあります。
体外受精前などに、超音波で確認しながら卵管水腫内の液体を穿刺・吸引する方法が検討されることがあります。
外科手術を避けながら、一時的に水腫液を減らせる方法です。
水腫液を吸引しても、卵管そのものの閉塞は残っています。
そのため、時間が経過すると再び液体がたまる場合があります。
ASRMでも、単純な水腫液吸引では再貯留が問題になるとしています。
ASRMでは、水腫液の吸引や硬化療法について、無治療よりIVF成績が良い可能性はあるものの、卵管切除や閉鎖術と比較したエビデンスは十分ではないとしています。
「水を抜けば卵管水腫が治る」というものではないため、適応を選んで使用します。
片側の卵管水腫を切除しても、反対側の卵管が正常に機能していれば、自然妊娠できる可能性があります。
卵巣も残るため、切除した側の卵巣でも排卵は続きます。
左右両方の卵管を切除した場合には、精子と卵子が自然に出会う経路がなくなるため、自然妊娠はできなくなります。
両側卵管を切除しても卵巣が残っていれば、体外受精を行うことができます。
卵巣から採卵
↓
体外で精子と受精
↓
胚を培養
↓
子宮へ胚移植
という流れで妊娠を目指します。
卵管と卵巣は近い位置にあるため、「卵管を切除すると卵巣へ流れる血液が減り、卵子が採れなくなるのでは?」と心配する方もいるでしょう。
実際の手術では、卵巣への血流をできるだけ保つように配慮して卵管を切除します。
ASRMでは、卵管切除前後の体外受精について、刺激に使用した薬剤量・期間、採卵数、胚の質などに明確な差を認めなかった研究を紹介しています。
卵管水腫に対する卵管切除についても、全体としては卵巣刺激・IVFの指標へ明確な悪影響を与えることを示す根拠は乏しいとしています。
一方、骨盤内に強い癒着がある場合などには、手術の難易度や卵巣周辺への影響が異なります。
卵巣予備能が低い方などは特に、手術のメリットとリスク、採卵を先に行うかなどを医師と相談しましょう。
体外受精を予定している場合、「先に卵管水腫を手術するのか」「先に採卵するのか」が問題になることがあります。
治療順序は次のような条件によって異なります。
年齢が高い、AMHが低いなど、採卵を先延ばしすることによる影響が大きいと考えられる場合には、まず採卵・胚凍結を行い、その後に卵管水腫の手術を行う場合があります。
ただし、すべての方でこの順番が適しているわけではありません。
卵管水腫のIVFへの影響として特に問題になるのは、水腫液が子宮へ流れ込み、着床へ影響する可能性です。
そのため、採卵と手術の順番は個別に調整する場合でも、胚移植前には卵管水腫への対応が必要かどうかを改めて確認することが重要です。
| 状態 | 主な治療の考え方 |
|---|---|
| 片側軽度・反対側正常・比較的若い | 卵管温存や自然妊娠を検討する場合がある |
| 軽度で卵管修復が期待できる | 卵管開口術・卵管采形成術などを検討 |
| 高度な卵管水腫 | 卵管切除+体外受精を検討 |
| IVF予定で子宮と交通する水腫 | 卵管切除・近位部閉鎖を検討 |
| 超音波で明らかな水腫 | IVFへの影響を考慮し、胚移植前の治療を検討 |
| 両側卵管切除後 | 体外受精で妊娠を目指す |
比較的若く、軽度の片側卵管水腫で反対側の卵管に問題がない場合には、自然妊娠を目指せる可能性があります。
一方、両側の高度な水腫や、年齢が高い、卵巣予備能が低い、男性因子もあるといった場合には、体外受精を優先する場合があります。
卵管水腫では、「卵管を開通させれば正常に戻る」とは限りません。
過去の炎症などによって卵管粘膜・線毛が強く損傷している場合には、開口しても卵子の取り込みや受精卵の輸送機能が十分に戻らない可能性があります。
ASRMでは、卵管手術と体外受精を比較する際に、女性年齢、卵巣予備能、精液所見、卵管病変の位置・程度、ほかの不妊因子などを考慮するとしています。
卵管だけを治療するのではなく、妊娠までに使える時間も含めて治療方法を選びましょう。
卵管水腫では、卵管の通過性だけでなく、水腫がどの程度拡張しているかも重要です。
特に、経腟超音波で確認できるような水腫ではIVFへの影響が大きい可能性があります。
HSGと超音波所見の両方を踏まえて治療方針を考えてくれる医療機関へ相談しましょう。
軽度の卵管水腫と、卵管壁・粘膜まで強く損傷した高度な水腫では、適した治療が異なります。
「卵管水腫だから全員切除」と一律に判断するのではなく、卵管を温存して自然妊娠を目指せる状態なのか、切除して体外受精へ進んだ方がよいのかを説明してもらいましょう。
IVF前の卵管水腫治療には、卵管切除だけでなく近位部卵管閉鎖という選択肢もあります。
癒着の程度、手術難易度、水腫の状態などから、それぞれのメリット・デメリットを説明してくれることが重要です。
卵管水腫では、婦人科手術と不妊治療の両方が必要になる場合があります。
特に女性年齢が高い、卵巣予備能が低い場合には、手術を先にするか採卵を先にするかが重要です。
卵管だけを見るのではなく、採卵・胚凍結・手術・胚移植まで含めて治療計画を立てられる医療機関を選びましょう。
卵管切除・閉鎖術などは不妊治療クリニックでは行わず、連携する病院で手術する場合があります。
手術後にスムーズに体外受精・胚移植へ戻れるよう、婦人科手術と生殖医療の連携体制も確認しておきましょう。
A.卵管の先端などが閉塞し、卵管内部に液体がたまって、卵管が拡張した状態です。
卵管機能が低下することで自然妊娠へ影響するだけでなく、水腫液が子宮へ流れ込むことで体外受精の着床にも影響する可能性があります。
A.片側だけの水腫で、反対側の卵管が正常に機能していれば自然妊娠できる可能性があります。
一方、両側の高度な卵管水腫では自然妊娠は難しくなり、体外受精を検討することがあります。
A.同じではありません。
卵管閉塞は卵管の一部がふさがった状態で、卵管水腫は閉塞に加えて卵管内部へ液体がたまり、卵管自体が拡張している状態です。
A.影響する可能性があります。
ASRMでは、片側の卵管水腫でもIVFの妊娠率が低下した研究や、片側卵管切除後にIVF妊娠率が改善した研究を紹介しています。
A.卵管内にたまった液体が子宮へ流れ込むことで、子宮内膜の着床環境や胚へ影響する可能性があります。
また、水腫液による物理的な作用も機序の一つとして考えられています。
ただし、IVF成績低下の仕組みが一つだけに確定しているわけではありません。
A.すべての方が必ず卵管切除を受けるわけではありません。
水腫の大きさ・程度、片側か両側か、超音波所見、自然妊娠希望の有無、年齢、卵巣予備能、癒着の程度などから判断します。
卵管を切除せず、近位部を閉鎖する方法を選択する場合もあります。
A.卵管切除と卵巣摘出は異なります。
卵巣が残っていれば排卵は続き、体外受精では卵巣から卵子を採取できます。
A.両側卵管切除後は自然妊娠できなくなりますが、卵巣と子宮が残っていれば体外受精によって妊娠を目指すことができます。
A.卵管と卵巣が近接しているため、手術による卵巣血流への影響には配慮が必要です。
一方、ASRMでは、卵管水腫に対する卵管切除前後で卵巣刺激への反応や採卵数などに明確な差を認めなかった研究を紹介しています。
個々の癒着や手術難易度などでリスクは異なるため、特に卵巣予備能が低い方は主治医へ確認しましょう。
A.液体を穿刺・吸引する方法が行われる場合はありますが、卵管の閉塞そのものが治るわけではないため、再び液体がたまる場合があります。
手術が難しいケースなどで検討することはありますが、卵管切除や閉鎖術などと比較して治療方針を決めます。
A.軽度の卵管水腫で卵管粘膜や卵管壁の状態が比較的良好な場合には、卵管開口術後に自然妊娠を目指せる可能性があります。
ただし、再閉塞・再水腫の可能性があり、高度な卵管障害では体外受精を選択する場合があります。
A.卵管水腫を含む卵管障害がある場合には、受精卵の正常な輸送機能が低下し、異所性妊娠に注意する必要があります。
妊娠が確認された場合には、早めに超音波検査で子宮内に胎嚢があるか確認しましょう。
A.一律には決まっていません。
女性年齢やAMH、水腫の程度、癒着、手術難易度などによっては採卵・胚凍結を先に行い、胚移植前に卵管手術を行う場合もあります。
生殖医療を担当する医師と手術を担当する医師に相談して治療順序を決めます。
卵管水腫は、卵管の先端などが閉塞し、内部に液体がたまって卵管が拡張した状態です。
クラミジアなどによる骨盤内炎症、子宮内膜症、異所性妊娠、腹部・骨盤内手術後の癒着などが原因になる場合があります。
卵管水腫では、卵管采が卵子を取り込めない、精子と卵子が出会えない、受精卵を子宮へ正常に運べないといった問題によって、自然妊娠しにくくなる可能性があります。
さらに重要なのが、卵管水腫は「卵管を使わない体外受精」にも影響する可能性があることです。
子宮側と交通している卵管水腫では、卵管内部の水腫液が子宮へ流れ込み、胚や子宮内膜の着床環境へ影響する可能性があります。
そのため、卵管水腫がある女性では、体外受精の妊娠率・着床率・出産率が低下することが報告されています。
特に、超音波検査でも確認できるような卵管水腫では妊娠への影響が大きい可能性があります。
体外受精を予定している場合には、卵管切除や近位部卵管閉鎖によって水腫液の影響を取り除いてから胚移植を行うことがあります。
一方、比較的若く軽度の卵管水腫で、卵管壁・卵管粘膜の状態が良好な場合には、卵管開口術などによって卵管を温存し、自然妊娠を目指すこともあります。
卵管切除を行っても卵巣そのものを摘出するわけではないため、卵巣が残っていれば採卵は可能です。
また、両側卵管を切除すると自然妊娠はできなくなりますが、体外受精によって妊娠を目指すことができます。
卵管水腫の治療では、「卵管を残すか取るか」だけではなく、女性の年齢、卵巣予備能、水腫の程度、自然妊娠の可能性、体外受精の予定などを踏まえ、妊娠までの治療全体を考えることが大切です。
京都で不妊治療を検討している方は、子宮卵管造影だけでなく超音波でも水腫の状態を評価し、卵管温存手術・卵管切除・卵管閉鎖の選択肢と、採卵・胚移植までの治療順序を一緒に提案してくれる医療機関へ相談しましょう。
主な参考情報
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf