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非閉塞性無精子症とは?原因・検査・治療法

公開日: |最終更新日時:

目次

精液検査で「精子が見つからない」「非閉塞性無精子症の可能性がある」と言われると、「精子をまったくつくれていないの?」「子どもを持つことはできない?」と不安になる方もいるでしょう。

無精子症とは、射出された精液の中に精子を確認できない状態です。大きく分けると、精子はつくられているものの通り道がふさがっている「閉塞性無精子症」と、精子をつくる機能そのものが著しく低下している「非閉塞性無精子症(NOA:Non-Obstructive Azoospermia)」があります。

ただし、射出精液から精子が見つからないからといって、精巣内のすべての場所で精子がまったくつくられていないとは限りません。

非閉塞性無精子症でも、精巣の一部に精子形成が残っている場合があります。このような精子を顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)によって探し、採取できれば顕微授精(ICSI)によって妊娠・出産を目指せる場合があります。

一方、ホルモン異常のように治療によって精子形成の回復を期待できる原因もあれば、Y染色体の特定部位の欠失など、精子採取手術を行っても精子を得られる可能性が極めて低い病態もあります。

そのため、無精子症と分かったらすぐにmicro-TESEを行うのではなく、まず閉塞性か非閉塞性かを確認し、ホルモンや遺伝学的要因などを調べることが重要です。

この記事では、非閉塞性無精子症と閉塞性無精子症の違い、主な原因、検査方法、micro-TESE、顕微授精までの治療について解説します。

本記事は2026年9月時点の専門学会等の公開情報をもとに作成しています。非閉塞性無精子症の原因や精子採取の可能性は一人ひとり異なります。FSH値や精巣の大きさだけで治療可能性を自己判断せず、男性不妊を専門的に診療する泌尿器科などへ相談してください。

非閉塞性無精子症(NOA)とは?

非閉塞性無精子症とは、主に精巣での精子形成が著しく低下していることなどによって、射出精液中に精子を確認できない状態です。

確認したいこと 基本的な考え方
無精子症とは? 遠心分離した精液を詳しく調べても精子を確認できない状態
非閉塞性無精子症とは? 主に精子形成の著しい低下などによって精液中に精子が出てこない状態
閉塞性との違い 閉塞性では精子をつくれていても、精巣上体・精管など精子の通り道がふさがっている
精巣内にも精子はいない? 一部で精子形成が残っている場合がある
主な検査 精液検査、診察、FSH・LH・テストステロンなどのホルモン検査、遺伝学的検査など
主な治療 原因に応じた治療、micro-TESEによる精子採取など
精子が見つかった場合 採取した精子を用いて顕微授精(ICSI)を行う

無精子症は「精液が出ない」という意味ではない

「無精子症」という名前から、射精しても精液そのものが出ない状態だと思う方もいるかもしれません。

しかし、無精子症は精液量がゼロという意味ではありません。

精液は主に精嚢や前立腺などから分泌される液体と精子から構成されています。そのため、通常どおり射精でき、見た目では精液に問題がないように見えても、検査すると精子が確認できない場合があります。

精液の外観だけから精子の有無を判断することはできません。

遠心分離後にも精子が確認できない状態を無精子症という

精液中に精子が非常に少ない場合、通常の観察だけでは見つからなくても、精液を遠心分離して沈殿した部分を詳しく調べると精子が確認できることがあります。

このように、精子が極端に少ないものの完全な無精子症ではない状態は「cryptozoospermia(クリプトゾースペルミア)」などと呼ばれます。

非閉塞性無精子症の診断では、本当に射出精液中に精子が存在しないのかを確認することが重要です。

1回の精液検査だけで確定しない

精液所見には変動があります。

EAU(欧州泌尿器科学会)では、遠心分離後の精液にも精子を認めないことを、少なくとも2回の連続した精液検査で確認して非閉塞性無精子症を診断するよう推奨しています。

初回の検査で精子が見つからなかった場合も、必要に応じて再検査を行います。

非閉塞性無精子症と閉塞性無精子症の違い

無精子症では、「精子がつくられていないのか」「つくられているが外へ出てこられないのか」を区別することが重要です。

比較 非閉塞性無精子症(NOA) 閉塞性無精子症(OA)
主な問題 精子形成の著しい低下など 精子の通り道の閉塞
精巣内の精子 少ない、一部だけ形成されている、または確認できない場合がある 精子形成が保たれていることが多い
FSH 高値となることが多いが、原因によって異なる 正常範囲であることが多い
精巣サイズ 小さい場合がある 比較的保たれている場合が多い
代表的な治療 原因に応じた治療、micro-TESE+ICSIなど 精路再建、精子採取+ICSIなど

閉塞性無精子症は「精子をつくれているが出てこない」状態

精巣でつくられた精子は、精巣上体、精管、射精管などを通って尿道へ運ばれます。

閉塞性無精子症では、精巣で精子をつくる機能は保たれているものの、これらの通り道がどこかでふさがっているため、射出精液中に精子が出てきません。

閉塞部位や原因によっては、精路再建手術によって精子が精液中へ出るようになり、自然妊娠を目指せる場合もあります。

非閉塞性無精子症は「精子をつくる機能」に問題がある

非閉塞性無精子症では、精路の閉塞ではなく、精子形成そのものが著しく低下していることなどが主な問題です。

ただし、精巣内のすべての場所で同じように精子形成が止まっているとは限りません。

精巣の大部分では精子形成がみられなくても、一部の精細管では成熟した精子がつくられている場合があります。

その局所的な精子形成を探すために行われる代表的な手術がmicro-TESEです。

非閉塞性無精子症の主な原因

非閉塞性無精子症の原因には、染色体・遺伝子の異常、精巣への障害、ホルモン異常などさまざまなものがあります。

原因が分かることで、治療可能性やmicro-TESEの適応、子どもへの遺伝に関する情報などが変わる場合があります。

クラインフェルター症候群などの染色体異常

非閉塞性無精子症の代表的な遺伝学的原因の一つがクラインフェルター症候群です。

一般的な男性の性染色体が46,XYであるのに対し、クラインフェルター症候群では47,XXYなどX染色体が1本以上多く存在します。

精巣が小さい、テストステロンが低い、精子形成が著しく低下するなどの特徴がみられる場合があります。

一方で症状には個人差があり、不妊検査を受けるまで気づかない方もいます。

クラインフェルター症候群だからといって、精巣内に精子が絶対に存在しないという意味ではありません。状態によってはmicro-TESEで精子が見つかる場合があります。

Y染色体微小欠失

男性が持つY染色体には、精子形成に重要な遺伝子が存在する「AZF領域」があります。

この一部が欠けている状態をY染色体微小欠失といい、重度の乏精子症や無精子症の原因になることがあります。

AZF領域は主にAZFa、AZFb、AZFcなどに分けられ、どの領域が欠失しているかによって精子形成の状態や精子採取の可能性が異なります。

完全AZFa・AZFb欠失では精子採取手術を行わない

Y染色体微小欠失の中でも、完全なAZFa欠失やAZFbを含む完全欠失では、精巣内から成熟精子を採取できる可能性が極めて低いことが分かっています。

EAUでは、完全AZFa・AZFb欠失が確認された場合には精巣内精子採取術を行わないことを強く推奨しています。

一方、AZFc欠失では射出精液や精巣内から精子が見つかる場合があります。

Y染色体微小欠失検査は、原因を調べるだけでなく「micro-TESEを行う意味があるか」を判断するためにも重要です。

Y染色体微小欠失は男児へ受け継がれる場合がある

Y染色体は父親から男児へ受け継がれます。

そのため、Y染色体微小欠失がある男性の精子を用いて顕微授精を行い男児が生まれた場合、同じ微小欠失が受け継がれる可能性があります。

遺伝学的異常が確認された場合には、遺伝カウンセリングを受け、子どもへの影響などについて説明を受けてから治療方針を検討することが重要です。

停留精巣の既往

停留精巣とは、出生前に腹部から陰嚢内へ下降するはずの精巣が、途中で止まっている状態です。

幼少期に停留精巣があった場合、将来の精子形成に影響することがあります。

手術で精巣を陰嚢内へ移動していても、成人後に造精機能障害がみられる場合があるため、男性不妊の問診では停留精巣の既往についても確認します。

精巣捻転などによる精巣への障害

精巣捻転では精巣への血流が途絶え、精巣組織が障害されることがあります。

両側の精巣機能へ強い影響が及んだ場合などには、造精機能が低下する可能性があります。

陰嚢部の手術歴や外傷歴なども原因を調べるうえで重要な情報です。

抗がん剤・放射線治療

一部の抗がん剤や放射線治療は、精子をつくる細胞へ影響することがあります。

治療内容や投与量などによっては、一時的または長期的に精子形成が低下し、無精子症となる場合があります。

がん治療を始める前で将来子どもを希望する場合には、可能であれば精子凍結などの妊孕性温存について相談することがあります。

視床下部・下垂体のホルモン異常

精巣で精子をつくるためには、脳の視床下部・下垂体から分泌されるホルモンによる刺激が必要です。

下垂体の病気などによってLHやFSHの分泌が不足する「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」では、精巣そのものに精子をつくる能力が残っていても、必要なホルモン刺激を受けられず無精子症になる場合があります。

このタイプでは、hCGやFSHなどを用いた治療によって精子形成が回復する可能性があります。

非閉塞性無精子症の中には、原因を治療することで射出精液中に精子が現れ、自然妊娠を目指せる場合もあります。

原因を特定できない場合もある

十分な検査を行っても、非閉塞性無精子症の原因を特定できない場合があります。

原因不明だからといって、「食生活が悪かった」「ストレスが多かった」などと自己判断する必要はありません。

現在のホルモン状態や遺伝学的検査、精巣の状態などを確認し、利用できる治療方法を検討します。

非閉塞性無精子症に自覚症状はある?

自覚症状がない場合も多い

非閉塞性無精子症でも、勃起・性交・射精が通常どおり可能な場合があります。

精液の色や量、見た目だけでは精子がいるかどうかは分かりません。

そのため、パートナーが妊娠しないことをきっかけに精液検査を受け、初めて無精子症が分かるケースもあります。

精巣が小さい場合がある

原発性の造精機能障害がある方では、精巣容積が小さい場合があります。

問診・触診や超音波検査などで精巣の大きさや状態を確認します。

ただし、精巣が小さいからといって、精巣内に精子が存在しないと判断することはできません。

男性ホルモン低下を伴う場合がある

非閉塞性無精子症の原因によっては、テストステロン値が低下している場合があります。

男性ホルモン低下に伴って、性欲低下、疲れやすさ、筋力低下、体毛の変化などがみられる場合があります。

一方、テストステロン値が正常で自覚症状がほとんどない非閉塞性無精子症もあります。

非閉塞性無精子症はどのように検査する?

非閉塞性無精子症が疑われた場合には、単に「精子がいない」と確認するだけではなく、その原因や治療可能性を調べます。

精液検査を複数回行う

まず精液検査で射出精液中に精子が存在するかを確認します。

精子が確認できない場合には、精液を遠心分離した後の沈渣まで詳しく観察します。

EAUでは、遠心分離後にも精子を認めない状態を2回の精液検査で確認して非閉塞性無精子症を診断するよう推奨しています。

問診で既往歴・治療歴などを確認する

原因を調べるため、例えば次のような内容を確認します。

  • 停留精巣の既往
  • 精巣捻転や陰嚢外傷の既往
  • 鼠径部・陰嚢部の手術歴
  • 抗がん剤・放射線治療歴
  • 感染症の既往
  • 使用している薬
  • テストステロン製剤やアナボリックステロイドの使用歴
  • 思春期の発達
  • 家族歴

医師へ伝えにくい内容があっても、治療方針を決めるために重要な情報となる場合があります。

精巣サイズ・精管などを確認する

身体診察では精巣の大きさや硬さ、精巣上体、精管の有無などを確認します。

例えば、精巣が小さくFSHが高い場合には、造精機能障害による非閉塞性無精子症が疑われます。

一方、精巣サイズが比較的保たれ、精管の異常などがある場合には閉塞性無精子症を疑う材料になります。

ただし、これらの所見だけで必ず閉塞性・非閉塞性を判定できるわけではありません。

FSH・LH・テストステロンを調べる

無精子症では、血液検査によってFSH、LH、テストステロンなどを確認します。

FSHは男性では精子形成を促す働きがあります。

精巣での精子形成が著しく低下している場合には、脳がより強く精巣を刺激しようとしてFSHが高値になることがあります。

反対に、視床下部・下垂体の異常によって十分なFSH・LHを分泌できない場合には、これらが低値になることがあります。

FSHが高くても「精子が見つからない」とは限らない

FSH高値は造精機能障害を疑う重要な所見ですが、精巣内の一部に精子形成が残っているかどうかまでは分かりません。

EAUでは、非閉塞性無精子症でTESEを行う前に、精子採取の成功を確実に予測できる因子は特定されていないとしています。

「FSHが高いからmicro-TESEをしても絶対に精子は見つからない」と数値だけで判断することはできません。

陰嚢超音波検査

陰嚢超音波検査では、精巣の大きさや内部構造、精巣上体、精索静脈瘤、腫瘤などを確認できます。

EAUでは、非閉塞性無精子症の原因評価において、ホルモン検査や遺伝学的検査とともに陰嚢超音波検査を含めた総合的な評価を推奨しています。

染色体検査

無精子症や高度な造精機能障害では、染色体異常が見つかる割合が高くなります。

染色体検査では、クラインフェルター症候群などがないかを確認します。

結果によっては、自身の健康管理や不妊治療、子どもへの影響などについて遺伝カウンセリングを行います。

Y染色体微小欠失検査

造精機能障害による無精子症では、Y染色体のAZF領域に微小欠失がないかを確認することがあります。

特に完全AZFa・AZFb欠失の有無は、精子採取手術を行うかどうかの判断に大きく関わります。

そのため、micro-TESEを検討する前に遺伝学的評価を行うことが重要です。

遺伝学的異常が見つかったら遺伝カウンセリングを受ける

染色体異常やY染色体微小欠失が確認された場合には、遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。

治療によって精子を得られる可能性だけでなく、子どもへ遺伝する可能性や将来の健康への影響などについて説明を受け、夫婦で治療方針を検討します。

非閉塞性無精子症の治療法

非閉塞性無精子症の治療は、原因によって大きく異なります。

主な原因・状態 治療の考え方
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症 hCG・FSHなどを用いて精子形成を促す治療を行う
原発性の高度造精機能障害 micro-TESEによる精子採取を検討する
精子を採取できた場合 顕微授精(ICSI)を行う
完全AZFa・AZFb欠失など 精子採取手術は行わない

治療可能なホルモン異常がないか確認する

視床下部や下垂体の異常によってFSH・LHが不足している場合には、精巣自体の精子形成能力が残っている可能性があります。

このような低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、hCGやFSHなどを用いて精巣を刺激することで精子形成が回復する場合があります。

射出精液中に精子が現れれば、状態によっては自然妊娠や一般不妊治療を検討できます。

高度な造精機能障害を薬だけで治せるとは限らない

FSHが高値となるような原発性の高度造精機能障害では、精巣での精子形成そのものを確実に回復させる薬物治療は限られています。

EAUでは、非閉塞性無精子症の男性に対して、TESE前にFSHやhCGなどのホルモン刺激を一律に行うことを、臨床試験以外では推奨していません。

「この薬やサプリメントを飲めばmicro-TESEで精子が見つかりやすくなる」と自己判断しないことが重要です。

妊娠希望中のテストステロン補充には注意する

テストステロン値が低いと、「男性ホルモンを補充すれば精子も増えるのでは」と考えるかもしれません。

しかし、外部からテストステロンを投与すると、脳から分泌されるLH・FSHが抑えられ、かえって精巣内の精子形成が低下することがあります。

妊娠を希望している男性が、男性不妊治療を目的として自己判断でテストステロン製剤を使用してはいけません。

筋肉増強目的のアナボリックステロイドなども精子形成を抑える可能性があります。使用歴がある場合は医師へ伝えましょう。

micro-TESEとは?

micro-TESEは「microdissection testicular sperm extraction」の略で、日本語では顕微鏡下精巣内精子採取術と呼ばれます。

非閉塞性無精子症の男性から精巣内精子を探す代表的な手術です。

顕微鏡で精子形成が期待できる精細管を探す

精巣の中には、精子がつくられる「精細管」という細い管が多数存在します。

非閉塞性無精子症では、精巣全体で均一に精子形成が低下しているとは限らず、一部の精細管だけに精子形成が残っている場合があります。

micro-TESEでは、手術用顕微鏡で精巣内を拡大し、太さや色などから精子形成が期待できる精細管を選択して採取します。

採取した組織を培養室などで詳しく調べ、利用できる精子が存在するか確認します。

日本泌尿器科学会およびAUA/ASRMでは、非閉塞性無精子症で精子採取を行う場合にmicro-TESEを推奨しています。

通常のTESEとの違い

比較 TESE micro-TESE
主な方法 精巣組織を採取して精子を探す 手術用顕微鏡で精細管を観察しながら採取する
主な対象 閉塞性無精子症などでも行われる 主に非閉塞性無精子症
NOAでの目的 採取した組織から精子を探索する 精子形成が残っている可能性の高い部分を選択して探索する

どの方法が適しているかは、閉塞性か非閉塞性か、原因、施設の治療体制などによって異なります。

micro-TESEでも必ず精子が見つかるわけではない

micro-TESEは非閉塞性無精子症で精子を探す有力な方法ですが、手術を行えば必ず精子を採取できるわけではありません。

日本泌尿器科学会の一般向け情報では、非閉塞性無精子症で精子が見つかる割合について、原因によって異なるものの20~50%程度と説明しています。

ただし、この数字をそのまま個人の成功率として考えることはできません。

遺伝学的原因や精巣の状態などによって精子採取の可能性は異なり、EAUもmicro-TESE前に精子採取成功を確実に予測できる因子は確立していないとしています。

micro-TESEには合併症もある

micro-TESEは手術であるため、身体への負担や合併症の可能性があります。

例えば、次のようなものがあります。

  • 術後の痛み
  • 腫れ
  • 出血・血腫
  • 感染
  • 精巣組織への影響
  • 術後のテストステロン低下

AUA/ASRMでは、micro-TESEは通常のTESEに比べてテストステロンへの影響が少ない可能性がある一方、術後にテストステロン低下が生じるリスクは残るとしています。

手術前には、精子が見つかる可能性だけでなく、合併症や術後の経過についても説明を受けましょう。

非閉塞性無精子症で精子が見つかる可能性は予測できる?

micro-TESEを検討する際、「自分の場合は精子が見つかる確率が何%なのか」が最も気になる方も多いでしょう。

しかし、現在の検査だけから個人の精子採取成功率を正確に算出することは困難です。

FSHだけでは予測できない

FSH高値は精子形成が低下していることを示唆します。

一方、FSHは精巣全体の状態を反映する指標であり、精巣内のごく一部に成熟精子をつくっている精細管が残っているかまでは分かりません。

そのため、高いFSH値だけを理由にmicro-TESEによる精子採取を否定することはできません。

精巣の大きさだけでも予測できない

造精機能障害では精巣が小さいことがありますが、小さい精巣であっても局所的な精子形成が残っている場合があります。

反対に、精巣サイズが比較的保たれているから必ず精子を採取できるというものでもありません。

年齢・既往歴だけでも確定できない

停留精巣の既往や抗がん剤治療歴などは重要な判断材料ですが、一つの要因だけでmicro-TESEの結果を確定することはできません。

遺伝学的検査は治療判断を大きく変えることがある

一方、Y染色体微小欠失のように、精子採取の可能性を大きく左右する遺伝学的所見があります。

特に完全AZFa・AZFb欠失では精子採取の可能性がほぼないため、精子採取手術を行わないことが推奨されています。

つまり、「micro-TESEの成否を完全に予測することはできない一方、手術を行うべきではない病態を事前に確認することはできる」という点が重要です。

micro-TESEで精子が見つかったらどうする?

採取した精子は顕微授精(ICSI)に使用する

非閉塞性無精子症でmicro-TESEによって得られる精子は数が限られることが多いため、一般的には顕微授精(ICSI)に使用します。

顕微授精では、顕微鏡下で1個の精子を1個の卵子の中へ直接注入して受精を促します。

自然妊娠や人工授精に使用する治療ではない

micro-TESEで採取する精子は非常に少ない場合があるため、採取した精子を女性の子宮内へ注入する人工授精ではなく、通常は顕微授精を行います。

大まかな治療の流れは次のようになります。

micro-TESE

精巣内精子を採取

女性から採卵

顕微授精(ICSI)

胚培養

胚移植

男性側だけで治療が完結するわけではないため、女性側の年齢や卵巣予備能なども考えながら治療スケジュールを組みます。

採取した精子を凍結保存する場合がある

micro-TESEで利用可能な精子が見つかった場合には、精子を凍結保存することがあります。

AUA/ASRMでは、精子採取手術で得た精子について、状態が適していれば凍結精子・新鮮精子のいずれもICSIに使用できるとしています。

一方、非閉塞性無精子症では採取できる精子数が非常に少ない場合もあるため、施設によっては女性の採卵とmicro-TESEを同時期に行うことがあります。

精子を事前に凍結するか、採卵と同時に手術するかは、精子採取の見込みや女性側の状態などを踏まえて相談します。

非閉塞性無精子症でも妊娠・出産を目指せる?

精巣内から精子を採取できればICSIを行える

射出精液に精子が見つからなくても、micro-TESEによって精巣内から利用できる精子を採取できれば、その精子を用いて顕微授精を行うことができます。

そのため、「無精子症と診断された=自分の精子で妊娠・出産を目指せない」とすぐに結論づける必要はありません。

一方で、micro-TESEを行っても精子を採取できない場合があることも理解しておく必要があります。

精子採取率と妊娠率は別の数字

非閉塞性無精子症の治療成績を見るときは、「精子採取率」と「妊娠率」を混同しないことが重要です。

指標 意味
精子採取率 micro-TESEなどで利用できる精子を採取できた割合
受精率 ICSIを行った卵子のうち受精した割合
妊娠率 胚移植などを行った後に妊娠が成立した割合
出生率 最終的に生児獲得へ至った割合

「精子採取率50%」と書かれていても、「50%の確率で子どもが生まれる」という意味ではありません。

妊娠の可能性には女性側の状態も関係する

精子を採取できた後の妊娠・出産の可能性には、男性側の状態だけでなく女性側の要因も関係します。

例えば、次のようなものがあります。

  • 女性の年齢
  • 卵巣予備能
  • 採卵できる卵子数
  • 卵子の状態
  • 受精後の胚発育
  • 子宮の状態

そのため、男性側のmicro-TESEだけを先に考えるのではなく、女性側も不妊検査を行い、夫婦全体の治療計画を立てることが大切です。

micro-TESEで精子が見つからなかった場合は?

micro-TESEで精子が見つからない可能性もあります。

結果を受けた後は、すぐに次の治療を決めるのではなく、原因や手術所見などについて説明を受けたうえで今後を考えます。

手術結果と原因を確認する

まず、どの程度精巣内を探索したのか、どのような精細管がみられたのかなど、手術結果について説明を受けます。

必要に応じて病理所見、染色体・遺伝学的検査、ホルモン検査なども含めて評価します。

再度micro-TESEを検討する場合もある

初回の精子採取が不成功だった後に、再度micro-TESEを行って精子が見つかった報告もあります。

一方で、再手術を行えば必ず精子が見つかるわけではありません。

前回の手術内容、病理所見、遺伝学的原因、精巣への負担、女性側の年齢なども含めて再手術のメリットとデメリットを検討します。

今後の治療・家族形成について相談する

精子採取ができなかった場合には、今後さらに治療を続けるのか、再手術を検討するのかなどについて夫婦で相談します。

医学的な治療可能性だけでなく、身体的・心理的・経済的な負担なども含めて考えることが大切です。

必要に応じて、医師やカウンセラーなどへ相談しながら今後の家族形成について考えていきましょう。

非閉塞性無精子症が疑われたらどこを受診する?

男性不妊を専門的に診療する泌尿器科へ

精液検査で無精子症が分かった場合には、男性不妊を専門的に診療する泌尿器科などへ相談することが重要です。

非閉塞性無精子症では、単に精液検査を繰り返すだけでなく、ホルモン検査、遺伝学的検査、精巣の評価などが必要になる場合があります。

micro-TESEに対応しているか確認する

すべての不妊治療施設でmicro-TESEを行っているわけではありません。

非閉塞性無精子症が疑われる場合は、micro-TESEに対応しているか、または対応施設へ紹介してもらえるか確認しましょう。

生殖医療を行う施設と連携できるか確認する

micro-TESEで精子を採取できた場合には、一般的に顕微授精が必要です。

そのため、男性側の手術だけでなく、女性側の採卵や顕微授精、胚移植まで含めて連携できる体制が重要です。

男性不妊を診療する泌尿器科医と、生殖医療を行う産婦人科・不妊治療施設が連携しているか確認しましょう。

非閉塞性無精子症について医師へ確認したいこと

  • 本当に無精子症ですか
  • 精液検査は何回行う必要がありますか
  • 閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症のどちらですか
  • 私の場合、非閉塞性無精子症と判断する理由は何ですか
  • FSH・LH・テストステロンはどのような状態ですか
  • 治療可能なホルモン異常はありませんか
  • 精巣の大きさや状態に問題がありますか
  • 染色体検査は必要ですか
  • Y染色体微小欠失検査は必要ですか
  • 遺伝カウンセリングを受けた方がよいですか
  • ホルモン治療で射出精液中に精子が出る可能性はありますか
  • micro-TESEの適応がありますか
  • 私の場合、精子採取の可能性をどのように考えますか
  • FSHが高くても精子が見つかる可能性はありますか
  • micro-TESEにはどのような合併症がありますか
  • 精子が見つかった場合は凍結保存しますか
  • 女性側の採卵とmicro-TESEは同日に行いますか
  • 精子が見つからなかった場合はどのような選択肢がありますか
  • 女性側はいつから不妊検査・治療を進めた方がよいですか

非閉塞性無精子症がある場合のクリニック選び

閉塞性・非閉塞性を適切に見分けてくれるか

無精子症では、原因によって治療方法が大きく異なります。

「精子がいないからすぐにTESE」というのではなく、精液量、身体診察、FSHなどのホルモン値、既往歴などから閉塞性・非閉塞性を評価してもらえるか確認しましょう。

遺伝学的検査を含めて原因を調べてくれるか

非閉塞性無精子症では、染色体異常やY染色体微小欠失が原因となっている場合があります。

特に完全AZFa・AZFb欠失では精子採取手術を行わないことが推奨されるため、micro-TESE前の原因検索は重要です。

micro-TESEのメリットだけでなく限界も説明してくれるか

micro-TESEは非閉塞性無精子症で精子を探す有力な治療法ですが、精子が必ず見つかるわけではありません。

精子採取の可能性、手術による身体的負担、合併症、精子が見つからなかった場合の対応についても説明してもらえるか確認しましょう。

女性側の治療まで連携できるか

micro-TESEで精子が見つかれば、一般的には顕微授精を行います。

女性側の年齢や卵巣予備能を踏まえて、採卵と男性側の手術時期を調整できる体制があるかも重要です。

必要に応じて遺伝カウンセリングを受けられるか

染色体異常やY染色体微小欠失が見つかった場合は、自身への影響だけでなく子どもへの遺伝についても考える必要があります。

検査結果を伝えるだけではなく、治療前に遺伝学的な意味を説明してもらえる体制があるか確認しましょう。

非閉塞性無精子症に関するよくある質問

Q.非閉塞性無精子症とは何ですか?

A.主に精巣での精子形成が著しく低下することなどによって、射出精液中に精子を確認できない状態です。

精子をつくれていても通り道がふさがっている閉塞性無精子症とは、原因や治療方法が異なります。

Q.無精子症なら精巣内にも精子はいませんか?

A.必ずしもそうではありません。

非閉塞性無精子症でも、精巣内の一部で精子形成が残っている場合があります。

そのため、micro-TESEで精子形成が残っている可能性のある精細管を探すことがあります。

Q.非閉塞性無精子症は治りますか?

A.原因によって異なります。

視床下部・下垂体のホルモン異常などが原因の場合は、ホルモン治療によって精子形成が回復する可能性があります。

一方、原発性の高度造精機能障害では、精子形成そのものを確実に回復させる治療は限られており、micro-TESEによる精子採取を検討することがあります。

Q.FSHが高いと精子は見つかりませんか?

A.FSHが高いからといって、精巣内に利用可能な精子が絶対に存在しないとは言えません。

FSH高値は造精機能障害を示唆しますが、micro-TESEでの精子採取結果を確実に予測できる指標ではありません。

Q.micro-TESEで精子が見つかる確率はどのくらいですか?

A.日本泌尿器科学会の一般向け情報では、非閉塞性無精子症で精子が見つかる割合は、原因によって異なるものの20~50%程度と説明されています。

ただし、これは個人の成功率を示す数字ではありません。

原因や遺伝学的所見などによって精子採取の可能性は異なり、個人の結果を術前に正確に予測する方法は確立していません。

Q.FSHが100など非常に高くてもmicro-TESEできますか?

A.FSH値だけでmicro-TESEの適応を決めることはできません。

高いFSHは強い造精機能障害を示唆しますが、局所的な精子形成が残っている場合があります。

遺伝学的検査や精巣の状態なども含めて男性不妊を専門とする医師が判断します。

Q.micro-TESEをすれば自然妊娠できますか?

A.micro-TESEは精巣内から精子を採取するための手術であり、自然妊娠を直接可能にする治療ではありません。

非閉塞性無精子症で採取した精子は、一般的に顕微授精(ICSI)に使用します。

Q.クラインフェルター症候群でも精子が見つかることはありますか?

A.見つかる場合があります。

クラインフェルター症候群では造精機能が著しく低下することがありますが、一部の精巣内に精子形成が残っているケースもあります。

染色体異常があるからといって、一律にmicro-TESEができないわけではありません。

Q.Y染色体微小欠失があるとmicro-TESEできませんか?

A.欠失している場所によって異なります。

完全AZFa・AZFb欠失では精子採取を期待できないため、TESEは推奨されていません。

一方、AZFc欠失などでは精子が見つかる可能性があります。

Q.非閉塞性無精子症は遺伝しますか?

A.原因によっては遺伝する可能性があります。

特にY染色体微小欠失がある男性から生まれた男児には、その欠失が受け継がれる可能性があります。

遺伝学的異常が確認された場合は、顕微授精を行う前に遺伝カウンセリングを受けましょう。

Q.テストステロンを補充すれば精子が増えますか?

A.妊娠を希望している男性が精子を増やす目的でテストステロンを使用することは推奨されません。

外部からテストステロンを補充するとLH・FSHが抑えられ、精巣内の精子形成がさらに低下する場合があります。

EAUでは、妊娠を希望する男性への男性不妊治療としてテストステロン療法を行わないよう強く推奨しています。

Q.サプリメントや漢方で無精子症は治りますか?

A.非閉塞性無精子症の原因によってはホルモン治療が有効な場合がありますが、サプリメントや漢方によって高度な造精機能障害が改善し、確実に精子が出現することは確認されていません。

原因を調べず自己流の治療だけを長期間続けることは避け、まず男性不妊を扱う医療機関へ相談しましょう。

Q.一度micro-TESEで精子が見つからなくても再手術できますか?

A.再手術を検討する場合はあります。

ただし、前回の手術内容や病理所見、遺伝学的原因、精巣への負担などによって再手術の意義は異なります。

再手術をすれば必ず精子が見つかるわけではないため、男性不妊の専門医と十分に相談しましょう。

まとめ:非閉塞性無精子症でも原因を調べて治療の可能性を確認しよう

非閉塞性無精子症は、主に精子をつくる機能が著しく低下することなどによって、射出精液中に精子が確認できない状態です。

精子はつくられているものの通り道がふさがっている閉塞性無精子症とは、原因も治療方法も異なります。

無精子症が疑われる場合には、遠心分離後の精液まで詳しく確認し、必要に応じて複数回の精液検査を行います。

そのうえで、FSH・LH・テストステロンなどのホルモン検査、染色体検査、Y染色体微小欠失検査などを行い、原因や治療可能性を確認します。

視床下部・下垂体のホルモン異常などが原因の場合には、治療によって精子形成が回復することがあります。

一方、原発性の高度造精機能障害では、精巣内に局所的に残っている精子をmicro-TESEによって探すことがあります。

射出精液に精子が見つからないからといって、精巣内にも精子がまったく存在しないとは限りません。

ただし、micro-TESEを行えば必ず精子が見つかるわけでもありません。日本泌尿器科学会では原因によって20~50%程度と説明していますが、個人の精子採取成功率を術前に正確に予測することは困難です。

また、完全AZFa・AZFb欠失のように精子採取手術を行うべきではない遺伝学的原因もあります。

そのため、無精子症と診断されたらすぐに手術を選択するのではなく、閉塞性・非閉塞性の鑑別、ホルモン検査、遺伝学的検査などを行うことが重要です。

micro-TESEで利用できる精子を採取できた場合には、その精子を用いた顕微授精によって妊娠・出産を目指せる可能性があります。

妊娠の可能性には女性側の年齢や卵巣予備能なども関係するため、男性だけで治療を進めるのではなく、夫婦双方の状態を踏まえて治療計画を立てましょう。

京都で不妊治療を検討している方は、男性不妊を専門的に診療し、必要な遺伝学的検査やmicro-TESEに対応できる泌尿器科と、顕微授精を行う生殖医療施設が連携しているかを確認して相談することが大切です。

京都にある不妊治療の
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おすすめ3選

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足立病院 生殖医療センター
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引用元:田村秀子婦人科医院公式HP
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いちおか泌尿器科クリニック
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引用元:いちおか泌尿器科クリニック公式HP
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※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf