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「今の不妊治療クリニックに凍結胚が残っているけれど転院したい」「病院を変えるなら胚も新しいクリニックへ移さなければいけない?」「せっかく作った胚を失うのが心配で転院に踏み切れない」と悩んでいる方もいるでしょう。
結論からいうと、現在のクリニックに凍結胚が保存されているからといって、転院そのものを検討できないわけではありません。
ただし、「不妊治療を受けるクリニックを変えること」と、「現在保存されている凍結胚を別の医療機関へ移送すること」は分けて考える必要があります。
転院を考えた場合でも、状況によっては、
といった選択肢が考えられます。
日本産科婦人科学会の「ヒト受精胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」では、凍結された受精胚は、その胚を構成する精子・卵子の由来となる夫婦に帰属し、ART実施登録施設へ保管を委託するものとされています。
そのため、「転院するならすぐ胚も移さなければならない」と考えるのではなく、まず今後どこでどのような治療を受けるのかを決め、その治療計画に合わせて胚の保管場所を考えることが大切です。
この記事では、凍結胚がある状態で転院を検討している方に向けて、胚を現在の施設へ残す場合と移送する場合の違い、確認したい手続き・治療記録・保険診療などについて解説します。
本記事は2026年10月時点で確認できる日本産科婦人科学会・厚生労働省・ART実施施設等の公開情報をもとに作成しています。凍結胚の搬出・受け入れ条件、移送方法、費用、保存継続条件などは医療機関によって異なります。実際の転院・胚移送を行う際は、転院元・転院先の双方へ最新の手続きを確認してください。
凍結胚が残っている状態で転院を検討する場合、大きく分けると次のような選択肢があります。
| 選択肢 | 考え方 |
|---|---|
| ①現在の施設に凍結胚を残す | 保存を継続できるか確認し、必要に応じて今後の移植も現在の施設で検討する |
| ②転院先へ凍結胚を移送する | 転院元の搬出条件と転院先の受け入れ条件を確認して手続きを行う |
| ③まず転院先へ相談する | 前院の治療記録・凍結胚情報を見てもらい、今後の治療方針を聞いてから移送を決める |
転院を決めたからといって、凍結胚が自動的に転院先へ移されるわけではありません。
また、転院候補へ初診した時点で、必ず胚を移送しなければならないわけでもありません。
まず転院先で、
を相談してから決める方法もあります。
日本産科婦人科学会では、凍結されている受精胚について、その胚を構成する両配偶子の由来となる夫婦に帰属するものとしています。
そして、夫婦がART実施登録施設へ凍結受精胚の保管を委託するという考え方が示されています。
つまり、凍結胚は医療機関が自由に処分・移動できるものではなく、同意や適切な管理のもとで取り扱われます。
日本産科婦人科学会は、ART実施登録施設に対して、
などについて事前に文書で説明し、同意を得ることを求めています。
また、凍結融解胚を移植する場合にも、所定の同意が必要とされています。
凍結胚は長期間保管される可能性があるため、誰の胚なのかを確実に識別し、安全に保存することが重要です。
日本産科婦人科学会も、ART実施登録施設に対し、受精胚・卵子の保存や識別が安全かつ確実に行われる設備と管理を求めています。
不妊治療クリニックを転院する場合でも、現在保存されている凍結胚をすぐに別施設へ移す必要があるとは限りません。
例えば、次のような方法が考えられます。
転院先では今後の採卵やセカンドオピニオンを相談しつつ、現在保存されている凍結胚については、作成した施設で移植する方法です。
ただし、転院後も凍結胚の保存のみ、または胚移植のみを継続できるかは、現在の施設へ確認してください。
今後のARTを転院先へ一本化したい場合には、現在保存されている凍結胚を転院先へ移送する方法があります。
この場合は、
などを双方へ確認する必要があります。
「今の凍結胚を移植するべきか、追加採卵をするべきか」「そもそも転院した方がよいのか」が決まっていない場合には、胚を移送する前に転院候補へ相談する方法があります。
胚を動かす前に、前院の採卵・受精・培養・胚移植記録を見てもらい、今後の治療方針を聞いてから判断することもできます。
凍結胚を移したい場合、最初に転院候補へ、
「他院で作成・凍結した胚の受け入れに対応していますか?」
と確認しましょう。
凍結胚の受け入れについては、施設ごとに条件・手続きが異なる場合があります。
「ARTを行っているクリニックなら、どこでも他院の凍結胚を受け入れてくれる」とは考えないようにしましょう。
転院先が受け入れ可能でも、現在の施設で搬出手続きが必要です。
現在の施設へ、
「別のART施設へ凍結胚を移送したい場合、どのような手続きが必要ですか?」
と確認します。
転院先では、受け入れる胚について、
などを確認する場合があります。
具体的にどの情報が必要かは転院先へ確認しましょう。
PGT-A・PGT-M・PGT-SRなどを行った胚の場合には、通常の培養記録に加えて、検査内容や胚の識別に関する資料などが必要になる場合があります。
転院先へ事前に、どの資料が必要か確認してください。
凍結胚は、凍結状態を維持できる適切な環境で取り扱う必要があります。
そのため、患者自身の判断で通常の保冷バッグなどへ入れて運ぶものではありません。
実際の移送方法は医療機関によって異なります。
施設によっては、
などの方法が案内されています。
先に自分で輸送方法を決めるのではなく、転院元・転院先の双方へ確認し、指定された手順に従いましょう。
凍結胚の搬出・受け入れには、
などの調整が必要になる場合があります。
転院を決めた直後にすぐ移送できるとは限らないため、次の治療スケジュールも含めて早めに確認しましょう。
凍結胚の移送は、移送のために胚を一度融解してから再凍結するという意味ではありません。
凍結状態を維持できる専用環境で搬送し、受け入れ先で引き続き凍結保存する方法が用いられます。
凍結胚は非常に重要な医療上の検体です。
移送では、
などを適切に行う必要があります。
そのため、「移送しても絶対に問題ない」と断定するのではなく、転院元・転院先から輸送方法や考えられるリスクについて説明を受けましょう。
胚の形態評価は、培養時・融解後などの状態をもとに行われます。
「別のクリニックへ運んだから胚のグレードが必ず低下する」と単純に考えることはできません。
移送そのものについて心配なことがある場合には、移送方法・保存方法・融解時の対応などについて転院先の胚培養部門へ確認しましょう。
転院を検討し始めた段階で、現在保存されている胚について確認しておくと、その後の相談がスムーズです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 凍結胚数 | 現在何個保存されているか |
| 胚の段階 | 初期胚/胚盤胞 |
| 培養日 | Day3・Day5・Day6など |
| 胚評価 | 分かる範囲でグレード等 |
| 受精方法 | IVF/ICSIなど |
| 採卵日 | いつ採取した卵子から作成したか |
| 採卵時年齢 | 卵子採取時の女性年齢 |
| PGT | 実施の有無 |
| 凍結・保存情報 | 転院先から求められる内容を確認 |
| 保存更新時期 | 現在の保存契約・更新時期 |
| 保存費用 | 現在の保管費用 |
| 搬出可否 | 別施設への移送へ対応しているか |
| 必要書類 | 紹介状・培養記録・同意書等 |
保存されている胚をどのように扱えるかは、転院元・転院先の方針や手続きによって異なります。
一部の胚のみ移送できるか、すべてまとめて移送する必要があるかについても、個別に確認してください。
仮に複数施設へ胚を分けて保存できる場合でも、
など、手続きが複雑になる可能性があります。
凍結胚の保管場所だけを先に決めるのではなく、
「これからどの医療機関で、どのような治療を受けたいのか」
を決めたうえで、胚の移送を考えましょう。
すでに凍結胚がある場合、「先にこの胚を全部移植しなければならないのでは」と考えるかもしれません。
しかし、今後の治療では、状況によって追加採卵を先に検討する場合もあります。
例えば、
などから検討します。
転院候補では、
「現在○個の凍結胚があります。私の場合、この胚を先に移植するのと追加採卵するのでは、どちらを優先しますか?」
と相談するとよいでしょう。
凍結胚を転院先へ物理的に移送できることと、その胚を転院先で保険診療として移植できることは、同じ問題ではありません。
厚生労働省では、生殖補助医療について、採卵・体外受精または顕微授精・胚培養・胚凍結保存・胚移植など、一連の基本的な診療を保険適用の対象としています。
一方、実際に転院先で凍結胚を保険診療として使用できるかは、
などの確認が必要です。
「保険診療で作った胚だから、転院先でも自動的に同じ条件で保険適用される」と自己判断せず、転院先へ治療歴を提示して確認しましょう。
胚の移送に伴う、
などにかかる費用の扱いは施設ごとに確認が必要です。
凍結胚をすぐ移送しなくても、前院の採卵・培養・移植記録を持って別のクリニックへ相談することはできます。
まずセカンドオピニオンを利用し、現在残っている胚をどう使うべきか意見を聞いてから転院を決める方法もあります。
凍結胚移植を複数回行っても妊娠反応が得られていない場合には、転院を考える前に、過去にどのような胚を何回移植したのか整理します。
そのうえで、現在の施設が陰性結果をどのように評価し、次の移植で何を見直す予定なのか確認しましょう。
子宮内腔の治療、婦人科手術、男性不妊など、今後必要な診療へ現在の施設だけでは対応できない場合には、専門施設への紹介や転院を検討する理由になります。
ARTでは胚移植前後にも複数回受診する場合があるため、転居や仕事の都合で現在の施設への通院が難しくなった場合には、凍結胚の移送を含めた転院を検討することがあります。
不妊原因が複数ある場合には、ARTだけでなく男性不妊や婦人科疾患との連携を重視して転院先を選ぶことがあります。
採卵・培養について別施設の意見を聞きたい場合でも、現在残っている凍結胚については今の施設で移植を続けるという考え方があります。
残存胚が少なく、現在の施設での移植方針にも納得できている場合には、残っている胚を移植してから今後の採卵先を検討する方法もあります。
転院をまだ決めていない場合には、現在の胚を動かさずに別施設で治療記録を見てもらう方法があります。
別の医師の意見を聞き、今の施設で続けるか、胚を移送して転院するかを決めてもよいでしょう。
「転院を検討すること」と「凍結胚をすぐ移送すること」は同じではありません。
| ポイント | 確認すること |
|---|---|
| ①今ある胚をどう使いたいか | 次に移植するか、追加採卵を行うか |
| ②転院先が胚を受け入れるか | 他院作成胚の受け入れ条件 |
| ③現在の施設が搬出に対応するか | 必要な手続き・同意書 |
| ④移送に何が必要か | 必要書類・期間・方法・費用 |
| ⑤移送後の治療計画 | いつ診察・移植へ進めるか |
この5点が整理できてから移送を進めると、「胚を先に動かしたものの、転院先では別の治療方針になった」といった行き違いを減らしやすくなります。
| 資料 | 主な内容 |
|---|---|
| 紹介状 | 転院先で必要な場合 |
| 採卵記録 | 刺激法・採卵数・成熟卵数等 |
| 受精記録 | IVF/ICSI・正常受精数等 |
| 胚培養記録 | Day3・Day5・Day6などの発育経過 |
| 凍結胚一覧 | 胚数・発育段階・胚評価等 |
| 凍結関連情報 | 凍結日・方法等、転院先が求める情報 |
| PGT関連資料 | 実施している場合 |
| 胚移植歴 | 移植胚・妊娠判定等 |
| 保険診療歴 | 過去の胚移植等 |
| 現在の薬剤情報 | 治療継続中の場合 |
凍結胚を移送したい場合には、転院先候補を比較する最初の条件になります。
公式サイトに記載がない場合には、初診予約前に問い合わせて確認しましょう。
単に胚を受け取ってもらえるかだけではなく、これまでのART結果を見たうえで、現在残っている胚をどのように使うか相談できることも重要です。
特に年齢やAMHを踏まえて治療を急ぎたい場合には、残存胚を移植するか、追加採卵を先に行うかも相談しましょう。
凍結胚が転院先へ到着しても、すぐに胚移植できるとは限りません。
初診、検査、治療計画、内膜準備などが必要になる場合があるため、
「胚の受け入れ後、最短でいつ移植周期へ入れますか?」
まで確認するとよいでしょう。
これまでの治療で男性因子や子宮内膜症・子宮腺筋症などが指摘されている場合には、必要な診療と連携できるかも比較ポイントになります。
A.凍結胚があるからといって、転院そのものを検討できないわけではありません。
ただし、凍結胚を現在の施設へ残すか、転院先へ移送するかは別に決める必要があります。
A.自動的には移りません。
転院元での搬出手続き、転院先での受け入れ確認、必要書類、移送日程などの調整が必要です。
A.セカンドオピニオンなどで別の施設へ相談し、胚を移送するか後から判断する方法があります。
ただし、転院後も現在の施設で胚の保管を継続できるかは、現在の施設の規定・保存契約等をご確認ください。
A.施設によって移送方法が異なります。
専用容器を使って患者本人が運搬する方法を案内する施設もあれば、移送専門業者の利用などを求める施設もあります。
自己判断で運搬せず、必ず転院元・転院先へ方法を確認してください。
A.通常の凍結胚移送は、移送のために一度融解して再凍結するという意味ではありません。
凍結状態を維持できる専用環境で移送し、転院先で凍結保存を継続します。具体的な方法は双方の施設へ確認してください。
A.移送したことだけを理由に胚の形態評価が必ず低下するとは言えません。
移送方法・温度管理・受け渡しなどの管理について、転院元・転院先から説明を受けましょう。
A.一部移送・全胚移送への対応は施設によって異なる可能性があります。
現在の施設と転院先の双方へ確認してください。
A.胚の受け入れが可能であることと、保険診療として移植できることは分けて確認する必要があります。
胚を作成した時期・診療区分、これまでの保険診療歴、年齢・回数の条件、転院先での治療計画などによって確認が必要です。
A.状況によって追加採卵を検討する場合があります。
現在の年齢、凍結胚数、AMH・AFC、これまでの胚移植結果、希望する子どもの人数などを踏まえ、今ある胚の移植と追加採卵のどちらを優先するか相談します。
A.別施設へ治療記録を持参し、今後の治療方針について意見を聞いてから転院を決める方法もあります。
凍結胚をすぐ移送せず、転院候補の方針を確認したうえで判断するとよいでしょう。
現在の不妊治療クリニックに凍結胚が残っていると、「もうこの病院から動けないのでは」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、凍結胚が保存されているからといって、転院そのものを検討できないわけではありません。
大切なのは、
①不妊治療を受ける施設を変えること
②凍結胚をどこで保管するか
③凍結胚を別施設へ移送するか
④その胚をいつ・どこで移植するか
を分けて考えることです。
まず、現在保存されている、
などを整理しましょう。
次に、転院候補へ他院で作成された凍結胚を受け入れられるか確認します。
同時に、現在の施設にも搬出が可能か、どのような手続き・資料が必要かを確認してください。
実際の移送方法は施設によって異なり、専用容器を用いた患者本人による運搬や移送専門業者の利用など、施設が定める手順に従う必要があります。
また、転院先が胚を受け入れられる場合でも、必ずすぐ移送する必要はありません。
現在の施設で残っている凍結胚を移植し、今後の採卵から転院する方法や、先にセカンドオピニオンを受けてから胚の移送を決める方法も考えられます。
さらに、凍結胚がある場合でも、年齢、AMH、現在の凍結胚数、過去の胚移植結果などによっては、追加採卵を先に検討する場合があります。
保険診療についても、凍結胚を物理的に移送できるかどうかとは別に、これまでの治療歴や保険適用条件を転院先へ確認することが必要です。
凍結胚がある状態での転院では、「とりあえず胚を新しい病院へ移す」のではなく、「今後どこで、どの胚を、どの順番で使うのか」という治療計画を決めてから保管場所を考えることが大切です。
京都で転院を検討している方は、まず現在の凍結胚・培養・胚移植記録を整理し、他院作成胚の受け入れ可否と、現在の胚を含めた今後の治療方針を相談できるART施設を比較しましょう。
主な参考情報
不妊治療や生殖補助医療に関する高度な専門知識と技術を持つ「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」が常勤で在籍しているクリニック・病院の中から、治療の目的別に優れた病院・クリニック3院をご紹介します(2025年3月調査時点)。
体外受精を含め、専門医の体制や具体的な治療実績を確認しながら、本格的に不妊治療を進めたい方に向いています。
不妊治療だけでなく、体調や生活習慣、漢方なども含めて妊娠に向けた身体づくりを相談したい方に向いています。
男性側の不妊原因を詳しく調べたい方や、検査だけでなく手術を含めた男性不妊治療まで相談したい方に向いています。
※1参照元:足立病院「数字でわかる足立病院」https://www.adachi-hospital.com/numbers/
※2参照元:足立病院「体外受精(凍結融解胚移植)による35歳未満の妊娠率(2024年度実績)」https://www.adachi-hospital.com/infertility/achievements/
※3参照元:日本産婦人科学会「ART臨床実施成績データ2022(PDF)」https://www.jsog.or.jp/activity/art/2022_JSOG-ART.pdf