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「精子の数や運動率には大きな問題がないのに妊娠しない」「人工授精や体外受精を繰り返しても妊娠に至らない」といった場合に、追加検査として「精子DNA断片化」や「DFI」という言葉を聞くことがあります。
通常の精液検査では、精液量、精子濃度、運動率、精子の形態などを調べます。
一方、精子DNA断片化(SDF:Sperm DNA Fragmentation)は、精子が持っているDNAに切断・損傷が生じている状態です。
見た目や動きに大きな問題がない精子でもDNAが損傷している場合があるため、通常の精液検査だけでは分からない精子の状態を調べる追加検査として、DFI(DNA Fragmentation Index)などが利用されています。
精子DNA断片化が高い男性では、自然妊娠率の低下、人工授精の妊娠率低下、流産・反復流産などとの関連が報告されています。
ただし、DFIが高いからといって「妊娠できない」「体外受精が成功しない」と判断できるわけではありません。
精子DNA断片化の検査にはTUNEL法、SCSA、SCD法、COMET法など複数の方法があり、検査方法や施設によって結果の示し方や高値と判断する基準が異なります。
また、すべての男性不妊患者が最初から受ける検査ではなく、原因不明不妊、流産を繰り返しているカップル、ARTを行っても妊娠に至らない場合などに検討されます。
この記事では、精子DNA断片化とはどのような状態なのか、通常の精液検査との違い、DFI検査の方法、男性不妊・流産・人工授精・体外受精への影響、DFIが高かった場合の対応について解説します。
本記事は2026年9月時点の専門学会等の公開情報をもとに作成しています。精子DNA断片化検査は検査方法が複数あり、基準値も完全には統一されていません。DFIの数値だけで妊娠の可能性や治療方法を自己判断せず、通常の精液検査、男性側の診察、女性側の年齢・卵巣予備能などと合わせて医師へ相談してください。
精子DNA断片化とは、精子が持っているDNAに1本鎖または2本鎖の切断などが生じた状態です。
日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」でも、精子DNA断片化を、精子ゲノムの1本鎖または2本鎖が切断された状態として説明しています。
| 確認したいこと | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 精子DNA断片化とは? | 精子のDNAに1本鎖・2本鎖の切断などが生じた状態 |
| DFIとは? | 精子DNAの損傷程度を評価するために用いられる指標 |
| 精液検査との違い | 通常の精液検査では直接分からないDNAの状態を評価する |
| 不妊との関係 | 高SDFと妊孕性低下との関連が報告されている |
| 流産との関係 | 反復流産・不育症との関連が報告されている |
| 主な検査方法 | TUNEL法、SCSA、SCD法、COMET法など |
| 全員検査する? | 男性不妊の初期検査として全員に行う検査ではない |
精子には、父親側の遺伝情報を持つDNAが含まれています。
受精すると精子由来の遺伝情報と卵子由来の遺伝情報が組み合わされ、胚の発生が始まります。
そのため、精子の数や動きだけでなく、精子内部のDNAがどのような状態にあるかも生殖機能を考えるうえで一つの要素となります。
精子が成熟する過程では、遺伝情報を守るためDNAが非常にコンパクトに収納されます。
一方、成熟した精子ではDNA損傷を修復する能力が限られているため、精子形成や成熟の途中で生じたDNA損傷が残ることがあります。
受精後に卵子側の機構によって一部のDNA損傷が修復される可能性はありますが、損傷の程度などによっては胚発生や妊娠経過へ影響する可能性が指摘されています。
通常の精液検査では、顕微鏡などを使って精子の数や運動性、形態を確認します。
しかし、精子のDNAが切断されているかどうかを通常の精液検査で直接確認しているわけではありません。
そのため、精子濃度・運動率・形態などに大きな異常がなくても、DNA断片化が高い男性がいることがあります。
精液検査とDFI検査は、どちらも男性不妊の評価に用いられますが、調べているものが異なります。
| 比較 | 通常の精液検査 | 精子DNA断片化検査 |
|---|---|---|
| 精液量 | 評価する | 主な評価目的ではない |
| 精子濃度・総精子数 | 評価する | 主な評価目的ではない |
| 精子運動率 | 評価する | 主な評価目的ではない |
| 精子形態 | 評価する | 主な評価目的ではない |
| DNA損傷 | 基本的に直接評価しない | 評価する |
| 男性不妊の初期検査 | 基本となる検査 | 必要なケースで追加する |
| 基準の標準化 | WHOマニュアルなどを参考に評価 | 検査法・施設によってカットオフが異なる |
日本泌尿器科学会のガイドラインでは、原因不明不妊の男性と妊孕性が確認された男性を比較した研究が紹介されています。
その中には、精液量、精子濃度、前進運動率、正常形態率といった通常の精液検査項目では大きな差がなかったにもかかわらず、原因不明不妊男性でDFIが高かったとする報告があります。
このことから、通常の精液検査では把握しきれない男性側の要因の一つとして、精子DNAの状態が注目されています。
DFI検査で精子DNAを評価できるからといって、通常の精液検査が不要になるわけではありません。
男性不妊の基本的な評価では、まず次のような情報を確認します。
AUA/ASRMガイドラインでも、精子DNA断片化検査を不妊カップルの初期評価としてルーチンに行うことは推奨していません。
DFIは「DNA Fragmentation Index」の略で、精子DNAの断片化・損傷の程度を評価するために使用される指標です。
一般的には、検査した精子の中でDNA損傷を示す精子がどの程度存在するかなどを数値として示します。
ただし、具体的な測定方法や数値の意味は、使用する検査法によって異なります。
一般的にはDFIが高いほど、DNA損傷を持つ精子が多い状態を示します。
一方、「DFIが○%だから妊娠率は○%」というように、妊娠の可能性を直接計算できる数値ではありません。
妊娠成立には、男性側だけでなく女性側の年齢、卵巣予備能、卵管の状態、胚の状態など、多くの要因が関係します。
DFIについて検索すると、「20%以上」「25%以上」「30%以上」などさまざまな数字を目にすることがあります。
しかし、日本泌尿器科学会では、精子DNA断片化検査には確立された統一プロトコールがなく、検査の標準化も十分ではないため、施設によってDFI高値の定義が異なるとしています。
そのため、検査結果を確認するときには、単にDFIの数字を見るのではなく、どの方法で測定した数値なのかを確認することが重要です。
EAU(欧州泌尿器科学会)では、SCSAによって測定されたDFIについて、25%程度を超える場合に自然妊娠や人工授精による妊娠率低下との関連を示した研究を紹介しています。
しかし、この数字はSCSAを用いた研究で示された一つの目安です。
TUNEL法やSCD法、COMET法など、別の検査法へ「25%」という数字をそのまま当てはめることはできません。
精子DNA断片化には、一つではなく複数の要因が関係すると考えられています。
精子DNA損傷との関係で重要と考えられているのが、酸化ストレスです。
体内では活性酸素種(ROS)がつくられていますが、過剰になると身体が持つ抗酸化能力とのバランスが崩れ、細胞へダメージを与える場合があります。
精子は酸化ストレスの影響を受けやすく、過剰な活性酸素によって精子膜やDNAが損傷する可能性があります。
EAUでも、酸化ストレスは精子の質・機能・DNAの完全性へ影響する男性不妊の重要な機序の一つとしています。
精索静脈瘤は、陰嚢内の静脈が拡張し、血液がうっ滞する状態です。
精巣周囲の温度上昇や酸化ストレスなどを介して、精子形成や精子DNAへ影響する可能性があります。
日本泌尿器科学会でも、精索静脈瘤と精子DNA断片化の上昇との関連を示した研究が紹介されています。
喫煙は男性不妊と関連する生活習慣の一つです。
たばこの煙には多くの化学物質が含まれており、酸化ストレスなどを通じて精子へ影響する可能性があります。
日本泌尿器科学会では、喫煙は男性不妊のリスク因子であり、改善が推奨されています。
精子数や運動率、形態だけでなく、精子DNA損傷との関連も報告されています。
男性の年齢と精子DNA断片化との関連も報告されています。
EAUでは、多数の精液検体を対象とした研究で、男性年齢が高い群ほどSDFが高かったことを紹介しています。
ただし、「○歳を超えたらDFIが異常になる」という明確な年齢の境界があるわけではありません。
男性生殖器の感染症や慢性炎症によって、酸化ストレスなどが増加し、精子DNAへ影響する可能性があります。
EAUでも、慢性的な感染をSDF上昇に関係する要因の一つとして挙げています。
ただし、DFIが高いという理由だけで抗菌薬を使用するのではなく、感染が疑われる場合には適切な検査を行ったうえで治療します。
肥満などの代謝異常と男性不妊との関連も報告されています。
日本泌尿器科学会が紹介する研究では、肥満男性で精子DFIや形態異常精子の割合が増加した一方、精液量・精子濃度・運動率などの一般的な精液検査項目では明確な差がみられなかったとの報告もあります。
このように、生活習慣に関係する要因が通常の精液検査には現れにくい形で精子へ影響している可能性があります。
SDFが高かったとしても、必ず原因を一つに特定できるわけではありません。
精索静脈瘤、喫煙、加齢、感染、体重など複数の要因が同時に関係している場合もあります。
そのため、「生活習慣が悪かったからDNAが壊れた」などと単純に本人を責めるものではありません。
精子DNA断片化が高い男性では、自然妊娠の可能性が低下する傾向が報告されています。
EAUでも、SDFの上昇は自然妊娠の可能性低下と関連するとしています。
一方、DFIは自然妊娠できるかどうかを二者択一で判断する検査ではありません。
DFIが高い男性のパートナーでも自然妊娠することはあります。
逆にDFIが低くても、排卵、卵管、女性年齢、ほかの男性因子などに問題があれば妊娠しにくくなる場合があります。
「DFI高値=自然妊娠できない」という意味ではありません。
妊娠は男性側・女性側の両方の要因によって成立します。
そのため、SDFを評価するときにも、次のような女性側の要因を一緒に考えます。
精子DNA断片化について、比較的注目されているのが流産との関係です。
日本泌尿器科学会では複数のメタ解析をもとに、流産を繰り返しているカップルの男性では、妊孕性が確認されている男性よりDFIが高い傾向があるとしています。
ASRMの2026年の反復流産に関する委員会見解でも、原因不明の反復流産や、不妊を伴う反復流産では精子DNA断片化検査を検討できるとしています。
ASRM 2026では、高SDF群でその後の流産率が高かったメタ解析も紹介されています。
また、日本泌尿器科学会では、IVF・ICSI後の流産率と高DFIとの関連を示した複数のメタ解析を紹介しています。
一方、流産にはさまざまな原因があります。
そのため、「DFIが高かったから流産した」と個人の流産原因を断定することはできません。
流産を繰り返している場合には、男性側・女性側の両方から原因を評価します。
日本泌尿器科学会では、人工授精2,839周期を含むメタ解析などをもとに、高DFIと人工授精による妊娠率低下との関連を紹介しています。
EAUでも、SCSAによるDFI高値と自然妊娠・人工授精による妊娠率低下との関連を示したデータを紹介しています。
人工授精の妊娠率にはDFI以外にも多くの要因が関係します。
そのため、DFIが高いという理由だけで「人工授精では妊娠できない」と判断するものではありません。
通常の精液所見に大きな問題がないにもかかわらず人工授精を繰り返しても妊娠しない場合などに、追加の男性不妊評価としてDFI検査を検討することがあります。
一方、初回の人工授精前からすべての男性へDFI検査を行うことが標準というわけではありません。
日本泌尿器科学会では、複数のメタ解析から、高DFIと体外受精(IVF)の妊娠率低下との関連を紹介しています。
精子DNAの状態が胚発生や妊娠経過へ影響する可能性があるためです。
顕微授精(ICSI)については、DFI高値と妊娠率低下との関連を示した研究がある一方、関連しないとするメタ解析もあります。
日本泌尿器科学会のガイドラインでも、ICSIの妊娠率とDFIとの関係については議論の余地があるとしています。
そのため、「DFIが高ければICSIも成功しない」とは言えません。
IVF・ICSI後の出生率とDFIについても、関連を示した研究と明確な関連を認めなかった研究があります。
日本泌尿器科学会では、人工授精・IVF・ICSIによる出生率とDFIとの関連について、現時点では議論が残るとしています。
一方、IVF・ICSI後の流産については、高DFIとの関連を示した複数のメタ解析があります。
ARTを行って妊娠は成立するものの流産を繰り返している場合には、男性側の追加評価の一つとして精子DNA断片化を検討することがあります。
精子DNA断片化検査では、採取した精液中の精子を使ってDNAの状態を評価します。
検査方法には複数の種類があります。
| 検査方法 | 主な特徴 |
|---|---|
| TUNEL法 | DNA切断部位を標識してDNA損傷を評価する |
| SCSA | 精子クロマチンの状態を測定し、DFIなどを算出する |
| SCD法 | 精子クロマチンの分散パターンを用いてDNA断片化を評価する |
| COMET法 | 電気泳動によるDNAの移動パターンなどから損傷程度を評価する |
TUNEL法は、DNAが切断されている部分を標識して検出する方法です。
精子DNAにどの程度の切断が存在するかを評価する検査法の一つです。
SCSA(Sperm Chromatin Structure Assay)は、精子のクロマチン構造やDNAの変性しやすさなどを利用して評価する方法です。
SCSAでは、DNA損傷を示す精子の割合をDFIとして表します。
EAUでは、SCSAは精子DNA断片化について多く研究されている検査方法の一つとしています。
SCD(Sperm Chromatin Dispersion)法は、精子DNAの状態によって生じるクロマチンの分散パターンなどを利用して精子DNA断片化を評価します。
検査施設によってはSCD法を用いた精子DNA検査が行われています。
COMET法は、精子DNAを電気泳動した際のDNAの広がりなどから損傷程度を評価する方法です。
名称は、損傷したDNAが彗星(comet)の尾のように見えることに由来します。
同じ「精子DNA断片化検査」「DFI検査」と呼ばれていても、検査方法によって測定している特性やカットオフは異なります。
そのため、検査結果を見る際には、次の点を確認しましょう。
AUA/ASRMガイドラインでは、精子DNA断片化検査を不妊カップルの初期評価としてルーチンに行うことは推奨していません。
最初からDFIだけを測定するのではなく、まず精液検査や男性不妊の診察を受けることが基本です。
日本泌尿器科学会では、精子DFI測定を検討するケースとして「原因不明不妊」を挙げています。
例えば、男性側の通常の精液検査に大きな問題がなく、女性側にも明確な不妊原因が見つからないにもかかわらず妊娠しない場合などです。
流産を繰り返しているカップルでも、男性側の追加評価として精子DNA断片化検査を検討する場合があります。
日本泌尿器科学会に加え、ASRMの2026年の反復流産に関する委員会見解でも、原因不明の反復流産や不妊を伴う反復流産でSDF検査を検討できるとしています。
日本泌尿器科学会では、ARTを行っても妊娠に至らない場合もDFI測定を検討するケースとしています。
通常の精液所見だけでは説明できない男性因子がないかを追加評価する目的です。
一方、ASRMの2026年の反復着床不全に関する委員会見解では、反復着床不全(RIF)患者の男性パートナーへSDF検査をルーチンに行う十分な根拠はないとしています。
つまり、「胚移植がうまくいかなかった=すぐDFI検査」という一律の考え方ではありません。
治療歴や男性側・女性側のほかの要因を確認したうえで個別に判断します。
DFIが高かった場合も、すぐに「妊娠できない」と判断するのではなく、改善できる男性側の要因がないか確認します。
精索静脈瘤は、精子DNA断片化と関連する代表的な男性不妊疾患の一つです。
男性不妊を扱う泌尿器科で身体診察を受け、必要に応じて陰嚢超音波検査などを行います。
精索静脈瘤が見つかったとしても、DFIが高いことだけを理由に手術するわけではありません。
精索静脈瘤の程度、通常の精液所見、女性側の状態、不妊期間などを考えて治療適応を判断します。
生殖器の感染や炎症が疑われる場合には、必要な検査を行います。
感染が確認された場合には原因に応じた治療を行います。
DFIを下げる目的だけで、感染の根拠がないまま抗菌薬を使用するものではありません。
喫煙は男性不妊のリスク因子であり、精子DNA損傷との関連も報告されています。
そのため、妊娠を希望している方には禁煙が勧められます。
ただし、「禁煙すれば必ずDFIが○%下がる」「妊娠できるようになる」と保証できるわけではありません。
肥満やメタボリックシンドロームと男性不妊、精子DNA断片化との関連が報告されています。
体重、食生活、運動、睡眠など、改善できる生活習慣があれば見直します。
ただし、精子DNA断片化の原因を生活習慣だけに決めつけず、男性不妊疾患の有無も確認することが重要です。
精液検査では一定の禁欲期間を設けて採精することがあります。
一方、EAUでは、短い間隔で再度射精した精液でSDFが低下した研究も紹介しています。
ARTで採精する際などに、医療機関の判断で禁欲期間や採精方法を調整する場合があります。
「毎日射精すればDFIが治る」という意味ではないため、自己判断ではなく医師・培養室の指示に従いましょう。
精子DNA断片化の一因として酸化ストレスが考えられているため、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、L-カルニチンなど、抗酸化作用を期待した薬剤・サプリメントが男性不妊診療で使用されることがあります。
日本泌尿器科学会でも、SDF低減や抗酸化作用を期待して抗酸化剤が使用されている実態を紹介しています。
一方、抗酸化剤を使用することで、すべての男性不妊患者の妊娠率や出生率が改善すると確立しているわけではありません。
日本泌尿器科学会では、特発性男性不妊に対する多くの薬物療法はエビデンスが十分ではないとしています。
EAUも、抗酸化療法や生活習慣改善によって精子の質やDNA断片化が改善する可能性に触れていますが、十分なRCTによる裏付けがないとしています。
DFIが高かった場合には、まず精索静脈瘤、感染、喫煙、肥満など改善可能な要因がないかを確認することが重要です。
サプリメントにも過剰摂取やほかの薬との相互作用などの問題があるため、自己判断で大量に摂取するのではなく、使用する場合は医師へ相談しましょう。
顕微授精(ICSI)は、選んだ1個の精子を顕微鏡下で卵子へ直接注入する受精方法です。
精子数が少ない、精子の運動性が低いなど、通常の方法では受精が難しい場合に利用されます。
一方、ICSIそのものに、損傷した精子DNAを修復する働きがあるわけではありません。
高DFIとICSIの妊娠率低下との関連を示した研究がある一方、関連を認めなかった研究もあります。
日本泌尿器科学会でも、DFIとICSIによる妊娠率との関係には議論の余地があるとしています。
そのため、「DFIが高いからICSIにすれば問題が解決する」「DFIが高いからICSIをしても妊娠できない」のどちらも適切ではありません。
ICSIへ進むかどうかは、DFIだけではなく、通常の精液所見、これまでの受精歴、女性年齢、採卵数、卵巣予備能などを含めて判断します。
射出された精子は、精巣でつくられた後に精巣上体などを通過し、射精されます。
この過程で酸化ストレスなどの影響を受ける可能性があることから、高SDF男性では精巣から直接採取した精子の方が、射出精子よりDNA断片化が低かったという報告があります。
EAUでも、射出精子で高SDFが認められる男性では、精巣精子のSDFが低いとの研究を紹介しています。
一方、精液中に精子がいる男性から精巣内精子を採取するには、TESEなどの外科的処置が必要です。
EAUでは、高SDFかつART不成功などの選択された症例で精巣精子を用いたICSIを検討できるとしていますが、エビデンスは低く、実験的な位置づけを含む選択肢として扱っています。
「DFIが高い=TESEを受けた方がよい」という治療ではありません。
EAUでは、高SDFを理由として精巣精子を使用する前に、次のような要因を確認することを勧めています。
TESEは精巣から組織・精子を採取する外科的処置です。
痛み、出血、血腫、精巣への影響などのリスクがあります。
通常の射出精液中に精子が存在している男性へ行う場合には、期待できるメリットとエビデンスの限界、手術のリスクについて説明を受けたうえで慎重に判断する必要があります。
DFIは男性の妊孕性について追加情報を得る検査ですが、妊娠の可否を判定する検査ではありません。
高DFIでも妊娠することはありますし、低DFIでもほかの原因によって妊娠しない場合があります。
DFIという数字を見る際には、TUNEL法、SCSA、SCD法、COMET法など、どの検査方法で測定したのかを確認しましょう。
検査方法が違えば基準も異なるため、異なる施設・異なる検査法の結果を単純に比較することはできません。
日本泌尿器科学会では、DFI測定には確立したプロトコールがなく、施設ごとに高値の定義が異なることを注意点として挙げています。
インターネット上にある「DFI○%以上なら異常」といった数字だけで自己判断せず、検査を実施した施設の基準で説明を受けましょう。
DFIが高かった場合には、精液検査だけでなく、精索静脈瘤や感染など治療できる男性不妊原因がないかを確認します。
男性のDFIだけで不妊治療の内容を決めることも適切ではありません。
例えば、女性年齢が高い、卵巣予備能が低下している、両側卵管閉塞があるといった場合には、男性側のDFI改善を長期間待つよりARTを優先することがあります。
DFIはカップル全体の治療方針を考えるための「追加情報」の一つとして利用することが大切です。
DFI検査は男性不妊の初期検査として全員に必要な検査ではありません。
精液検査や問診・診察を行い、そのうえでなぜDFI検査が必要なのかを説明してくれる医療機関を選びましょう。
DFIは検査方法によって解釈が異なります。
単に「DFIが高い」と伝えるだけでなく、どの方法で測定したのか、その施設ではどの数値を高値としているのか、検査の限界まで説明してくれるか確認しましょう。
「DFIが高いから自然妊娠はできない」「DFIを下げれば必ず妊娠できる」といった断定は適切ではありません。
現在のエビデンスの範囲を説明しながら、ほかの不妊因子と合わせて治療方針を提案してくれることが重要です。
精索静脈瘤、感染・炎症、喫煙・肥満など、DFI上昇と関係する可能性がある要因を確認できる男性不妊専門の泌尿器科へ相談することを検討しましょう。
男性側のDFI改善だけに長期間をかけることが、カップルにとって最善とは限りません。
女性年齢、卵巣予備能、不妊期間、これまでのART成績などまで考えて、AIH・IVF・ICSIを含めた治療方針を検討できることが重要です。
A.精子が持つDNAに1本鎖・2本鎖の切断などが生じた状態です。
通常の精液検査では直接評価できない精子の状態の一つとして、男性不妊診療で追加評価されることがあります。
A.DNA Fragmentation Indexの略で、精子DNA断片化の程度を評価するために使用される指標です。
ただし、測定方法・数値の解釈は検査法によって異なります。
A.すべての検査に共通する一律の基準はありません。
日本泌尿器科学会では、DFI検査は標準化が十分ではなく、施設ごとに高値の定義が異なるとしています。
SCSAを用いた研究では25%程度を目安とした報告がありますが、別の検査法へその数字をそのまま適用することはできません。
A.あります。
通常の精液量、精子濃度、運動率、形態などに大きな異常がなくても、DFIが高かった原因不明不妊男性の研究があります。
A.DFI高値と自然妊娠率低下との関連は報告されていますが、自然妊娠できないという意味ではありません。
DFIが高くても自然妊娠する方はいます。
A.高SDFと流産・反復流産との関連を示した研究があります。
ただし、流産には胚の染色体異常や女性年齢など多くの要因が関係するため、個人の流産原因をDFIだけで特定することはできません。
A.精索静脈瘤とSDF上昇との関連が報告されています。
ただし、DFI高値だけを理由に手術するのではなく、精索静脈瘤の程度、精液所見、不妊期間などを合わせて治療適応を判断します。
A.喫煙は精子DNA損傷との関連が報告されているため、妊娠を希望する男性には禁煙が勧められます。
ただし、禁煙すれば必ずDFIが一定値まで下がり、妊娠率が上がると保証されているわけではありません。
A.酸化ストレスとSDFの関連から抗酸化剤が使用される場合があります。
一方、抗酸化サプリによって妊娠率や出生率が確実に改善するとする十分な根拠は確立していません。
自己判断で大量に摂取せず、医師へ相談してください。
A.一律には言えません。
ICSIの妊娠率と高DFIとの関連については研究結果が一致していません。
また、ICSI自体が精子DNAの損傷を修復する治療ではありません。
A.すべての方に勧められる治療ではありません。
精巣精子では射出精子よりSDFが低いとの報告がありますが、高DFI男性に精巣精子を用いたICSIを行う方法については、十分な大規模ランダム化試験がなく、エビデンスは限定的です。
ART不成功などの選択されたケースで、メリット・リスクを検討したうえで選択する場合があります。
A.検査結果は採精条件や検査方法などの影響を受ける可能性があります。
1回の数値だけを絶対的なものとして扱わず、必要に応じて精液検査や治療経過などと合わせて医師が判断します。
精子DNA断片化(SDF)とは、精子が持つDNAに1本鎖・2本鎖の切断などが生じた状態です。
通常の精液検査では精子濃度、運動率、形態などを評価しますが、精子内部のDNA損傷を直接確認する検査ではありません。
そのため、通常の精液検査に大きな異常がなくてもDFIが高い場合があります。
精子DNA断片化を評価する方法には、TUNEL法、SCSA、SCD法、COMET法などがあります。
ただし、検査方法は完全に標準化されておらず、「DFIが何%なら異常」という共通のカットオフも確立していません。
精子DNA断片化が高い場合、自然妊娠率や人工授精の妊娠率低下、流産・反復流産との関連が報告されています。
一方、ICSIの妊娠率やART後の出生率との関係については研究結果が一致していない部分もあります。
また、DFI検査は男性不妊の初期検査としてすべての方へ行うものではありません。
原因不明不妊、流産を繰り返しているカップル、ARTを行っても妊娠に至らない場合などに追加検査として検討します。
DFIが高かった場合には、まず精索静脈瘤、感染・炎症、喫煙、肥満など、改善できる可能性のある男性側の要因がないか確認します。
抗酸化剤を使用する場合もありますが、サプリメントだけで必ずDFIや妊娠率が改善するわけではありません。
また、高DFI男性に精巣内精子を用いたICSIを行う方法も研究されていますが、すべての方へ勧められる確立した治療ではありません。
DFIは、不妊の原因や妊娠の可否を一つの数字で決める検査ではなく、通常の精液検査では分からない「精子の質」に関する追加情報として活用することが大切です。
京都で不妊治療を検討している方は、DFIの数字だけを見るのではなく、通常の精液検査や精索静脈瘤などの男性不妊原因を評価し、女性側の年齢・卵巣予備能やこれまでの治療歴まで含めて治療方針を提案してくれる医療機関へ相談しましょう。
主な参考情報
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf